第38話 裸

鈴木「これは夢だろうか。できれば、夢であって欲しい。そんな景色が俺の目の前に広がっていた。それは初め、空に浮かぶ入道雲に見えた。しかし、実際は――クジラだった。信じられないが、クジラが裸の明彩さんを捕まえて飛んでいた。多分それは、平和な日常からは程遠い世界だ。クジラが教室に入っていくのが見えて、ダッシュ。やばい、やばい、やばい! 夏の日差しの中を無心で走った。明彩さん! 叫びながら教室の扉を開けた――」


明彩「来ちゃダメ!」


鈴木「髪の毛は乳首は隠れているが、血管が薄っすらと透けて見える白い肌は、明彩さんの可憐さを増しているように見える。パンツは履いているが、その姿は生まれたてのように儚い。裸を見られて恥ずかしそうに、頬を赤くしている明彩さんだが、クジラに両手と両足を捕まえられていて、身動きが取れないでいる。――明彩さんを捕まえるクジラは、目を光らせて、大きく息を吸い込んだ。」


――ゴホッ! ブシュー!


鈴木「(クジラから噴出された潮をくらい、俺は壁まで吹き飛ばされた。)痛ってぇな。」


明彩「鈴木君まで、取り憑かれる。助けてなんて、お願いしてない!」


鈴木「あのな、男ってもんは、目の前で苦しんでる女の子がいたら助けたくなる生き物なんだよ、覚えときな!」


――ゴホッ! ブシュー!


鈴木「(再び全身に潮をくらい、俺は壁まで吹き飛ばされた。今回のは頭がくらくらする。さて、どうする……。)」


明彩「バカバカバカ! 鈴木君のバカ! 助けるなら、ちゃんと助けてよ……! でも、私の裸は見るな!」


鈴木「まったく注文が多いな。あぁあ口から血まで出てきやがった。マジでお手上げだわ。」

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