第二十一町人 フロメ嬢

 煉瓦できた素敵なパン屋、一人娘のフロメ嬢。

 二階の窓から街道見下ろす、彼女の頭にゃ角が二本

 白い木の枝みたいな角には、小鳥が止まって噂する

 町で起こったあれこれを、嬢は笑顔で聞いている


 お礼に貰えるパン屑を、小鳥はついばみ去っていく

 嬢は家から滅多に出ないが、町一番の情報通

 今日も頭の中だけで、朝から晩まで過ぎていく

 想像だけの毎日だけでフロメ嬢は構わない


 影の間を飛び交う少年

 硝子とお菓子の少女達

 おでこのランプが眩しい老人

 星を打ち出すお姉さん


 小鳥の話は面白い

 だけど嬢は信じない


 首長竜に乗ったおじさん

 細かく分かれてしまったおばさん

 妖精から愛を貰う紳士

 遊んでばかりの子猫のメイド


 そんな人たち居るもんか

 全部小鳥の作り話


 フロメ嬢は、ふふん、と笑い

 今日も角を撫で上げる

 信じるべきは嬢か世界か

 それは小鳥が知っている





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面黒町の人々 稲荷 古丹 @Kotan_Inary

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