第28話 NPCサポートユニット

 飲み会でギルドルームからNPCユニットを呼ぶかどうかで争っているショウとルーシー


「呼ぼうよ!絶対盛り上がるよ!」


「盛り上がるのはアンタの性欲でしょうが!」


「失礼な!紳士としてyesイエスイケメンmoreモアタッチの精神を心掛けてるよ」


「だからタッチするな!私のよアレは!」


「ギリアンをアレって言うな! それに僕がタッチするんじゃない!タッチされるのが良いのさ! 願わくばね!くそう・・・」


 喚くショウに呆れながらもルーシーは言った


「泣くな鬱陶しい! 呼べばいいのね?どんな形であっても」


「ルーシー!」


「今呼んであげるわね」


「ありがとうルーシー!」


 ルーシーは通信アイコンを開いてサポートユニットに通信した


「なんの御用ですかルーシー様」


「βチームのをこちらに向か合わせて、ただしギリアンにはD型装備を」


「他の者の装備はどういたしましょうか」


「他のメンバーは通常装備でいいわ」


「かしこまりました、直ぐに向かわせます」


 ルーシーが通信を切ってから15秒程でサポートユニットが酒場の個室に到着した


「お呼びでしょうかルーシーお嬢様」


「総員は位置について給仕をなさい。ギリアンはターゲットSについて、後はランダムに一人づつ」


「かしこまりました」


 サポートユニット達は飲んでいるメンバー達の飲んでいる席へ移動する


「メアリー様、執事のフランシスです。何かご要望が有ればお申し付けください」


「ありがとう。こんなサービスもあるのね」


「大きなキノコですね。食べやすい大きさに切り分けましょうか」


「え、お願いできる?」


「お安いご用です」


「うわぁ・・・、本当に切り分けてる。リアルではどうなってるのかしら」


 メアリーはVRユニットの窓を開けて覗き込むと、ロボットアームが器用に切り分けていた


「げぇ」


「どうかなさいましたかメアリー様?」


「いいえ、フランシスさん気にしないで、ちょっと見ちゃいけない物を見ちゃっただけだから・・・」


 鳩鳥の席にも執事が向かう


「鳩鳥様、お飲み物をお注ぎします」


「おう、ジョナス久しぶりだな。お酌してもらえるなら日本酒がいいな、頼んでもらえるか」


「何時もの様におつまみに帆立のカルパッチョもご注文なさいますか?」


「頼む」


「かしこまりました」


「いやぁ、AIも馬鹿に出来ないね。これで女なら言う事無いんだがな」


 一方その頃、ポピーの方に向かった執事の様子は


「ポピー様、担当になりましたマイクです、よろしくお願いします」


「よろしくねマイク」


「何か御用は有りますか?」


「じゃあ焼きシャケ頼むからさ、骨取ってくれるかい」


「かしこまりました」


 その頃ショウはどうしているかと言うと・・・


「うわわ!ギリアンなにそれ!?」


「ルーシー様の新作、D型装備でございます」


「フルプレートな上にトゲだらけじゃん!」


「はい、触れると電流が流れますのでご注意ください」


「なんだって! ルーシーどうなってるのさ!」


 ルーシーは不敵な笑みを浮かべて言った


「ただの対アナタ専用の全身貞操帯よ。ちゃんと呼んであげたんだから感謝しなさい」


「くそう、バイザーだけでも上げてやる!」


 ショウはバイザーに手を触れると電撃が流れ、ショウのアバターは意識に関係なく手を放してしまう


「おおう!? おのれルーシーめ、こしゃくな機能を!」


 ルーシーの代わりとでも言わんばかりにギリアンは頭を下げた


「恐れ入ります」


「ぐぬぬ・・・、手だけでダメなら全身でタックルだ! さあ僕の愛を受け取ってぇえ♡」


 ショウの努力もむなしく電撃で弾き返され続けてしまう


   「バチンッバチン!」


「ぬわわ!」


 その様子を見てルーシーはメモを取り出しデータを記入する


「効果はありね。でも、ここの部分を改良すればもっと効率よく・・・」


「まだ改良する気かいルーシー!」


「当然でしょ」


「うぐぐ・・・サブクラスじゃどうにもならないか。ならばスクショだけでも!」


 ショウはギリアンをスクリーンショットの納めようとしたが、撮った瞬間にギリアンの鎧が発光し撮影に失敗した


「これすらもダメ!?」


「ぬかりないわよ」


 静かに答えるルーシーの言葉に対して、隣で座っていたポピーはゾクゾクしていた


「ああ、いいなあ、ルーシー殿のその表情ぅ」


「ポピー様、骨をお取りしましたよ」


「ありがとうねマイク、やっぱり骨を取ってもらえると食べやすいんだ。骨無しサーモンも有るけど、どうも違和感がぬぐえないだよね」


「お役に立てたようで私も嬉しいです」


 しかし直ぐにポピーは正気に戻り食事を楽しむ事にした。その光景を何となく横目で見ていたショウはふと思いつく


「そうだ! フランシス、ジョナス、マイク!誰でも良いからギリアンの鎧を脱がせて!」


「「その指示には従えません」」


「うおお!こっちもダメか!くそう!」


 ショウは他の執事にも見放されうずくまった。その様子を見たメアリーあショウにこう言う


「さっきから騒がしいわよショウ、大人しくしてよねもう」


「うう、ギリアン・・・、鎧で顔すら見えないなんて」


 メアリーは呆れたように言う


「鎧脱がせればいいの? ならそのギリアンを防具屋の更衣室にでも連れて行ったら? あそこなら装備付けたまま色々な服に見た目だけなら変えられるでしょ」


 メアリーの言葉を聞いてルーシーは一言「あ」と呟く


「戦線離脱!」


 そしてショウは店の外に全速力で駆け抜けて行き、ショウにつく様に指示されたギリアンもついて行ってしまった。その様子を見たメアリーとルーシーは呟く


「あー行ちゃった・・・・。ルーシー、あんな簡単な事で本当に鎧取れるの?」


「見た目だけならね、それにそこら辺もちゃーんとぬかりないわよ」


「やっぱり?」


 その頃、防具屋に全力疾走するショウは欲望垂れ流しで独り言を言っていた


「やっほーぃ! ギルドルームの外に連れ出した今がチャンス! 防具屋の更衣室であんな衣装やこんな衣装をギリアンに着せるチャンス! 待ててねギリアン、鎧のせいで直接触れ合う事は出来なくても!僕らの愛は永遠さ!」


「お戯れを、ご冗談がお好きな方だ」


 ショウは防具屋に駆け込み


「いらっしゃ・・・」


「サポユニ用のカタログください!今すぐ!」


「はいよ」


 店員からカタログを受け取り更衣室に駆け込んだ


「うおお!」


 そしてもの凄い速さでカタログから服を選び試着を選択しギリアンを着替えさせた


     「キララララララン」


 そして、ショウが見たモノは・・・・、ショウのはだけたワイシャツにぴっちりとしたズボン服を試着された、筋骨隆々のひげを蓄えたオッサンだった


「なんだこの工事現場のオジサンはぁあ!!?? 誰だお前は!!!」


「やあ! 採掘用レンタルサポートユニット、仮称ギリアンさ! よろしく!」


「は、はめられた!! 本物のギリアンはどこー!?」


 そしてレンタルおじさんの仮称ギリアンは狼狽えるショウに優しく声をかけた


「大丈夫ですか? 私に何かできる事は?」


「なんでこう無駄にさわやかな口調なの!?」


「恐れ入ります」

 


 

 

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