第26話 注文

 酒場に集まっていくアンファングの仲間達


「すまん!少し遅れちまった!」


 少し遅れて到着した鳩鳥が部屋に入って急いで席につく。そんな彼にルーシーとポピーが絡む


「お仕事お疲れ様。珍しいわねハクマが酒の席に遅れるなんて」


「キミが誘ったんじゃないか、どうしたんだい?」


 鳩鳥がぐったりした様子で話した


「いや~、タイヤがパンクしちまってよ。それがきっかけで家を修理に出したら他にも異常が見つかって修理を頼んだんだが、タクシー代ケチって歩いて近場のネットカフェに向かったらこのざまよ」


 メアリーはそれを聞いて心配して聞いた


「お家を修理って、大丈夫なのハトちゃん」


「修理と言っても無人の修理工場で直る程度のもんだし、直ったら俺の居るネットカフェの駐車場に自動で送ってくれるから大丈夫だよ。保険もおりたしな」


「そうなんだ。なら取りあえず安心ね」


 ポピーが今の話を聞いて呟く


「自動車のAI化で車検とか修理とか工場に行かなきゃいけなかった施業が、ほぼ自動だもんな。便利な時代になったね」


 さらに鳩鳥がポピーの話に乗っかり話かける


「それに加え工場での作業も自動化だから、金のあるヤツは家に居ながら新作のパーツが出る度に工場に車送って改造を頼むもんだから大忙しって話だしな」


「なんでも通販感覚になったよね。車を買うだけ買って改造とかはするのに、自分は一切の乗らないカーコレクターとか居るなんて話もあるし、時代は変わったねハトリン」


 話し込もうとする二人に向かってルーシーが注意する


「ハイハイ静粛に、お話に花を咲かせるのはお飲み物を頼んだ後にしましょう」


 ショウがそう言い出すルーシーに質問した


「ルー爺は来ないの?」


「ルーベンスおじい様はご予定があって来られませんわ。ほとぼりを見てからメアリーさんの歓迎会をやりたかったそうですけど、急に決まった話ですから人も集まりませんし正式な歓迎会は後日と言う事で、ともおっしゃっていました」


 メアリーは申し訳なさそうに口を開いた


「なんかすみません・・・」


 ルーシーは笑顔で


「メアリーは気にする事は無いのよ、今日は楽しんで。責任の所在があるとしたら・・・、そうね。しいて言うなら何かと理由を付けて酒を飲みたがる放浪癖のダメ男と―――」


「だめおぅッ!」


 鳩鳥はルーシーの言葉の暴力でリアルにダメージをうけた。つづいて・・・


「――――気分屋で思いついたまま行動し引っ掻き回す癖に、妙な所で融通の利かない自称王子様のせいですから」


「じしょおぅッ!?」


・・・ショウもルーシーの言葉の暴力でリアルにダメージをうけた。メアリーはそんな二人を見て苦笑いを浮かべてルーシーに言った


「ははは・・・、それじゃあ遠慮なく楽しもうかしら」


「それじゃみんなで飲み物を先に頼みましょうか」


 みんなそれぞれメニューを取り出し、注文を決めた


「私は・・・この冒険者の宿ご自慢のエールってヤツにしようかな」


「メアリーはエールか、僕は騎士の白ワインを。ハクさんは何にするの?」


「俺もエールだな、つかもう頼んだ」


「さすがに慣れてるからハットリは決めるの早いわね。私はベネディクトを」


「リアルでエリクサーと呼ばれた酒のスコッチ割りか、ルーシー殿はそう言うマニアックなお酒がお好きですなぁ。ボクはジャンクの度数50のオレンジジュース味の酸味強めで頼もうかな」


 メアリーはポピーの注文を聞いて疑問を口にした


「ジャンクってなに?」


「ジャンクドリンク、専用のドリンクサーバーでアルコールと合成調味料を組み合わせて好きな味の酒を造れるんだ」


「ジャンクかぁ、私も次挑戦してみよう」


 ショウはメアリーの言葉にツッコミを入れた


「ルーシーが頼んだお酒以外、みんなが頼んだお酒は全部そのドリンクサーバーで作られたジャンクだよ。作る味が決まってるだけで」


「え、マジで! なんかちょっと安いから変だと思った」


 驚くメアリーに鳩鳥は話す


「その名の通りドリンク界の駄菓子ジャンクフードだからな、独特な風味が気に入れば本物の酒よりいけるぜ」


「なんか飲むの怖くなってきた」


 ルーシーはみんなに確認を取った


「みんな注文は済んだかしら?」


「はい」


「押したよ」


「さっさと飲もうぜ」


「大丈夫さ」


「じゃあ注文を確定を押すわね」


 ルーシーが確定のボタンを押すが、特に変化は無かった


「あれ、おかしいわね? 誰か押し忘れてない?」


「あ、ごめんなさい! 私その確定ボタン押して無かった!」


 メアリーが焦って確定ボタンを押すと ”給仕アームが作動します。ご注意ください” とのメッセージが現れ、それぞれの席に飲み物が運ばれた


「わあ! 鳥みたいなモンスターがメニューを運んできてくれるのね。なんか夢みたい!」


 メアリーにはそう見えているがもちろんゲーム内の演出の話で、リアルでは警告文にあるように給仕アームがメアリーの机にコップを置いただけである


「それじゃあ皆さん、乾杯しましょう!」


 ルーシーの声に合わせて皆がコップを持ち上げ乾杯した


「「カンパーイ!」」


 鳩鳥が一番最初にエールを一気に飲み干し発言する


「ゴクゴク・・・、ぷはあぃ! 俺が誘ったのにルーシーに仕切られちまったな」


「私がアンファングのサブマスターなのですから気になさらないで、ロールプレイの一環ですから」


 ショウはルーシーにニヤついた笑みで提案する


「ねえ、じゃあそのサブリーダー権限でサポートユニット呼んで給仕させようよ」


「ダメに決まってるでしょ!絶対にギリアンに手を出すんだから、このダメ王子は!」


「ええ~、いいじゃないか~。ルーシーのケチ」


「そのサブリーダー権限でアナタ以外のメンバーに給仕させてもいいって言うなら読んであげても良いけど」


「それじゃ僕とのツーショットを撮れないだろ!」


「いちゃつきながら永遠と撮り続けるつもりでしょ!アナタって人は!!」


「いいじゃん呼んで!」


「ダ、メ、よ!」


 ルーシーとショウが争ってる間、鳩鳥はメアリーに聞こえるよう通信を飛ばして話しかけた


「メアリーちゃんどうよ、エールの味は?」


「ちょっと変わってる風味がするけど美味しいわ」


「それはよかった。初めの乾杯用の飲み物の注文以外は個別に届くからすきに頼んでいいぞ」


「はい!」


「奢るって約束したろ、何か気になるメニューは有るか? 食べ物でもいい」


「そうね、それじゃあ・・・」

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