第114話
「ず…」
「るい?」
「おー?」
飛び出した言葉にアドラ達の身体が固まってしまう。彼女を守ろうと飛び出そうとしていたクリスティアンは顔から地面に突っ込んでおり、説得しようと慌てていたレオはおかしなポーズで止まってしまうほどに。
そんな周囲の様子などお構いなしに、彼女は想いのためを放出し続けた。
「ずるいですの! ずるいですのォ!! わたくしだってまだレオ様と旅をしたことがありませんのに、どうして貴女は一緒に居るんですの!!」
「お、おー?」
「おー? じゃありませんわッ!! そもそもレオ様が何者であられるかご存知ですのッ!」
「ゆうしゃ?」
「そうです! レオ様は勇者! そしてわたくしは聖女!! レオ様の隣にはわたくし! この、わ! た! く! し! が!! 居るのが当然ですの!!」
「おー? マリナはせいぎのみかた?」
「正義の味方で聖女ですわ!!」
「おーっ」
「ずっとお傍に控えて居たい気持ちを押し殺し、レオ様の御役に立とうとこの数年我慢し続けて修行をしていたというのに、いうのにぃぃい!!」
「どんまい」
「きぃぃイィイイイイ!!」
両肩を掴まれてガクガク揺さぶられるモニカの頭がぐわんぐわんと揺れ動くが、そこに殺意があるわけでもないため、大人たちはどうしたら良いか分からない。
頼みのレオも、自分が話題にあがっていることは分かるのでどう話に入れば良いか踏み込みかねていた。
ハンカチーフがあれば噛み千切りそうなほど悔しがりながら、彼女の恨み言は止まらなかった。
「まッ! まさかレオ様とごは、ごはんをっ」
「たべた」
「はゥゥゥ!? レオ様とごは、ごはんッ!! ほら、マリナ。あーん。ああ、そんなレオ様人が見ております。見せつけたいのさ。ああ、そんな、そんなぁぁ!」
「おー?」
――がしっ
「お風呂は」
「べつべつ」
「安心致しましたわ。一緒だと聞けばどうなっておりましたでしょう」
息子の教育に悪いと判断したアドラが背後で巨剣を構え、それをレオが必死で止めているためディアナは自分しかいないではないかとため息交じりで話しかけることにした。
「ちょぉっと良いですかぁ?」
「何ですの、ディア……、ああぁぁあなたぁああ! さきほどのレオ様におぱっ、おっぱっ!!」
「ぁあ、これこれ。この反応がないとねぇ、でも今はそうじゃなくてですねぇ。ええと、良いんですかぁ?」
「なにがですの!」
「この子、魔族なわけで、更には魔王なんですけどぉ」
「それがどうしたというのですの!!」
「ふへぇ」
「そんなことよりも、そんなことよりもレオ様と彼女が一緒……! わたくしでもまだですのにレオ様と、レオ様とぉぉおうぎぃいいいいい!!」
「アドラぁ?」
「分かっているよ」
害悪であると判断したアドラにレオは目と耳を覆われ遠くに避難させられていた。
「おー……、ごめんなさい?」
「レオ様と一緒に旅を出来るということがどれだけの名誉であるか貴女はちゃんと理解しておりますの!? また、おー、とか言うんじゃないでしょうね!」
「レオはともだち。うれしい」
「と、ととととっ! わたくしのほうが先に友達だと言って頂いておりますわ!!」
「つまりは女扱いされていないわけでぇ、イッタィ!?」
「ふんッ! ここからですの! ここから一緒に魔王を退治する旅に……、うん?」
余計なことを言う足を踏み抜いた彼女が、自身の言葉の違和感に気付きストップする。口の中で言葉を復唱して、そして、
「貴女魔王なんですのォォオォォオオオ!?」
「おー」
「やっとかぁ……」
本当にやっと話が進むのである。
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