第21話 その胸に触れたい……!

 見た感じ女性? というか何で私の家の前なんだ? 

 そもそもそこにいたら家に入れないんですが。


「あ、あの……もしもし?」


「……はっ! うっかり寝てしまった……あら、あなたは?」


「……!」 

 

 この人、美人だ。

 いや、森さんもそうなんだけど、こちらの方は柔らかい感じの美貌を持っている。それに銀髪ロングがサラサラしていて綺麗。


 でも、今としてはどなたですかとしか言えんが。


「えっと、この家の人なんですけど……ちょっと急いでいるのでどいてもらえませんか?」


「この家……もしかして沢口様? という事はアルス様もいらっしゃるのですか?」


「……えっ?」


 この人、アルスと言った?

 となるともしかして……いやいやそんな場合じゃない。


「いるはいるんですけど、今風邪を引いているんです! ちょっと失礼しますね!」


「……風邪? ちょっと待って下さい!」


 私がドアを開けようとしたら、その腕を掴まれてしまった。

 もう何……って顔が近い……。綺麗な顔立ちがすぐ目と鼻の先……さらに澄んだ瞳で見てくるもんだから、顔中が熱くなってしまう。


「間違いない、これは成長初期における免疫低下の症状です。すぐに薬を作りますので中に」


「…………」


「ん、どうかしましたか?」


「えっ? いえ何でもありません! とりあえず中ですね! どうぞごゆっくりと!」


 ボォーとし過ぎて言葉が変になってしまった。何やってんだ私は……。


 とにかく外にいても埒が明かないので、女性の方と家に入る事になった。するとその人が「失礼します」と言って玄関に座り込む。

 持っていたポーチから何か取り出しているようだ。何か小さい袋三つで、中身を見てから小さい紙に移している。


 粉みたいだから……多分粉薬?


「アルス様をこちらに」


「あっ、はい……」


 私は言われるがままアルスを渡した。

 その人が抱きかかえた後、粉薬をアルスの口に含ませる。


「……苦い」


「どうかお許しを。これを飲めばすぐによくなります」


「うう……」


「……ひとまず大丈夫ですね。後は日の当たる場所で休ませれば回復するでしょう」


 どうやら治療が終わったようだ。なんて早い。

 改めてその人を見てみるけど、本当に綺麗だなぁと思う。銀髪はさらさらしているし、緑色の瞳は吸い込まれそう。着ている服もゲームの魔導師みたいでよく似合っている。


 ……あと胸が服からでも分かるくらい大きい。


「あの、やっぱりメロ君と同じ異世界の方ですか?」


「ええ、おっしゃる通りです。私はユウナ、メロ様からアルス様の医療を任されてこの世界にやって来ました。来て早々沢口様のご自宅に訪ねたのですが、留守のようだったのであのような事を……」


 やっぱりこの人、メロ君と同じなんだ。

 そういえば医者を連れてくるってメロ君言ってたけど、この人がそうだったのか。


「いえ、別に大丈夫ですよ。どうぞ中へ」


「はい、失礼します」


 それよりもアルスの方が先だ。

 すぐに言われた通り、日なたの良いベランダ近くに寝かせた。


「大丈夫アルス?」


「……大丈夫じゃない……しばらくこうさせて……」


「う、うん……あの、この時って水をあげた方がいいですか?」


「大丈夫なんですが、なるべく多めにあげない方がいいかと。気持ち悪さで吐いてしまう場合がありますので」


「そうですか……えっと、お茶いただきますか?」


「よろしいのですか? ではいただきます」


 一時はどうなるのかと思ったけど、医者の方が来てくれてよかった。

 ユウナさんを居間に案内させた後、お茶を用意する。紅茶で大丈夫かなと思っていたら、「紅茶は私の世界にもありますのでお構いなく」と言うので安心。


 それで一緒に紅茶を飲むんだけど、ユウナさん飲んでいる姿が凄く似合ってますわ。


 この人がいいとこのお嬢様とかお姫様とか言われても信じてしまうよ。仮に学校とかに行ったら男子にモテモテだろうなぁ。


「ユウナさんって、元の世界ではどのような事を……」


「主に幻獣、あとたまにですが人の医者をしていますね。私達の世界では沢口様のような幻獣を飼っている方もいますので、常に健康管理や病気の治療に当たっています。まだ17の卵ですが」


「あっ、私より一つ年上なんだ。あと様付けは別に大丈夫ですよ、綺麗な人に様って言われるのはちょっと……」


「……ふぇ? そ、そんな……そこまでおっしゃらなくても……」


 可愛いくて辛い! 特に顔を赤くする所とか!


 女の私でさえ何だがコロッといってしまいそう。いや、決してレズとかじゃなくて、あくまでノーマルなんだ。

 そう、ノーマル。ノーマルなんだけど……ああもう考えるのはやめやめ!


