第20話 クジラは、潮を吹きたいのさ

(魚を買って戻ってくると、廃墟ビルの一角には、蝋燭が灯され、地面には魔法陣が描かれていた。まるで何かの儀式でもとり行われるような雰囲気で、不気味だった。相変わらず田中さんは、壁沿いによりかかり、意識を失いそうだ……。)


男子「新鮮なイカ、買ってきました。これで、田中さんが助かるんですか?」


青年「ありがとう。それじゃよーく見ておくんだよ。おっとその前に、もう少し彼女から距離をとった方が身のためだ。それじゃ、はじめるよ。」


(青年はイカを魔法陣に置くと、祈りの言葉を唱えた。次第に魔法陣からは風が吹き、同時に光を放った。次の瞬間、急に田中さんの影は、うごめき、みるみるうちに、クジラへと姿を変えた。目はギョロッとしていて、こちらを見ている……。大きな口を開けて、そして、イカを丸呑みしてしまった。)


男子「な、なんだこれは――。」


青年「見ての通り。あの子は特殊でね。妖魔を扱えるんだよ。今回は取り憑かれてしまったみたいだけどね。」


男子「――妖魔?」


青年「まぁ説明はおいおいね。今は彼女を助けるのが先。あの子はクジラに取り憑かれて、今は潮を吹きたいのさ。」


男子「潮を吹く? どういう意味ですか?」


青年「鈍いね……。もしかして童貞かい?! 女の子は絶頂した時に、アソコから潮を吹く。知ってるだろ? ほら、彼氏なら、気持ちよくしてあげないと。ほうっておくと、彼女はスズキくんを食い殺すよ。そして、やがて、彼女もクジラにのみ込まれる。」

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