第34話 なぁ……つねらせてくれや……
「ふぅ……何とか
私は植物に水やりながら呟いた。
大学生の人が「せっかくだから、この神の花をもらおうかな」と訳の分からない事を言ったので、オリルを売却。その人は嬉しそうに店を出ていった。
正直クレーム入れられると不安だったけど、何とか上手くいったみたいだ。
「確かにね。にしても、メロがここまで字が下手なんて」
「異世界出身だからしょうがないよ。まぁ、お客さんはもう来ないと思うから──」
──ガチャ。
「すいませーん」
「アッ、イラッシャイマセー」
駄目でした。そんな都合の良い事はなかったみたいです。やっぱり神様は理不尽ファック。
それよりも入ってきたのは男子二人か。何かどこかで見たような……。
「あれ、沢口と森じゃねぇか。何やってんだこんな所で」
「うおマジかいな。学校でもそうやったんけど仲ええなぁ」
思い出した。二人とも私達のクラスメイトだ。
よく学校で喋ったりゲームしてたりしていたっけ。
(誠君、名前なんて言うんだっけ?)
(ああ、ボサボサ髪をしているのが
「あ? 何か言った?」
「ううん、何でもない。というかやっぱ植物買いに来たの?」
「ん、まぁな……」
牧君が気まずそうに顔を逸らす。
何か失礼な事言ったかな? かと思えば、隣の矢口君が笑いこらえている。
「牧の奴、今日がお袋の誕生日だからって花買おうとしているんよ。プレゼントに花とか受けんわー」
「ちょっ! それ他の人に言うなって言ったろ!? お、俺が何買おうが勝手じゃねぇか!?」
秘密を明かされた牧君が、それはもう顔真っ赤にする。
でも私は変だとは思わなかった。
家族に花をプレゼントするなんて十分に素晴らしいし、率先してやるべきだ。
「牧君、もしよかったら花見てもいいよ?」
「はあ……? 何だいきなり……?」
「いや、お母さんにプレゼントするなんて素敵な事だと思うよ。私はそんな牧君の考えを大事にしたいなって」
「お、おう……」
「だから回れ右して別の花屋に行って下さい、今すぐに」
「えっ? まさかの客追い出し……?」
いやだって異世界の花だよ? 花粉を吸った人を狂わせたり、神の花だなんておかしい奴もある。
効能も分からず購入したら、お母さんが色んな意味で大変な事になってしまう。
「そもそもスーパー近くの花屋は休みだぞ。だからここに来たんだからさぁ」
ああ……駄目でした。
それならこっちの花を提供するしかない。
「じゃ、じゃあオススメの紹介するからちょっと待ってて……」
よく分からない効能の花なんて渡す訳にはいかない。だから普通の花を提供すればいい。
本をめくりながらそれらしき花を探してみる。でも字が下手だから、どれがどれなのかさっぱり分からない。
「何やってんだよ」
「あっ」
牧君にその本を取られてしまった。
矢口君も見た途端、二人して唖然とした顔をする。
「えっ、何やこれ……魔法の詠唱呪文?」
「日本語っぽいのがあるけど、日本語として読めない致命的な文章だろ……」
マジで牧君の言葉通りだから困る。
本当はメロ君が帰ってくるまで待ってほしいけど、その彼がいつ戻って来るのかが分からない。
それにお客さんを長時間待たせるのは失礼らしいから、今この場で解決しなければ。
「出来れば効能のない花がいいんだよね……変に買ってお母さんを困らせちゃいけないし」
「何で効能のない花……。要は文章が少ないの探せばいいんだな」
「牧、頭ええなぁ。おっ、これなんかどうなん? 綺麗だと思うんやけど」
「ああ、これといった説明なさそうだから大丈夫かもな」
何か見つけたようだ。私と誠君も覗いてみた所、どうも赤い花のイラストらしい。
形は強いて言えば薔薇に似ている。それで説明文なんだけど、確かに他のと比べて文字が少ない。
しかし文字が少ない=効能がないとは限らない。その少ない文章にそれが隠れている可能性だってある。
となるとやはり自分が確かめる。有効な方法はこれしかない。
「誠君、その花ってどこに」
「ああ、あれだと思うよ。窓際の所」
例の花は窓際の棚にあった。
さて、ここから問題だ。
「……私が花粉を嗅んで確かめるよ」
「なっ……まさかそんな! 無謀だよ沢口さん!」
「いや、これは店員の仕事! もし変な効能があって、それで牧君のお母さんに何かあったら……。だから私、それを確かめて安全な花だって証明しなきゃ!」
「いや、それは僕が!」
「あのお前ら、何でたかが花でマジになってんの?」
牧君達から白い目で見ているけど、それは花の恐ろしさを知らないからだ。
前の玄野さんの様子を見たら、そんな事を言えないはず。
「とにかく私がやる。誠君達は下がってて」
「沢口さん……」
私は目的の赤い花に向かい、様子を窺う。
ここから嗅いでみると、ミントのような爽やかな香りがしてきた。とはいえ安心は出来ないので、恐る恐る花弁に顔を近付けさせる。
さらに増すスンとした香り。私はそっと花を嗅いでみる。
「……うん、何も感じない。大丈夫だよ」
「そ、そう……? 本当に大丈夫?」
「うん、これは多分へい……き……」
あれ、何だろう? 頭がクラクラしてくる。
今さっき花を嗅いだから? 参ったな、やっぱりこれ効能が……こう……のう……。
「………………」
「あれ、どうしたんよ。何かボォーっとしてるんやけど?」
「…………矢口君、ちょうどよかったよ。
乳首つねらせて」
「…………………………はっ?」
我 慢 出 来 な い 。
矢口君の服を一瞬にして脱がせて、その黒い乳首に指を向けさせる。
「あん、いやん!? 何すんねん!?」
「いい声で鳴いてね♡♡」
「そんな急に言われ……オオオ!? オオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」
痛むだろうってくらいに、乳首を強くつねる!
