第7話 作成過程

レベル制、得点制、攻撃力がない特技で戦うカードゲーム。

僕1人では思いつきようがないカードゲームだ。


部長の歩さんがノートを開き説明する。


「強いモンスターと弱いモンスター、それぞれのメリットとデメリットがなくてはならない。強いモンスターのHPが高くて、弱いモンスターがHPが低いのは定石として、問題は特技だね」


どうすればより面白いゲームになるか。ただダメージを与えるだけの特技ではなく、ダメージを与える以外にも効果があれば面白いかもしれない」


「まあ、とりあえずデータをまとめてみるか」


雄二先輩はパソコンの電源を入れ、エクセルにデータを入れ始める。


エクセルでモンスターごとのHP、得点、特技をまとめる。


「特技は君が考えるんだ、誠くん」


歩さんは僕を指さす。


そうだ。これは僕が完成させないとだめなんだ。

HP、得点、と問題はさっき言った通り特技だ。


特技はレベルごとに使える。そしてレベルが高い特技ほど強力なものになる。

例えばレベル3の場合、5ダメージでレベル4の場合は7ダメージみたいな感じで。


「あとね。実際にゲームを作ったことしか分からないと思うけど、ゲームバランスだね。実際にプレイしてみないと、いくら自分の中では完璧に仕上げたつもりでも、ガバガバだってこともあるんだ。そして、ゲームが仕上がったどうかを判断するにはデッキをしっかり完成させないといけないんだ。つまりルールとデッキ。この2つが完成してないと自分のゲームが完成にならないんだ。つまりだ誠君。デッキとルール、それらを君は作らないといけない。この感覚を覚えてほしいんだ」


「歩さん・・・」


「部長、それはまだ誠くんには難しいのでは・・・」


「なに、習うより慣れろってやるさ」


そうだな・・・。モンスターの強さにランクみたいなものがあれば・・・。例えばAからFまでランクを付けるとする。Fが一番弱くて、Aが一番強い。モンスターごとに数字のレベルを定めたら、特技のレベルとかぶって分かりにくい。そもそもレベルの最大値をどうするか・・・。AからFで6つだからレベル1から6まで決めよう。ランクごとに使えるレベルの特技があって、あ、レベルの上げ方はどうしよう。仕方がない。ここは歩さんと雄二さんに意見を聞いてみよう。


「あの、レベルの上げ方はどうすればいいでしょうか?」


歩さんと雄二さんは考え込む。


「例えばモンスターを倒したとき、経験値でモンスターのレベルが上がるとかだね」


「いいですね。」


「だが、その場合、例えば相手モンスターを倒したとき味方のレベルが上がると、先攻が圧倒的に有利になるんだ」


歩さんの言うように倒した側がどんどん有利になるんだ。


「そうだ、モンスターを倒したとき、両プレイヤーのモンスターのレベルが上がるのはどうですか?」


「モンスターを倒したとき、両プレイヤーか、、、。うん、その線で考えてみて」


僕はさらに頭を回転させる。

レベルが上がるタイミング。

1つは先ほどの話に出た通りモンスターを倒したとき、レベルが上がるシステム。

後は・・・。


「特技によるレベル上げはどうですか?」


「例えば、レベル1の特技で味方のレベル効果があるカードがあるとき、レベルを上げるモンスターを引けるか引けないかで勝敗が大きく左右されると思うよ」


と雄二さんがいう。

そうだ。1ターン目で先攻でレベルを上げるモンスターが0枚で、後攻がレベルを上げるモンスターを2体出せば、最初の1ターンだけで戦局は見える。


ならどうするか。

モンスター効果以外でもレベルが上がる。

なら毎ターンルールでレベルが1上がるようにする。


「レベルがルールで上がるのはどうですか?」


「そうなると、どのフェイズでレベルがどれくらい上がるかだね。僕はレベルが1上がるのがいいと思う」


歩さんのアイデアでひらめいた


レベルが上がるタイミングは先攻のメインフェイズから。


ちょっと待てよ・・・。

このゲームはモンスターがいなくなるか、得点が一定数たまったらゲームの決着がつく。


「1ターン目にモンスターが出せなかったらどうしよう・・・」


「なら最初から弱いモンスターを1体出せるのはどうだろう?」


そうか!。

ならFランクのモンスターを1ターン目から出す。

Fランクは1番弱いモンスターだから、最初からFランクモンスターがいればいいだろう。

デッキからかゲーム開始時の手札からか・・・。


「デッキからだね」


「え・・・」


「デッキから出すのがいいと思うよ。どんなカードでもいい場合なら手札からでいいけど、弱いモンスター限定なら何回も引き直ししないといけないからね」


さすが歩さんだ。

部長だけあって賢い。


「モンスターゾーンは4か所がいいと思うよ」


雄二さんが言う。


「なるほどです」


雄二先輩はボードに今まで考えたものを書き足す。


「ちょっとまとめてみます」


頭の中で今まで考えたアイデアを整理する。


まずカードの種類は魔法カードとモンスターカードだ。

モンスターにはランクがありA~Fがある。

モンスターの特技にはレベルがあり、特技は決められた以上のレベルがないと使えない。

レベルを上げる方法は2つある。

まずは自分のターンのメインフェイズ開始時だ。そしてモンスターを倒したときだ。

モンスタースペースは4か所。

勝利条件は相手のモンスターを全滅させるか、、、もしくは相手の得点が一定数を超えたときだ。


僕は頭の中でまとめたものを歩さんと雄二さんに話した。


「なるほどね・・・」



「部長・・・」


なんだろう。この緊張感。

しばらくの沈黙。

自分のカードゲームが認められるか・・・。

自分だけでは分からない・・・。


「・・・」


少しの間、沈黙が続いた。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る