第19話 仮想と現実と農業と

 鳩鳥に畑に案内されたメアリーは、突然現れたマスコットキャラのファーモにチュートリアルを受けていた


「メアリー様、作物の売却と輸送に関しての内容はこれでおわかりいただけましたでしょうか?」


「うん、大体わかったわ」


「それでは実際に作物を育ててみましょう! ・・・と、その前にメアリー様の農業クラスをお選びください」


「農業のクラス?」


「はい! デジ農の利用者様にはこのアナグノリシスのクラスとは別に、デジ農のクラスを選択する事ができます! 農業のクラスのレベルが上がるとステータスがアップしますのでアラグノリシスでのプレイも有利になりますよ!」


「え、でもそれ・・・、レベルアップしたらメインクラスが鍛えずらくならない?」


「デジ農での経験値と、アナグノリシスでの経験値計算は別なのでご安心を! 農業レベルをアップさせれば、デジ農と連携している他のゲームでも反映されますので優位に進められますよ!」


「わーい、お得デスネー・・・・。でも商売臭いトークで妙に胡散臭い」


 鳩鳥は何か項目を見ながらメアリーに言った


「金が絡んでると言ってもデジ農もゲームだし、気にしたら負けだろ。合わないと感じれば何時でもやめればいいんだしさ」


「そう言えばショウも遊びだって言ってたもんね。それじゃどんなクラスが有るか見せてくれるファーモくん」


「はーい☆ ではクラスの紹介を、初めにお選びいただける農業クラスには万能だけど特技がない農業者ファーマー、ハーブなど薬効のある作物を持つ植物を育てるのに向いている薬草士ハーバリスト、お野菜など食用を育てるのが得意な野菜戦士ベジファーマの3つになります」


「育てるのが得意って何?」


「より育ちやすい環境設定をお選び出来ますし、レベルが上がれば成長促進剤のご利用もできますよ!」


 笑顔で説明するファーモの説明に、メアリーは目が点になった


「成長促進剤とな!?」


「はい、成長促進剤です! 品質管理は万全ですので安全にご利用できますよ」


「笑顔でもの凄くケミカルな事をおっしゃいますねファーモさん」


「恐れ入ります☆」


 メアリーの嫌味は全くファーモには効いていなかった。そのやり取りを見ていた鳩鳥は何故か自慢げにメアリーに言った


「どうだい、この可愛いマスコットの会話から滲み出るディストピア感・・・、なんかたまんねえだろう!」


「お、おう、昔のSF作品が好きにはたまらないでしょうね。爆発しないわよね?」


 ファーモはメアリーの質問に笑顔で元気よく答えた


「その様な化学肥料を過剰に与えるなどの危険な行為は法律により固く禁止されておりますのでご安心を!」


「よく分からないけど理論上は爆発はするって事!?」


「いえ! ですから爆発しない様、先程言ったような危険な薬物は使わないように配慮されています! 万一その様な被害が出た場合、収穫された農地の封鎖および原因を調査し対策します! もちろんその様な事故は当社では一件もございませんのでご安心を!」


「ホントにぃ~?」


 疑いの目を向けられてファーモは泣き顔で言った


「うう・・・、契約を解除されますか?」


「うーん、取りあえず育ててみるわ。成長促進剤は無しの方向で・・・」


 メアリーの言葉お聞いてファーモは笑顔で答えた


「はい! では化学薬品無し! 完全無農薬栽培の設定になさいますか?」


「できるんかい!なら先に言ってよ!」


「申し訳ありません。害虫や雑菌がが入らない様レーザー消毒により完全な隔離空間での栽培になりますので、こちらの設定でも問題なく育てられますのでご安心を」


「そう、ならよかった。クラスはハーバリストにする」


 メアリーの言葉に反応し、メアリーはハーバリストのクラスを得た


「承りました☆ メアリー様はハーバリストのクラスに登録です! 次は育てる作物を設定してください。何かご希望の作物はございますか?」


「じゃあ・・・ホリジとスカルキャップにジャーマンカモミール、ローズヒップとジャスミンなんて頼める?」


「育てる割合はどうしましょう?」


「えっと、みんな均等に畑にまいちゃって」


「了解しました☆」


 メアリーの言葉を聞いてファーモは笛を鳴らしすと、畑にファーモの大群が現れ種蒔きを始めた


「うわ、また出て来た!」


「作物の成長過程は定期的にそちらにメッセージを送りますのでご確認ください☆」


「わかったわ、ありがとねファーモちゃん」


「はい! 何か御用がありましたら遠慮なくお呼びください」


 ファーモは去って行った。そして鳩鳥がメアリーに話し掛けた


「終わったか?」


「ええハトちゃん、なんか別の意味で疲れたわ・・・」


「普通爆発なんて気にしないって。野菜が爆発っていつの時代の話だよ」


「いやあ、ゲーム的に冗談でブッ込んでくる可能性もあるかなーって」


「ゲーム世界でデスゲームが始まったり、AIが暴走してやらかす作品なんてはよくあるからなぁ・・・。でもリアルでのAIの不具合なんて地味なもんだぞ」


「そりゃ知ってるけどさ。ハトちゃんのクラスは何なの?」


「名前的に面白そうな野菜戦士にした。育ててるのは雑穀とかだな、自分で食う為に。後はサトウキビとか小麦とか売却用に育ててるな」


「野菜はどうしたのよ。穀物ばっかじゃない」


 メアリーのツッコミに鳩鳥は笑って答え、質問した


「それでも食料品だからOKなのさ。メアリーはハーバリストだっけ? ハーブの名前をスラスラ言ったからびっくりしたぜ」


「ハーブティーとかポプリが趣味だからハーブだけは詳しいわよ」


「へー、無事収穫できたらオススメのハーブをこっちにも送ってくれよ、俺もお米とか送るからさ」


「いいわよ、楽しみにしてる」


「デジ農以外の農場もあるんだが、見てまわるかい? ゲームの動物とかも居るぞ」


「行こう! 散歩したいし」


 メアリー達は次の目的に旅立って行った

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