第5話 魔女を訪ねて
「うーん、見つけられそうにないな・・・」
まさか細く入り組んだ路地をあの速度で入っていけるとは思っていなかった。道を曲がるたびに距離を開かれ、姿を一瞬見失った瞬間に、彼女のことを見失ってしまった。
どんな魔法かはわからないが姿を隠され、まかれてしまった。
「仕方ない、戻るか」
セロンとネッツもそろそろ動けるようになるはずだ。ともかく二人に合流しなければ。
「あ、そうだ」
彼女ほどの魔法の使い手なら知っている人間がいるはずだ。彼女が話してくれない以上、噂や彼女のこと知ってる人に話を聞くしかない。
よし、そうとなれば酒場だな。
セロンとネッツと東の大門で合流してから酒場に戻った。
比較的、軽傷の人間達はすでに祝杯を上げていた。
見まわして数人で飲んでいる集団を見つけ黒エールを片手に声をかけた。
「ちょっといいですか?」
「おう、なんだい…、こ、これは天使様。どうかされましたか?」
その発言を聞いた瞬間、セロンとネッツが怖い顔をしたので片手で制しておいて、話をする。
「金髪で赤い瞳、黒い帽子と黒いローブ、それと赤いスカーフをつけた女性の魔法使いについて何か知っていることってありませんか?世界の敵を倒すために集まった方だとおもうのですが……」
「やけに具体的だ…ですね。オレは知らないですが」
「おらも見てない」
「そんな子がいたらおれゃ、声かけてるね」
はははは、と盛大な笑いが起きる。ただ一人を除いて。
「ま、まさか、放浪の魔女」
放浪の魔女、という単語がでると盛大に響いていた笑い声が一瞬で止む。
「おいおい、それりゃないだろ」
「そうだ、放浪の魔女は三十年前の大戦で死んだって話じゃねぇか」
「いや、この天使さんの話の女の特徴はどう考えても」
「きっと他人の空似だろ。そうじゃなきゃならねぇ!」
言い争いが始まる。一様に恐れを表情に滲ませながら。
「……放浪の魔女、そんなに恐ろしい人なんですか?」
その場にいた全員が首を縦に振って肯定する。
「魔女は噂だと不老不死で二百年間、世界の敵との戦いがあるたびに姿を現しては人間側に付くんだが・・・こいつが現れた時、俺たちは毎回、世界の敵との戦いに負ける。参戦した奴らは皆殺し。ただ一人、その魔女だけは必ず生きて帰ってくる」
「だから、とうとう三十年前の東の大進行の時は、現れた魔女に毒を盛って、眠ってる隙に首を刎ねたそうなんだ。そん時に大勢が首なしの死体を見て魔女が死んだことを確認してんだ。天使の兄さんが見たのはきっと他人の空似だろ」
「いや、俺は魔女を見たって話を聞いたぞ」
「そんなことあるか」
「本当だって。前にボルデイ火山にいたドラゴンが討伐されたって話、殺したのは放浪の魔女らしいって聞いた」
「まさか幽霊になって出たってのか?」
また言い争いが始まりそうになってきたので割って入る。
「なるほど。ではその放浪の魔女というのは?まさか本名じゃないですよね?」
「知らねぇな。なんせ俺らが生まれる前からあるらしい話だしな」
「そうですか。ありがとうございます、皆さん。あ、よかったらこのエールどうぞ」
それだけ言ってその場を離れ、酒場を出る。外に出るとネッツが口を開いた。
「なぜラムフィリル様はその魔女について聞いているのですか?」
「それは興味があるからだよ。うまく言えないけど、彼女は噂の通り、他の魔法使いとは違う気がしてね。
ああ、それともう一つ。僕が話した魔法使いはさ、天使相手だって言うのにすごく自然体なんだよ。だからだね。彼女に興味を持ったのは」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます