第10話 いいから液体肥料《ドーピング》だ!!
「メロ君、今日はごちそうさま」
照り焼きを食べた後、私とアルスはそろそろお
お腹一杯になって、さっきのフイエスという花ももらえて、今日はいい事だらけだ。
「いえいえ、あれほど美味しいって言ってくれて嬉しかったですよ。また食べたくなったらいつでも来て下さいな」
「うん、そうする。じゃあまたね」
こうしてビランテを離れ、アパートに戻る事になった。
あと今回の件でメロ君の事が分かった気がする。最初の頃の怪しい感じが懐かしく思えてきそうなほどだ。
ともかくアパートに着いたので中に入ると、アルスがリュックから顔を出してくる。
「キュウ」
「ああごめんね。すぐに水出すから」
そろそろミネラルウォーターをあげる時間だ。
アルスをペットボトルを渡した途端、それを掴んでがぶ飲みした。私はその間、さっき買った液体肥料を取り出す。
確か一日に一回あげた方がいいってメロ君言ってたな。土に刺してそのまま放置するとか。
「オ゛エエエエエエエゥウウ……」
「ゲップやべぇ。まぁ、ちょっと動かないでね」
水飲みが終わったようなので、早速肥料を突き刺してみる。
――ビクンッ!!
「ヌホオオ!?」
「えっ!? アルスどうしたの!?」
何か刺したらビクンってなったよ!?
もしかしてこの肥料、まさか毒なのでは。いやメロ君がそんな事をするはず……。
「オオオオオ……オオオオオオオ……」
いや、よく見るとかなり気持ちよさそう。
あれかな、人間で言うドーピングのような物だろうか。だとするとアルスの様子に納得出来るけど、
「アアアアアアウウウ……オオオオオオオエエエンン……」
「……………」
何だろう……見ていて何とも言えない気持ちになってしまう。
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そうして翌日、学校の日。
昨日は休んでしまったので、勉強の遅れを取り戻さないといけない。それにちゃんと先生には謝らなければ。
そう考えながら廊下を歩いていると、目の前に先生が見えてきた。
「おっ、沢口か」
噂をしたら影。
私はすぐ先生に挨拶する。
「おはようございます。それと昨日はすいません……この通り元気になりましたんで大丈夫です」
「ああ、別にいいよ。それに……もし辛い事があったら先生に言うんだぞ? ちゃんとそういう事には厳しくするから」
いえ、ですからアルスの病気があったからです。何て言えないのが歯がゆい。
まぁ、先生は置いといて教室に入ろう。それで中に入ったんだけど、特にこちらを振り向くクラスメイトはいなかった。
慣れているけど、やっぱり寂しいと言えば寂しい。
(あっ、あの地味な沢口じゃねぇか)
(何か辛い事があって欠席したって言ってたよな。陰で女子に足を舐めさせられたりとか。地味だけど本当可哀そうだよな……)
(同情するよな……特に地味な所とか)
ちょっと待って男子の皆さん? 何でそんな事になってんの? あと地味って何なの、いや本当の事だけどさ。
変な誤解をされて、ますます居心地が悪くなった気がする。これじゃあそう遠くない内に敬遠されるのかな……。
でもいいか。家にはアルスがいる。
あの子と一緒にいると癒されるし、暗い気分も消えてくれる。早く家に帰りたい物だ。
「皆おはよう。今日は突然だけど転入生を紹介するぞ」
後から入ってきた先生がいきなりそう言ってきた。
転入生……確か前に「隣町の高校が老朽化で取り壊しになって、生徒や先生が異動してくる」的な事を言っていたな。
「先生ぇ、男子ですか? それとも女子?」
「残念ながら男子だ。ここの事はよく分かってないから、何かあったら教えてやってくれよ。じゃあ入ってくれ」
扉からその男子生徒が入ってきた。
身長は男子として普通。黒髪は短くも長くもなく、顔がやや童顔。
制服を着崩していない辺り、真面目さがあるように見える。
「
「よろしくお願いします」
見た目に違わず礼儀は正しい。悪い人ではないだろうな。
……後なんか引っかかるけど、きっと気のせいだろう。多分気のせい。
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