──録音テープを回収、再生を開始します

──・・──ザッ──・・・──ザ━━━━━


──人ならざる黒の鎧を着込んだ者、“魔王“よ!今までの悪事を数えていろ!俺が殺してやる!


──・・・──・・────・・・・


──な、なんだと貴様!自分のやったことを忘れたというのか!?


──────・・・──・・・────


──往生際が悪いぞめ!この俺、勇者格である『アキシロ トモヤ』が相手してやる!


──────・・・ッ!


──クソっ!強い!だが俺の剣を避けるということは致命傷を与えれるということ!!いくぞ!!


カチッ


「つまらんことを聞いて悪いが…ヤガタ研究員、この頭が痛くなる録音テープはなんだ?」

「将軍、悪いが私もこれを聞かされた時は頭痛がしたよ。だがこれは事実を録音したものだ、私が保証するよ」

「“勇者格“の存在と、“魔王“と呼ばれる存在はこちらも把握している。その“勇者格“の性格、人格ともに頭の出来が悪いことも、だ」

「本人は真面目なので…あまりそういうことは言わない方がいいかと」

「なんだ?盗聴でもしているのか?…まぁいい。魔王の言語が聞き慣れないのは何故だ?」

「過去5000年前に使われていた世界共通語ですね、解析していますが時間はかかります」

「分かった、では…続けて聴くか…」


カチッ


──くそっ、クソクソクソクソ!なんだお前は、俺の剣を全て避けきって、しかもその嘲笑うかのような顔は!


────・・────。──っ!


──そんなこと知るか!何が『好きで殺したわけじゃない』だ!人殺しは遊びではないんだぞ!


……──?


──そうだ!人殺しは悪だ!生きとし生けるもの全て一生懸命なんだぞ!


──『 』ッ!!!


──ヒィッ!そ、そんな圧力プレッシャーなぞ、こ、怖くないわ!喰ぅらぇぇぇぇえええ!!


──ッ!?


カチッ


「済まないヤガタ研究員、まだあるのか?これは」

「あと20分ほどありますね」

「……」

「まぁこの辺りは勇者格が攻め続け、傷を負わせることに成功しています」

「ふむ、さすがと言うべきか…しかし勇者格は何故言語を理解できたのだ?」

「勇者格はアホなので、現在の他国の言語、読み、書きは不出来ですが…可能性としては、魔王が勇者格の頭に直接テレパシーを送り会話が成立したかと思われます」

「魔王には悪い事をしたな…まぁ少し飛ばして再生するぞ」


キュルキュルキュル…カチッ


──ハァー…!ハァー…!クソ!なんだ!頭からなにか流れてくる!


──・・・──・・。


──何?魔王、貴様の過去だと?ふざけるな!こんなデタラメな話があるか!“旧支配者“の統治した海底都市を滅ぼしたぁ?高霊山の龍を飼い慣らしたぁ!?ありえるかそんな話!しかも4500年前のお伽噺で、我ら勇者格がそれを成し遂げたと!母上から言い伝えられているんだ!貴様なんぞに出来るわけ──


カチッ


「今重要な事を言わなかったか?」

「えぇ、勇者格が4500年前のことを知っていたことですね」

「いや、そこは割かし重要ではないのだが…海底都市消滅や高霊山の一部消滅…魔王がやったとは…」

「あ、あぁはいはい。今までは勇者格の先祖達がやってた言ってましたね、私は興味ないですか」

「なんだと?では貴様はどこに引っかかったのだ」

「記憶力、読み、書きが不出来な勇者格が、急に過去のことを思い出したことです」

「…はぁ、そんなこ──」

「そんなことで済ます話で、あればいいですけどね。やはり全体を通して聞くと違いますね」

「なに?貴様全て聞き終えてこちらに来たのではないのか?」

「戦闘のくだりで飛ばしました、勇者格の聞くに耐えない罵詈雑言がウザったらしくて」

「そ、そうか…」

「続けて再生しますね」


カチッ


──やっと…やっと膝を地面につけたな!


