第24話 防具屋のラスボス。買い物はレジに運ぶまでが本番

 メアリーは防具屋で装備を選び、ボンデージセット(白)、オールドミリタリーブーツ(ブラウン)、商人の服(上。ライトレッド&ホワイト)ブリガンダインスカート(長さミディアム。ライトレッドにフリルの縁は白)を買う事に決めた


「予算考えるとこれくらいでいいかな」


 鏡を前に満足そうにポーズを決めているメアリーにショウは質問した


「ボンデージとか課金しないと買えない装備や設定も混じってるけどいいの?」


「課金と言っても数百円とかだし構わないわよ。ゴメンね長く付き合わせちゃって」


「いいよ、僕も楽しめたし・・・、あ!時間!」


 なぜか動揺するショウを見てメアリーは首を傾げた


「まだ集合時間に間に合うじゃない?でも少し余裕があったほうがいいか。会計済ませておくわね!」


 メアリーは試着を止め元の服に戻り、カタログを持って小走りでレジに行ってしまった


「いや、そう言う事じゃなくて! ・・・言ったところでどうにもならないから良いか」


 ショウは止めようとしたが諦めてメアリーを見送ってしまう


「いらっしゃい」


「ふえ!?」


 レジには店にに入った時に居た女性店員ではなく・・・・、ボサボサの髪で長い髭の汗臭そうで眼光鋭い、いかにも鍛冶職人風なドワーフの男に入れかわっていた。そのドワーフのNPCは動揺するメアリーに反応して話しかけてくる


「どうした、なにか困った事でもあるのか?」


「いえ! その…、さっきまで居た女性店員さんはどこでしょうか?」


「シフトが終わって帰ったよ、今の時間は俺が担当してる」


「なん・・・ですって・・・」


 メアリーは『まじで!? こんなオッサンに!あんなにはしゃいで選んだ服を注文しなきゃならないの!?』 と思い動揺したが、ドワーフは容赦しなかった


「買いたい物が有るんだろ? カタログをよこしな」


「はい・・・、どうぞ」


 メアリーはカタログを渡しつつ『事務的に済ませよう。目を閉じてあの女性店員を思い浮かべてオッサンがいる現実を打ち消せ!』と思い必死に耐えていた


「この4点の品物でいいんだな」


「はい・・・」


「魔晶石300個と1200ゴルドだ」


「はいぃ!」


 メアリーは涙目になりながらお金を払うと、ドワーフのNPCはメアリーの泣き顔に反応してしまう


「どうした、金を払うのがそんなに惜しいのか?」


「いいえ!そんな事ありません! 早く受け取って!」


「はいよ。お金が欲しいなら不要になった装備は買い取るぜ」


 メアリーはドワーフの言葉に動揺した


「買い取る!?」


「ああ」


「私の着ていたものを!?」


「使い古しの中古だからって安くなったりしねえよ。まあ、新品だろうと高く買ったりはしないがな」


 ニヤリと笑いながらそういうドワーフを見ながらメアリーは『嫌!盗賊から身包み剥いで着るのは許せても、自分の着ていた防具をこんなオッサンに売り渡すのだけは絶対いや!!』と考え拒否した


「結構です!売るものはありません!」


「わかった。じゃあここで装備していくかい?」


「へ?」


 ドワーフの言葉にメアリーは自分の耳を疑ったが、ドワーフは聞き取れなかったと判断し言い直した


「買った装備をここで装備していくかい?」


「あなたの前で着替えろと!?」


「更衣室を使ってもいい」


「使ってもいい!? じゃあ使わずに着替えるのが普通だとでも?」


「更衣室を使わずに装備する客の方が多いな」


「マジですか!?」


 メアリーは『こんなオッサンの前で服を!? いえ、よく考えたら装備を変える時に光のエフェクトで見えないじゃない、面倒くさいしここで装備しても』と考えた


「それじゃあ、こ――――」


 しかしメアリーは装備時のエフェクトについてショウが『メタな事言うとロード時間をごまかす為の演出らしいけど』と言っていたかを思い出し寸前の所で踏み止まった。そしてメアリーの頭を疑問が光の様に駆け巡り、かつて体験した事の無い思考速度で考えをまとめた


『ロード時間、コンピューターが情報を処理している時間、つまりは装備が完全に装着されるまでそこには何もにもないと言う事。・・・つまりは真っ裸!その間私は光に包まれてはいてもマッパなのよ!! こんなオッサンの前でそんな事できるかぁあ!!!』


 そう判断したメアリー、そして指示を途中で止められ混乱したドワーフのAIが再び話し掛ける


「え、なんだって?」


「更衣室を使わせてください!お願いします!」


「そうか、買った装備はアイテムポーチにポーチに入れておくから着替えてきな」


「はい!」


「毎度あり、また来てくれよな」


 メアリーはドワーフの言葉に『あんたがいる時に来るもんか!』と心の中で叫びながら更衣室に走る。そこには戻って来ると思って待っていたショウの姿があった


「あ、やっぱり戻って来た」


「ショウ!カーテン閉めて!」


「はいはい」


 メアリーは更衣室で買った装備に着替え防具屋を後にした。そして外に出たメアリーが静かに言った


「ショウ、はじめは防具屋の女性店員目当ての変態みたいに思ってたけど・・・、あの女性店員は必要ね」


「でしょう。一部のプレイヤーからは防具屋のラスボスとか言われてるんだ、あのドワーフ」


「あれは買い辛いわね・・・、ていうか、あんなのが何でいるの?」


「もともとは冒険者用の防具屋だよ、職人に装備すすめられた方が安心するでしょ」


 メアリーは行き場の無い怒りの声を叫んだ


「確かに頼れそうな見た目してたけど! そんなガチな買い物じゃない時は気まずいわよ! 防具と言うよりファッション感覚で買い物してたんだけど! あんなのもう熟練の寿司職人にお弁当用のおにぎり注文するぐらい気まずいでしょうが!」


「だからアップデートで女性店員が追加されたんだよ。・・・その例えのお弁当用おにぎり美味そうだね、おにぎりの具は何?イクラか、漬けマグロかな?」


「知らないわよ! もう先に待ち合せてた酒場に行きましょう!」


「実はメアリーが買い物に手間取っていた間に結構いい時間になってたりします」


 メアリーはショウにそう言われて時計を確認し焦る


「あ、ホントだ! それを先に言いなさいよショウ!」


 メアリーとショウは走ってその酒場に向かった

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