第七町人 カメリアさん
農業暮らしのカメリアさん。
聞けば育てているものは、野菜、果物、観葉植物。
大きな声では言えないが、奇妙なハーブやジャングル所有の噂まで。
こりゃ大地主に違いないと、泥棒二人が押し入った。
「あらまあ、お二人さんたら、ご苦労様。まずはお食事でもいかが?」
困惑するも、言われるまま。
手厚い歓待、豪華なディナー。
「やい、女!懐柔しようったってそうはいくか!とっとと金を出しやがれ!大地主なのは分かってるんだ!」
「困りましたわ。わたくし、土地といえるものは、この一軒家と庭くらいでして。」
「嘘をついたってこっちにゃ全部バレてんだ。とっとと金なり土地の権利書なり持ってきな!」
困った顔のカメリアさんは鉢植え一つ持ってきた。
泥棒達は目を剥いて驚きの余り声も出ない。
子供でも持てる鉢植えには、小さな小さなリンゴの木。
スプーンくらいの幹に、針金細工のような枝に、豆粒並みのリンゴの実。
「どういうわけか、わたくしが育てると皆こういう風になってしまいまして。味は良いので、お一つどうぞ?」
恐る恐る口にすると、実は少ないがリンゴの味。
「それじゃあ、あんたの持ってる農地はまさか」
「ええ、全部鉢植えの中ですよ。いっぱいありますし持っていかれます?」
二人の泥棒がっくり、うな垂れ。
「いるもんかいそんなもの、大体商売になりゃせんだろう」
「まったくだ!一体どうすりゃ、こんな鳥のエサにもならねぇリンゴで稼げるってんだい!」
「それが意外と望まれているのですよ。ちょうど私が、あなた方のような人々を探していたように」
泥棒、顔を見合わせたが、不意に意識が遠のいて、
そのままぐっすり、夢の中。
「やあカメリアさん、今日のジャングルは一段と良い。実に模型映えする育ち方だ」
「いつもご贔屓にしていただいて感謝致しますわ。ご要望の荒れ地も育てておきましたので、よろしければご覧になられます?」
「そりゃあ助かるね!ここはサービスも良くて最高だ。この貸してもらってる、薄汚れた男達の人形も良い出来だ。これもカメリアさんが?」
「ええ、もちろん」
「丹精込めて小さく小さく育てましたの。ぜひ使って下さいな」
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