──……。


──見事?見事だと?!敵に賞賛される筋合いはない!大人しく死んでもらうぞ!


──…、『 』。


──またその言葉か!だが最後の言葉として遺言と受け止めさせてもらう!ヤァァ!!


────。


──ハァー…ッ!ハァー…!やった、やったぞ俺は!先祖様よ見てくれたか!!長年の夢!ここに叶えましたぞ!!


────。


──し、証拠となるものを持ち帰ろう…しかし疲れた…このまま眠りたい…


きゅるるるるる……カチッ



「む?終わったのか?」

「えぇ、この後勇者格は死んだように眠り、今もこちらの隔離病棟に拘束させています」



「──…ん?だと?」


「そうです。勇者格の体を調べた所、魔王と呼ばれる存在の魔力波長が流れているのを確認した為です」



「……内側から侵食している可能性があると?」

「ですね、。正確には魔王の意思が、ですか?」

「俺に問うな。では如何にして魔王を殺せる?」

「それも調査中です、私たち研究員は仕事が増えて喜んでますよ」

「それは何よりだ、いやいや仕事させるよりも好きなことで仕事の効率が上がるのはいい事だしな」


ビー ──…!!ビー ──…!!


“緊急事態発生!職員、並びに貴族の方は今すぐに城から退避してください!繰り返します──“


「な、何が起こった!」


「さて…なんでしょうか?とりあえず私たちも避難しましょう」


シャーッ!カチッ、ガララッ


「窓など開けてどうされました将軍殿?」


「燃えている…」

「はい?」

「貴様の管理している“隔離病棟“が燃えていると言っているのだ!!」

「なんと、まぁ…そんなことがありましたか」



「な、貴様!何を悠長なことを言って──」



「何もどうにも、私は貴方の殺すタイミングを伺っていただけですが?」


ザクッ──


「カハッ…グウウ!!ヤガタ研究員!!貴様!何をしているのかわかっているのか!!こんな安物のナイフで俺を刺しやがって!!」


「安物には間違いないでしょうね…ですが、呪詛どくの効き目は抜群のはずですよ」


「な、何を──オェェェッ!!」


ビチャッ、ビチャビチャビチャ!


「今吐き出したは生きる魂の塊です。直ぐに戻さないと呪詛どくが身体に回って死にますよ?」


「き…さま!魔王に取り込まれたか!」




「いえ、取り込まれてはいません。ただ私の考え方が間違っていただけで、それを正そうと努力した迄です」


「そ、んなことが許されるわけ…人類がどうなってもいいのか!!」


「はぁ、そうですね…個人的には人類は別にどうでもいいです。むしろ私の行いはかと」


「選別!?一体何を言っているのだ!」


「もしかすれば──…選別は魔王が望んだ世界の、人類の次の進化かもしれません。私はそれにすごく共感を得ましてね」


「や、はり…魔王には危険因子が混ざっていたか……わ、が…王よ……お逃げくだ…────。」






「…死にましたか」





ガチャッ


キィィ


バタン



「おや、国王殿。どうなされましたかな?」


「将軍はどうなってのじゃ?」


「息を引き取られました」


「左様か。やつが目障りだったのは事実じゃしの」


「死体処理に関しては」


「僕がやっておくよ、呪詛どくも他の人間にやらせる訳には行かないからね」


「勇者格!もう体を動かしても大丈夫なので?」


「うん、警備兵達も準備運動にはちょうどよかったよ。それに、今なら魔王の残した意思とともに世界を統べることも出来そうだ」





「さてはて、新人類のために」

「選別を始めましょう」

「未来の頂点は我らのものに」



「…生まれた時から災厄だったのは、旧人類だったのか」



「?…勇者格、何か言われましたかな」

「いや、

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生まれた時から災厄(最悪)の人生 黒煙草 @ONIMARU-kunituna

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