「で、ではどのようにお呼びすれば……」


「そうですね……瑛莉でいいですよ。その方が呼びやすいと思いますし」


「瑛莉……分かりました。瑛莉」


「~~~~~~」


 ニコっと笑顔を見せるのがずるいです本当……。

 もうスマホで連続撮影したい所だ。


「でしたら私に敬語は大丈夫です。そういった事はあまり気にしていないですので」


「あっ、はい……じゃなくて、うん分かった」

 

「ありがとうございます。。……さてと、では私はこれで」


 紅茶を飲み干した後、ユウナさんが急に立ち上がった。


「えっ、どこに行くの?」


「実は私、ここに来てから住む所を決めてなくて……なのでメロ様のビランテでお世話になろうと思っているのですが」


「ああ、なるほど……なるほど……」


 つまりユウナさん、メロ君と一緒に住むという事になる。

 こんな美人さんと屋根の下だなんて、メロ君なんて羨ましい奴。それにユウナさんの言い方からして、メロ君の了承はまだ得ていない可能性がある。


「よかったら私の家に泊まっていかない? ちょっと狭い所だけど」


 アルスの風邪を治してくれたお礼もまだしていない。

 今がしないでいつすると言うんだ。


「瑛莉の?」


「うん、その間に住める所を探せばいいと思うよ。二日とか三日経っても大丈夫だから」


「……瑛莉がよろしければ。ありがとうございます」


 よし、美人さんを引き留める事に成功したぞ。

 もうこの際、家に住まわせてもいいのかもしれない。




 ------------- 


 


 その後、ユウナさんがアルスを付きっ切りで見てくれた。私はとりあえず夕飯の買い物を済ませて、洗濯をして、それから夕飯を用意。


 今日作ったのは私特製チャーハンだ。主にチャーシュー、切ったナルト、そしてエビが入っている。


「これは何でしょう?」


「ああ、チャーハンって言うの。食べる時はこうやってレンゲで掬って……」


「なるほどですね……」


 やっぱり異世界にチャーハンはないみたいだ。

 ユウナさんがちょっと躊躇いながらも、チャーハンを口に運ぶ。


「ん、美味しい! こんな素晴らしい料理は初めてです!」


「よかったぁ。まだあるからどんどん食べてね」


「はい!」


 気に入ってくれて何よりだ。

 美味しそうに食べるユウナさん……見るだけでも顔がニヤケそうだわい。

 

「……エリ」


「ん? あっ、アルス。もう風邪は大丈夫なの?」


「すっかりよくなった……」


 何か音がすると思ったらアルスがやってきたようだ。

 さっきまでの元気のなさに比べたら、明らかによくなっている。


「ユウナさんのお薬、凄い効き目があるんだね」


「私達の世界の薬草は即効効果あるので重宝されています。それに加えてアルス様は植物の性質を持っておられますので、薬の効果が格段に早くなったかと」


「へぇ、なるほど」


「しかしまだ免疫低下は残っている可能性があります。水を飲んだ後、薬を飲むのをおススメします」


 本当にお医者さんなんだなこの人。

 お医者さんというとおじさんのイメージのある私からすれば(いや、女性がいるのは分かっているけど)、この人が新鮮過ぎる。


 夕食が終わった後、アルスに水を飲ませてから粉薬を飲ませた。相変わらず「苦い」とアルスが言うけど我慢してもらわないと。


「そういえばもうこんな時間。そろそろ風呂に入る?」


「風呂……?」


「あっ」


 そうだった。メロ君が川で洗うから風呂なんて知らないって言っていた。ユウナさんだって例外じゃないはず。

 

 これはつまり一緒に入れという事なのか?


 いいのか? 超美人のユウナさんと一緒にだよ? 私なんて釣り合わないこんな綺麗な方と一緒に入るのか?

 それに脱いだら凄そう……いやいや決してそういう趣味じゃなくて、


「どうかしましたか?」


「んん!? いえいえ何でもないです!! えっと……風呂って何なのか知ってます!?」


「風呂ですか? いえ、全く聞いた事なくて……」


「じゃ、じゃあ一緒に入りましょう! 手取り足取り教えます!」


 ついに言ってしまったあああぁ!! ていうか手取り足取りって別の意味になってしまう!


 とりあえず落ち着け落ち着け……どっちみちユウナさんに風呂の事を教えないといけないんだ。


 アルスは病み上がりなので待たす事に(風邪気味に風呂は危険だとか)。私とユウナさんは風呂場へと向かった。


「何かメロ君が言ってたけど、異世界では川で洗っているらしいんだよね。そんな感じと思えば」


「なるほど、水浴なのですね。では失礼します」


 私と同じように服を脱ぐユウナさん。

 服がするりとはだけて、中から純白の柔らかい肌が見えてくる。さらにくびれた腰、艶のある太もも。


 胸が上向いて綺麗な形、それでいてやっぱり大きい。それにユウナさんからいい香りがしてくる。


「ん、大丈夫ですか瑛莉?」


「……い、いえ……何でもないです……」


 どうしよう、今のユウナさんエロ過ぎる……。

 それを本人に言いたいけど、また顔真っ赤にしてしまうに違いない。それを見たら鼻血出して憤死する自信がある。


「で、ではまず身体を流して……」


 自分とユウナさんの身体を流してから浴槽に入る。

 ちょうど向かうような体勢になっているので、ユウナさんの身体が目いっぱい視界に入ってきた。誰かが釘付けになるなと言ってきても無理だと答える自信がある。


 お風呂の温かさで桜色に上気した胸……。


「ふぅ……これが風呂なのですね。気持ちいいです……」


「……ユ、ユウナさん」


「はい、何でしょう?」


 気が付けば、胸を見ながら無意識に質問をしていた。

 本当は控えるべきなんだけど、本能が理性を超えてしまっている。


「嫌ならいいけど……胸触ってもいいですか?」


「えっ、それは困ります……」


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