第43話 転生者

鈴木「(俺はいつの間にか眠っていたようだ。目を覚ますと、いつかの廃墟ビルで1人目を覚ました。あたりは薄暗く湿気も多い。じめじめして、肌にまとわりつく空気が妙に気持ち悪い。)」


蘆屋「お目覚めかい? スズキ君お久しぶりだね。」


鈴木「俺は、なんでここにいるんですか?!」


蘆屋「あれ?! 田中さんから何にも聞いてない?」


鈴木「……はい。何も……。」


蘆屋「おっかしいなぁ。まぁそう言うことなら、簡単に説明しておくよ。」


鈴木「(蘆屋は、座っていた椅子から立ち上がると、一枚のお札を取り出し、にっこと笑った。その笑顔はお世辞にも爽やかなものではなかった。蘆屋から伸びる影が妙に蠢いて見える。)」


蘆屋「えぇっとね、これから見てもらいたいものがあるんだ。まぁ心配しないでよ。スズキ君は大丈夫だから。すぐに理解できると思うよ。ほら、百聞は一見に如かずって言うだろ。」


鈴木「(蘆屋はそう言うと、おまじないの言葉を唱え、お札から風が舞い上がったかと思うと河童が現れた。可愛い? いいや、とんでもない。ものすごく凶暴そうな目つきに加えて、長く尖った爪は、化け物だ。)」


蘆屋「これ今朝、スズキ君も出会ってる河童だよ。明彩さんの妖魔は流石だね。明彩さんの場合は、ちょっと意味が違うんだけど。まぁそれはまた、おいおいね。とりあえず、これは君の河童。好きなようにしていいよ。」


鈴木「俺の河童……?」


蘆屋「説明不足だったかな。君は、妖怪たちが暮らす世界から、こっちの世界へ来た。妖怪のころの記憶は残ってないみたいだけどね。」


鈴木「それって俺が、妖怪が暮らす世界で一度死んで、この人間界で生まれ変わったってことですか?」


蘆屋「その通り。君は――転生者だ。」

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