多分矢口君には激痛が走っているに違いない。だけどそれとは別に快感が増し、嬌声を上げさせる事が出来た!
「オオオ!! こんな地味な奴にされるなん……アアアアアオオオオ!!?」
「誰が地味だって、えええ!? こんなにされてまだそんな事言えるの!?」
「そんな……ア、ア、ア、ア……アベシッ!!」
ピンと乳首を弾き、絶頂を与える。
崩れ落ちる矢口君を見届けた後、私は残り二人に振り向いた。二人してビビっているみたいで……可愛いなぁ。
「さ、沢口さん……」
「お、おい……一体どうしたんだお前……」
「ええ? 別に何ともないよぉ? ただ男の子の乳首をつねったくなってさぁ、だから二人とも大人しくしてくれると嬉しいなぁなんて」
やだぁ、誠君達が引きつっている。まるで無垢な子供みたい。
でも安心してほしい。私が乳首をつねり続ければ気持ちよくなるはずだ。だからこそ二人には
ああもう何か乳首乳首って言い過ぎだけど、どうでもいいわ。
「フフフフフフ……」
「ちょっ、おま……沢口……」
「乳首よこせええええええ!!」
「「あっ!? オ、オ、オ、オオオオオオオオオン!!!」」
このビランテに二人の悲鳴が響く。
ああ、最高に幸せ!!
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あの後、私は何をしたのかはっきり覚えていない。
分かる事と言えば、三人がぐったりアヘ顔になっている事と、何故か上半身裸になっている事。私は恐らく花に何かされたんだ。
多分だけど媚薬のような効果があったのかもしれない。いずれにしても気付くの遅過ぎた。
「すいません……すいません……すいません……本当にすいません……」
「本当だよ……全く……」
「まだ乳首ヒリヒリするわぁ……」
服を着ようとする牧君達なんだけど、かなり痛かったのか乳首を抑えている。
こんな風になるまでやったなんて、私なんて事を……。記憶ほとんどないとはいえ最低だよ……。
「何と言うか花はもういいや……別の奴でプレゼントするか」
「その方が一番やな。ほな俺達、ここらでお暇しますわ……」
「う、うん……」
ぎこちなく店を出る牧君達。
はぁ……ため息しか出ないよこりゃあ。これから花を扱う時は気を付けないとなぁ。
「そんな落ち込まないで沢口さん! むしろ僕は嬉しかったよ!」
「何でそんなに元気になっているんですかねぇ……」
二人があんな風になったのに、誠君は何故か元気だ。
というかあれだね、そういう性癖があったからむしろよかったとかそんな感じ?
「学校で変な噂が流れてないといいけど……というかちょっと頭痛いなぁ……」
「花の副作用かもね。もしあれだったら奥で休憩してくる? 僕が店番するからさ」
「……そうしとこうかな。じゃあすぐに戻ってくるから」
「うん、分かった」
誠君に任せてから、奥の部屋に向かった。
中に入ると数枚の紙が置かれた机、散乱したガラクタなどが置かれている。他の店で言う事務室のような場所だろうか。
私はせっかくなので机に座る事にした。
「ふぅー……」
とりあえず落ち着くまでここにいようっと。
おもむろに机の書類を見てみると、見た事がない文章がズラリと。明らかに異世界の文字だろうからスルーしてみる。
他には一冊の本があるくらいか。ちょっと興味が出たので、その中身を見る事にした。
どうせこれも異世界の文字だらけだろうけど。
「……あれ」
ページに絵が描いてある? どう見ても印刷されていない手書きだ。
何だろう、メロ君が相手に種を渡している構図にも見える。相手は髪型を見る限り、恐らく私。
つまりこれは、アルスの種を渡された時の様子……。
「これってもしかして、メロ君の日記?」
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