第13話 一線を越えそうで越えない
「もしかしてこれ、さっき言ってた沢口さんの植物?」
「えっ? あっ、うん……」
「そうか……いやぁ、こんな植物見たのは初めてだなぁ。どこで生えてたんだろう?」
キャベツを食べているアルスに、誠君が興味津々になっている。あと身体中の粘液、色々と匂うんですがそれは。
ともかく隠しても仕方ないと思い、私は誠君に本当の事を教えた。
「……という訳があって、アルスを飼う事になったの」
「そうなんだ。いや、僕もたまに異世界ファンタジー読むけど、まさか本当にあるとは思わなかったな」
「私もだよ。種からこの子が出た時にはビックリしたんだけど、一緒にいると可愛く思えてきて……」
「なるほどね。僕もアルスみたいな子飼ってみたいかも」
思えば他の人にアルスを教えたのは、誠君で初めてかもしれない。
それと粘液そのままなんだけど大丈夫なのだろうか……。
「ところでさっき言ってた気持ちいいって……」
「えっ? ああいや、別に何でもないよ。ただ思ってた事が口に出ただけで、特に深い意味はないから」
何でもなくないじゃん。
もしかすると誠君、そういう性癖があったり……?
「とにかくさ、アルスの事は姉さんに言ったの?」
「それは無理だよ。お姉さんに知られたら敷金没収されそうだし」
「そういやそんな事言ってたな……。まぁ、アルスの事は内緒にするよ。どのみち言いふらしても信用されないと思うけど」
「……うん、ありがとう誠君」
色々と突っ込みどころがあるけど、何はともあれ誠君が納得してくれてよかった。
それにアルスの事を知っている人がいれば、後々助かる事があるかもしれない。
「ただいまぁっと」
突如として玄関からの声。となると森さんか!
アルスを見られたら敷金没収されかねない。私は咄嗟に、自分の背中にアルスを隠した。
ただ誠君の粘液は隠しきれなかったので、こっちに来た森さんが唖然としている。
「誠……もしかして……ローションプレイしたの?」
そういう唖然だったんかい!?
そうなると私がローション使ったという事になるけど、それ絵面が酷い事になりますよ!?
「ち、違うんだよ姉さん! その……片栗粉を水で溶いていたら自分に掛かってしまって!」
その嘘どうなんですかね。さすがに片栗粉を被ったなんて……
「ああ、そうなの? なんだぁ、期待して損しちゃったぁ」
信じちゃったよ!? でも森さん、私の嘘でも平然と信じてたから当たり前か。
あと期待して損したってどういう事だよおい。
「片栗粉か何か知らないけど早くシャワーで流してね。沢口ちゃんはお菓子買ってきたから、もしよかったら……」
「いえ、今日はこの辺で帰ろうかと……お肉美味しかったです! お邪魔しました!」
もはや長居は出来ない。
アルスを背中で担いで、森さんに見れないよう移動。それで玄関近くまで行ったらすぐにダッシュ。
後はそのまま自分の家に戻った訳だが、何故か息切れをしてしまう。緊張からそうなったんだと思いたい。
「ハァ……アルス、もうああいった事はしちゃ駄目だよ?」
「グウウウン……」
しょんぼりするアルス。まぁこの子なりに反省している事だろうから、大目に見てやろう。
アルスを日なたに当てれるような場所に置いた後、すぐにミネラルウォーターと液体肥料を用意する事にした。その時ふとさっきの丸呑みが思い浮かんでしまう。衝撃的過ぎて頭から離れないのかも。
あれは色々と凄かったしな……それで「気持ちいい」だなんて、誠君どれだけ鋼メンタルなのか。
あれで気持ちいいだなんて……気持ちいい……。
「…………アルス」
「ギュイ?」
「…………ちょっと腕だけでもいいから……丸呑みしてくれる?」
つい口を滑らせてしまったよ私は……。
これはあくまで興味本位、好奇心、遊び半分。決して誠君のようにドMになった訳ではない、ええ断じて。
「ギュイ!!」
――バクッ!!
「ん……!」
アルスが差し出した右腕をくわえてきた。
やだ……しゃぶっている。指を丹念に吸っている感じもしてきた。腕がヌメヌメしててゾクゾクするけど、何でだろう……顔が熱く……。
「……ハァ……」
気持ちいい。むしろ全身を……
って何を考えているんだ私は!?
「も、もう終わり!! 水用意するから待ってて!!」
急いで引き抜いた後、台所に向かった。
全く私って奴は……腕も凄いヌルヌルしてて卑猥になってて……。
「………くさっ」
試しに嗅いでみた所、人間のヨダレのような匂いがしました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます