第1話 まず種を用意する

 小説を書くにあたって、私はまず種になるモノを用意します。

 草木はもとより、パンに手品も、種がなくてはどうしようもありません。

 あるいは新聞記者のように、ネタと呼んでも構いません。

 ネタの無い寿司は握りじゃなくておにぎりですから、ネタは大変重要なのです。


 では、小説の種(ネタ)とは何なのかと言えば、それは『自分が書きたいシーン』という事です。

 残念ながら、技術も知識も才能も不足している素人の身で、その他大勢の先駆者の皆様と渡り合おう思うなら、作品に熱量(情熱)を注ぎ込むより他はありません。

 しかしながら、漠然と『冒険もの』だの、『ファンタジー』だの、なんとなくで書き始めては、どこに熱量を注げばよいやら分かりません。かといって、めったやたらに力んでいたのでは、無駄にデコボコしたテンポの悪い文章になってしまいます。

 ですから、私はまず、核となるシーンを定める所から始めます。それは『書きたい!』という想いさえあれば、どんなシーンでも―― カッコいいシーンでも、カッコ悪いシーンでも ――構いません。例えば、たまたま思いついたギャグを一発かます為だけに書いたって全く構いません!(というか、星新一のショートショートなどは、正にそんな感じですし)


 核となるシーンが決まったら、それを描く為に必要なモノを揃えて行きましょう。

 どんな場所で、どんな登場人物が居れば、そのシーンに辿り着けるのか、あるいは最も映えるのか。その場所が、その登場人物が、小説に出てくるためには、どんな設定やエピソードがあればいいのか。熱のこもった小説の種を中心に、ジグソーパズルのように必要なピースを追加していけば、その物語を語る為の一つの舞台が出来上がるはずです。


 そして、そうやって作り上げられた、情熱一筋の素人創作小説の数々こそが過去の『ネット小説』であり、いまで言うところの『なろう小説』の大元になったのでないかな、と私は思うのです。

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