第4話 アファニティ

西沢さんとゲームを遊び終わり、道具を片付ける。


「西沢さん、このゲーム、本当によくできてるよ。楽しかった」


素直にそう思えた。女の子でも、こんなゲームが作れることに驚いている。

ダンジョンフレンドモンスター


敵を倒すと、確率で仲間となり、コマンドデッキに加わる。

つまり、味方モンスターの攻撃がコマンドの1枚となる。

アイテムでコマンドデッキを強化する。

デッキ成長型ゲームというわけだ。


デッキ成長型ゲームは一応ほかにも存在するけど、戦った敵をデッキの一部として加えるゲームはめったにない。


「僕もこんな面白いゲームをつくれたらいいなあ」


「本田君ならできるよ。だって君がカードゲームしてるとき、とてもいきいきしてたから」


そういえばそうだ。自分でも気づかなかった。tcgをやってるときは勝つことばかり、気に取られて、楽しむことを忘れていた。

といっても仕方がないかもしれない。

tcgは勝つために新しいカードが次々でてるから、環境についていけないし、負ける時は圧倒されるから悔しい。


まあ、tcgの全てを否定するわけではない。人によってはより強い相手を求めて、上の人らと戦い楽しむ人もいる。


でも、自作カードゲームはだれに対しても平等だ。自作カードゲームだけのものではないけど、だれでも気軽にルールを知らなくても楽しめるのが、自作カードゲームの特徴だ。


「じゃあね、また一緒に遊ぼうね」


「ああ、またね西沢さん」


僕は西沢さんと別れる。

そのまま自宅に一直線だが、その時もゲームを考える


「作る前に勉強しないとな」


自宅の勉強机で入試に向けて参考書を漁る。

勉強しないと目的は達成できないし、カード作らないといけないし。


23時となり、ようやく僕の時間がやってくる。


「アファニティか・・・・」


このゲームだ。今完成させたいのは・・・。


手札5枚。


そうだ、トランプをゲーム開始時両プレイヤーに半分分けよう。

これでトランプの総枚数は52枚だから26枚


これで山札はお互い26枚、手札は初期手札だけ6枚にすれば

1ラウンド終了時に次から5枚引ければ、ちょうど5回目でゲームが終わる。


そうだそうだ。

なぜだろう、勉強で頭は疲れてるはずなのに、頭がフルで回転する


まずゲームの内容を確認する

プレイヤーの山札は26枚

トランプを半分に分けた枚数だ。


1ラウンド目に両プレイヤー6枚ドローする。


じゃんけんで先攻後攻を決める


先攻は手札のカードを1枚場に出す。


後攻は先攻が出したカードより、強いカードを出す。


それを繰り返し、手札が0枚になるか、または相手がカードを出せなくなった場合、そのプレイヤーの勝ちとなる


それを5ラウンド分行う。

ここからは手札が5枚になる。


こんな感じだ。


「後は、作ったカードを見てもらう。高校生になって御蔵高校に行くまでの辛抱だな・・・いや、ちょっと待てよ」


そういえば、忘れていた。

そう西沢さんの存在だ。


彼女にプレイしてもらえば・・・。


いや、前のときは彼女から話しかけたから大丈夫だったけど、僕が彼女に話しかけるのは・・・かなり緊張する。


もともとコミュ障の僕が女の子に声をかけるか・・・。


「高校まで待つか・・・」


たかだかトランプのゲームでも、考えるのは難しいと思った。



次の日の放課後、また西沢さんと視線が合い、声を掛けられた。

ナイスタイミングだと思った。

これで僕の考えたアファニティをテストプレイできる


「西沢さん。今日は僕の考えたゲームをプレイしてもらいたいんだけどいいかな?」


「いいよ、全然いいよ。一緒にやろっか」


彼女は笑みを浮かべ席に座る。


お互いにトランプのカードを半分に分ける。


「説明しながらやってみよう」


「うん」


説明しながらプレイして気づいたことが1つあった。

それはトランプのマークの相性が分かりづらいところだった。


ハートはクラブに強い

クラブはスペードに強い

スペードはクローバーに強い

クローバーはハートに強い


この4つの関係が覚えにくいということだ。

例えば、

炎は氷に強い

氷は雷に強い

雷は水に強い

水は炎に強い

など、はじめから相性が理解しやすいものならともかく

4つのマークでは相性が理解しにくいのだ。


「うーん、ちょっと難しいね」


「ごめん、僕も分かりずらいや。自分のゲームなのに」


ゲームを作るのは甘くなかった。やはり僕では無理なのだろうか・・・


「そうだ!」

といって西沢さんはポンと手を打つ。


「このゲームの設定をいじってみようよ」


「仕方ない。考え直すか・・・」


「ゲームのシステム自体は大富豪みたいなもので、それをマークでギミックを入れるみたいだね」


よく考えたら、大富豪のアレンジ、いや劣化版なのだろうか。

やっぱり自作のカードゲームを考えるのは、僕には無理なのか・・・。


「じゃあ、こういうのはどうかな?」


西沢さんはテーブルにトランプを並べ、実際のシミュレーションをしながら説明する。


彼女のアイデアはこうだ。

1ラウンド時、プレイヤーは6枚カードを引く。

カードのマークの効果はハートだけ。

それはハートの数値分、自分のカードの数字が下がる。

カードの数字が攻撃力になるということだ。


手札を引いたら、プレイヤーは任意の枚数、手札のカードを場に伏せる。

両プレイヤーが伏せカードを公開し、出したカードの数字の合計が高い方が相手が出したトランプのカードを得点場に置ける。


自分の手札が弱ければ、伏せカードを1枚だけ出すことで相手が得る得点を抑えられる。


このゲームでは手札をたくさん出せば、数字の合計が基本的に高くなるが、ハートのカードが面白いところで、例えば、相手が手札を全て出せば、相手が負ければ5枚分の得点を得られるが、手札が弱ければ、5枚もある相手に1枚だけ出して逃げるだろう。


あえてハートのカードも出すことで、相手に圧力はかけられる。


「西沢さんはすごいや・・・俺のゲームを進化させるなんて、さすがだよ」


「そうかな。本田君もきっとできるよ」


「何かカードゲームとかやってた?」


「少しだけ・・・あ、もうこんな時間!じゃあね」

西沢さんは即刻教室から出ていく


「またね・・・」


西沢さんは一体何者だろうか。ダンジョンフレンドモンスターズ。あのゲームは決してカードゲーム初心者が作れるものではない。


「僕も頑張ろう」



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