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 目が覚めても、すぐにはベッドを出ない。考え事をする。お布団の中で横になって考えるのがよいのだ。きっと血行が良く、脳へ酸素をいっぱい送れるから。

 普段は小説のネタについて考えることが多い。現実でなにかあれば、何度もリプレイして考察する。今みたいに昨夜のアジサシくんとのやりとりを反省するのは、このタイプ。アジサシくんに嫌われちゃったかななんていうね。

 ケータイが振える。手を伸ばしてつかみ取る。アジサシくんからメール。

『昨夜話したこと覚えていますか。さっそくツイッターやってください』

 幸いなことに、アジサシくんに嫌われてはいなかったみたい。

 ツイッターってなんだっけ。覚えていません。よって、やれません。私はまだお布団でぬくぬくしているのです。

 メールの返信を考えながら、メンドクサくなって、ラインでなんだっけ?と送った。通じるだろう。

『ツイートしろ』

『自分のことを書け』

 これは、思いっきり命令されておるのですけれど。ラインだから?メールを見返す。丁寧語を使ってらっしゃる。この間になにが。私のなんだっけ?が、そうさせた?まずい。

『昨日は飲み過ぎて頭が痛い。もう少し布団でぬくぬくします』

 これでどうだ。ツイートしたぞ。文句はあるめえ。

 もう布団でぬくぬくしていても落ち着かなくなってしまった。起きることにする。

 朝食の納豆をご飯にかけ、インスタントスープを丁寧に混ぜているところにケータイがブルブル。きっとアジサシくんだ。今は見ない方がよい。消化に悪い。

 朝食を終え、コーヒーをゆっくりいれる。ぽたぽたとお湯を垂らす。頭はまだ眠いのにと脳内でアジサシくんに文句を言う。だって、アジサシくんのせいでお布団の中で居心地が悪くなってしまったのだもん。

 デスクについて、ディスプレイの電源を入れる。ツイッターへログイン。コーヒーをちびり。あー、アルコールの残る脳内にカフェインが浸みわたる。目の奥にじんわりくる。画面にさっき投稿したツイートが表示された。うむ、うまく送れておる。

 さて、アジサシくんはなんと申してきたかな。素早い反応にお褒めの言葉が届いたのだったりして。ケータイでメッセージをチェック。

『くだらない。そんなことじゃなくて、小説に関すること』

 く、くだらない。私の頭痛がくだらないだと?ええ、ええ、そうでしょうよ。私の頭なんか、パカッと割れてひよこが飛び出せばいいとでも思っているんでしょうよ。アジサシのくせに。今度会ったら焼き鳥にしてくれようか。といいつつ、お姉さんだからね。ちょっとからかってやろうか。

『もう、意地悪なこと言っちゃって。一緒にぬくぬくしたかったの?』

 これでどうや?

『朝飯食ってるんで』

『気持ち悪いことやめてください』

 丁寧語にもどっちゃったよ。一周しちゃった?

『わたくしは、なにを書けばおよろしいのでしょうか』

 今度は下手にでてみた。

『ノートPCもって、ド・ドール集合な』

『はい』

 私はスパルタ教師に教わる素直な生徒になってしまった。

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