第15話 メロ君と一緒でお出かけなのよ
「メロ君、これから買い物に行くんだけど一緒にどう?」
夕方になったのでそろそろ買い物しようと思っている。
メロ君は「土の状態は良好……」とアルスを見ながらメモをとっていたけど、私の言葉を聞くなり振り向いてきた。
「買い物でしたらお手伝いしますよ。泊まらせてくれたお礼もしたいですし」
「じゃあ行きますか。あっ、アルスも付いてく?」
「僕いいや。日向ぼっこしてる」
「そうなの……? じゃあすぐに戻るから」
さっきゲームやってて疲れたんかな。まぁ、アルスがそう言うのなら大丈夫だろう。
という訳で、メロ君と一緒に近くのスーパーに向かう事にした。どうでもいいけど、傍から見たら姉弟なんだろうかこれ。髪色違うからそれはないか。
「ところでメロ君ってお金あったりする?」
道を歩いた時、ふと私はそんな事を質問する。
「ん、急にどうしたんです?」
「いや、店が繁盛しているなら大丈夫なんだと思うけど、もし逆だったら……」
見た目ひもじいとかそういう印象はないけど、それでも気にはなる。
この子異世界人だし、色々と大変なんじゃないかとか。
「心配しなくても、お金はそれなりにありますし食えてますよ。花だって一旦自分の世界に戻った後、草原などに生えているのを引き抜いている物なんで、原価がないに等しいですし」
「そうか……というかやっぱり自分の世界を行き来しているんだね」
「まぁ何回か。もしよろしければ一緒に行ってみます?」
「えっ、いいの?」
「ええ。凶暴なモンスター、巨神、神獣とかいますが」
「やっぱ遠慮しときます」
モンスターに襲われて、こっちの世界で行方不明はごめんですはい。
でも一方で好奇心が出てくるのが、私の悲しい所。
ともあれ行きつけのスーパーが見えてきた。私はカートを取り出しつつ夕飯を考える。
まずメロ君がいるから多めのガッツリ系が行きたい。それに男の子なら肉が好きだろうから、それも視野に入れておこう。
となるとここはカレーライス一択。最近作ってないから、ちょうど食べたいと思っていた所だ。
「メロ君、カレー食べれる?」
「カレー? あのナンっていうパンと一緒に食べる奴ですか?」
「もしかしてインド行った事あるの? 辛いのが平気ならそれにしようかなって思うけど」
「辛いの結構好きですよ。ぜひともいただきますわ」
了承は得たので、早速食材回収だ。
ニンジン、じゃがいも、豚肉、たまねぎ、カレールー……一通りカレーが終わった所で、別の食材も買っておく。
家事をしながら学校生活しているんだから、毎日スーパーに行くという訳にはいかない。
「あっ、アルスの水買わないと」
アルス用のミネラルウォーターが切れそうだったんだ。すぐに飲料売り場に行ってみる。
すぐにその水が見つかったんだけど、どうも値上がりしているみたいだ。一人暮らししている身としてはちょっと苦しい。
でもまぁ仕方ない。これは買うから他の買い物は制限しよう。歯磨き粉はギリギリ使うとか節約もしなければ。
「沢口さぁん。後で払いますので、一緒に買っておいて下さい」
どこかに行っていたメロ君が、かごに何かを入れてきた。
大方お菓子だろう。だとしたら本当に子供だなぁ……
「……って!! これお酒!! お酒だから!!」
入れてたの缶ビールやんけ!! 何やってんだあんたは!?
「私の年齢になるとお酒飲めるのですが? こちらでは全く買ってなかったので、この機会にと――」
「それは異世界の話でしょう!? こっちではお酒は二十歳じゃないと飲めないから!!」
「えっ、そうなのですか!? そんな制限されているなんて、この世界みみっちいですねぇ」
「健康の問題ですからね!?」
法律でみみっちいって言われるなんて初めてだよ!?
結局メロ君は素直にお酒を諦めた。代わりに大量のお菓子を買ってきたので、「ああ、やっぱり子供だわ」なんて思ってしまったり。
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必要な物とか買いたい物は揃ったので、私達は会計を済ませる事にした。今回は3000円近くになっちゃったので、さらに安く買い物をしないと。
帰る時、メロ君が私より多く袋を持ってくれた。重いはずなんだけど涼しい顔しているのを見るに、異世界人は私達より身体を鍛えているとかあるかもしれない。
なんて思っていたらアパートに到着。
中に入った後、私はキッチンに食材を並べ始めた。
「さてと、メロ君はアルスと一緒に待ってて。すぐに作れると思うから」
「ああ、それも手伝いますよ。さすがに暇なので」
「えー、別にいいのに」
とか言ったけど、ここは二人でやった方が早く終わるはず。
お言葉に甘えようかな。
「…………」
「ん? アルスどうしたの?」
「何でもない」
そうかな……? 何かメロ君をじっと見ていたような気がするけど。
ともかく料理を始めようとしたら、玄関から呼び鈴が聞こえてきた。この時間に一体誰だろうか。
「はい……あっ、森さん」
「こんちはぁ。これ、母から送られた物なんだけど、よかったらどうかな?」
どうやら相手は森さんみたいだ。その人が発泡スチロールの箱を差し出してくる。
中を確認してみると、五個ほどの甘そうなリンゴが入っているみたいだ。
「えっ、いいんですかこんなに?」
「いいよいいよ、まだこっちにはいっぱいあるから。すごく甘くて美味しいんだよ」
「うわぁすいません。ありがとうございます!」
これは良い物をもらったなぁ。
これをすり下ろしてカレーに入れるという事も出来るのでは?
「……ん? あれ、その子って」
すると森さんが近くにいるメロ君を見つけた。
そういえばこの子と会うのは初めてだっけ。
「ああ、この子はですね……」
「まさか沢口ちゃん……ショタに目覚めたんだ!」
「何故そうなる!!?」
どういう思考回路をすればそんな発想になるんだ!?
というかその言い方、私がこの子を誘拐したとかになっちゃうじゃん!
「ち、違いますよ! この子は……私の親戚! 親戚が遊びに来まして!」
「ええ、おっしゃる通り沢口さんの親戚でして。名は
よかった、メロ君が援護をしてくれた。
あと咄嗟に考えたその偽名、想像を絶するくらいダサいような気もするけど、あえて突っ込まないでおく。
「何だ親戚かぁ。てっきり沢口ちゃんがあんな事やこんな事をするかと思っちゃったわ」
「私の普段のイメージって何なんですかね……」
「まぁ冗談冗談。田中君もそのリンゴを食べてね、そいじゃ」
森さんが手を振りながら帰っていく。その後、突っ込み疲れからため息を吐いてしまった。
全く、あの人といるとどっと疲れるな……。
「いやぁ、見ていると沢口さん突っ込みの鬼だなぁと思いますね」
「周りが変わった所あるからだよ……。あっ、風呂のお湯溜めないと。ちょっとそこで待ってて」
いけない、料理を考えているあまり風呂を忘れてしまいそうだった。
それにメロ君が一泊するんだから早めにしておかないと。
「……風呂ってなんでしょうか?」
「…………んん?」
背後からの声に、私は足を止めてしまった。
風呂を……知らない?
「……えっと、普段身体はどうやって洗ってるの?」
「ワタクシの世界では川で洗ってますね。こっちの川は汚いので濡れたタオルでやってますが」
「…………」
……これってもしかして、お風呂を教えなきゃいけないパターン?
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