第八町人 チョウチョウさん
ある日、町長にお手紙、一通。
けれど内容さっぱり分からず、町長は首を捻るばかり。
そこへ秘書がやってきて手紙を見るなり、
「ああ、これはちょっと難しい内容でしょうから、私共の方で処理しましょう」
町長は何度もまばたきするが、
秘書は構わず部屋の外。
暫くぼんやりしていると、見知らぬ輩が目の前に。
町長よりもずっと大柄、気性もとても荒々しい。
慌ててばたつく町長に、大声浴びせて駆け回る。
秘書以下数名の職員に、追いかけ回され羽交い絞め。
「びっくりさせて申し訳ありません。あなたの前任者なんですが、ちょっと捕まえ損ねまして。ですが、ご安心を。少し歩けば、すっかり忘れますよ」
そして秘書の言う通り、怖かったことも記憶の彼方。
また暫くたってから、掃除のおじさんが町長にご挨拶。
「おはようございます。ねえ、聞いて下さい町長。前任者のことなんですけど、とっても良かったですよ。あなたの前に出せなかったのが残念です。そうそう、お土産を貰ったんですがチョコレートなど如何ですか?」
ところが秘書に取り上げられ、おじさんは、こっぴどい大目玉。
「絶対にあげてはいかん!死んだらどうする!」
町長、首を傾げたが、結局すっかり忘れてる。
「貴方は随分、町長の事について知っているのね」
「当然だろう、秘書なんだから。事前に資料も沢山貰ったしな。だが困ったもんだ。
皆、町長のことをよく知らんくせに甘やかそうとするんだから」
「勉強熱心なのね。けど今の町長は上手くいくかしら?」
「町長なんて責任を取れれば、それでいい。都合が悪くなれば前みたいに、いただいちまえば済む話だ」
「そうだとしても、暫くは代替わり出来ないでしょうけどね」
舌なめずりをする二人の前で、小さな町長は今日も鳴く。
ピヨピヨ、ピヨピヨ。
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