第37話 妹

鈴木「目覚ましが鳴る。いつもと変わらない朝だ。顔を洗って、台所に向かう。目玉焼きのいい香りが鼻に届いてくる。朝食を作ってくれているのは、妹の穂香(ほのか)だ。両親は海外出張でしばらく帰ってこない。その間、俺は穂香と2人暮らしってわけ。」


穂香「お兄ちゃん。これ見て! 川で拾ったの。」


ドッーン!!!


鈴木「台所に入った瞬間――。目の前に、河童のぬいぐるみが出ました。あっぁあびっくりしたぁあ! お化けじゃなくて良かった……。河童のぬいぐるみは、二頭身で構成され、目がくりくりで可愛い。が、所詮は河童。ちなみに、朝から猫のように体を擦り付けてる穂香は、ほわほわした性格で、見ての通り猫っぽい。俺のようになんの取り柄もない兄を頼りにしてくれるのは、嬉しいのだが。――俺には、学内一の美少女の彼女が2人もいるわけで。いや、まだそれについては認めた訳ではない。」


穂香「河童のくーちゃん! クワクワって鳴くの!」


鈴木「穂香は、昔からぬいぐるみが大好きだなっ。」


穂香「もふもふしてて可愛いんだもん。ねぇえ! 今日は学校終わったらプール行こうよ!」


鈴木「いいけど、友達と行った方が楽しいんじゃないのか?」


穂香「同級生ってみんな、小学生だよ。」


鈴木「当たり前だろ。」


穂香「そんなのつまらないよぉ。お兄ちゃんとがいい。」


鈴木「(果たして……2人の彼女は、俺が妹とプールに行くことを許してくれるのだろうか……。)はぁぁ。深いため息が出てしまった……。」


穂香「ため息? お兄ちゃんは私とデートするの好きだよね?! ――ラブホデビューもそろそろ……」


鈴木「うっぅう!(ご飯が喉に詰まった。……もしかしてだが、俺は二股ではなく、三股!? ちょっと待て、それが本当なら、ものすごく気持ち悪い奴だ。断じてそんなことはあってはならない。ここで宣言しよう。俺は、誰とも付き合っていない!」


穂香「じゃ、プール約束だからね!」


鈴木「(穂香を見送り、鞄を持ったところで、お風呂場の方から水が出る音がしたような気がした……。)まさか、ぬいぐるみの河童が水浴びでも?! いや、気のせいだ。」

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