第17話 酒場にて、鳩鳥の生活

 酒場で喧嘩するメアリーとショウ


「いいじゃない見せなさいよ! ショウの変装すがた!」


「嫌だよ! 知り合いに見られるのは嫌!」


 二人を見ながらぼやく鳩鳥


「なあ、変装を見られるのいいとしてよ。ショウの仕事着がどんなのか教えてくれなよ、リアルばれしない程度で」


「特徴聞くだけでリアルバレするようなファッションしてないよハクさん!」


 そう叫ぶショウの後ろからメアリーが言った


「いや、バレるかもよ?」


「ええ!?」


「だってあんたのファッションって・・・」


 話そうとするメアリーの口をショウは塞いだ


「メアリーィイ!!」


 そのショウに鳩鳥は聞いた


「そこまで嫌か?」


「どうしてもって言うなら勝手に予想してよ!」


「ふむ・・・、今までの情報を整理して考えてみよう」


 メアリーは葉巻を咥えて鳩鳥のポーズを見てはしゃぎだした


「お、なんか推理ゲームが始まった!」


「まず俺達が共通するショウちゃんのリアルでの認識は色白って事だ」


「ふむふむ」


「そして俺の前ではラフな格好、対照的にメアリーちゃんの前はテカテカ・・・、つまり光沢がありキラキラしていると!」


「ほう!キラキラとな!」


 二人のテンションを見てショウは苦言を言った


「なんかふざけてない?」


 鳩鳥とメアリーの反応は


「まじめにやっちゃマズいだろ」


「被告はそこに座りなさい」


「え~・・・」


 ショウは大人しく座って話を聞く事にした


「話を戻すと、化粧が濃いとの証言と、ショウに合わせたと言いうメアリーの髪と瞳が胡散臭いぐらいの鮮やかな蛍光色、これをベースにしてファンシーな色彩の服にアイスクリームをぶちまけた見た目と考え、さらにショウは特徴からリアルばれしないと言ったがメアリーはバレると言っていたのを考慮し・・・・」


「考えるに?」


「ショウちゃんの正体は・・・・・・」


「見た目じゃなくて正体?」


「ピエロだな!」


「ピエロですと!?」


「色白で化粧が濃くてカラフルなユニホーム、おまけにアイスクリームだろ? ほら、ピエロって何か丸い飾り付けてるじゃねえか。おまけにショウちゃんはバレないと思ってるのは仕事のユニホームだからで、メアリーちゃんから見れば奇怪な格好だからバレると思う・・・、もうこんなんピエロぐらいしか考えられないだろう」


 鳩鳥の答えにメアリーはクスクスと笑っている


「ぷぷぷ! ムードメイカーって意味なら確かにピエロかもッ」


 ショウは反抗した


「メアリーに笑われたくないんだけど! それに僕がピエロなら同僚のアンタはどうなるのさ!」


 メアリーはスッと姿勢を正し丁寧な口調でこう言った


「アンファング・サーカスにお越しくださり誠にありがとうございます。入場料は大人3000円、シニアとお子様は1500円となっております。カップル料金はお一人様2500円となっており大変お得になっておりますので、ぜひお越しください」


 メアリーのセリフを聞いて鳩鳥は狼狽えながら言う


「サーカスの受付だと!?いやアナウンス?…受付とアナウンスの掛け持ちか! どうやら俺は正解を見事当てちまったようだな・・・。俺が見たショウの姿はステージが終わって楽な格好をしていたからだったか」


 狼狽える鳩鳥のの言葉にショウは怒号を飛ばす


「こんな演技に騙されるな!アクション映画研究会!!」


 ショウの叫びを聞いて二人は笑い出した


「あはははは! ごめんショウ、やっぱあんたからかうと面白いわ!」


「ハハハ! お前なら俺の期待する反応で返してくれると思ってたぜ!」


 ショウは二人の反応にほっぺを膨らませてそっぽを向きいじけた


「意地が悪いな二人とも!」


 そしてメアリーが鳩鳥に話を振る


「あはは! ショウが本気でいじけちゃうからこの話はここまでにするとして。ハトちゃんは何してる人なの」


「俺かぁ、ネットカフェ暮らしのフリーターだよ」


「え、まじ?」


「キャンピングカーも持ってるし生活品もそこに置いてはいるが、基本的に日本全国を車で移動し短期のバイトをしつつ、各地のネットカフェで寝泊まりしながら生活してるのさ」


「ゲーム内で冒険して、リアルでも旅してるのか」


「おうよ。整備された都市での生活は確かに便利だが、色々な場所を見て、その地域の人や生活に触れるのも楽しいぜ。運転はAIがやってくれるから楽なもんさ」


「あ~、最近そんな人が居るってニュースの特集で見たわ。でもキャンピングカーてお高いんでしょう? それに大きいから駐車できる場所が限られそうだし」


「背は高いが車幅が一般車の枠に収まるキャブコンだからそんな事もねえよ」


「キャブコン?」


「えっとだなぁ…、車の運転席の上に屋根みたいなのが飛び出してるタイプって言えばわかるか? あれの小さいヤツだ」


「ああ、トラックみたいに分かれてるんじゃなくて、車と一体化してるヤツ?」


「そうそれだ!」


「ちなみにお値段は?」


「いろいろいじったが・・・、改造費込みで600万ぐらいだったかな?」


「うーん、高いけど頑張れば買えない事も無いのかぁ。ちょうど車も買い換えようと思ってたしどうしようかなぁ」


 悩むメアリーを見てショウが驚く様に言う


「以外、メアリーもキャンピングカーに興味があるんだ」


「だってよショウ、もし車に洗面所とかキッチンが有ればさ」


「うん?」


「朝起きて会社に迎いながら食事済ませて、身だしなみを整えられるのよ、超楽ちんじゃない。通勤時間を有効に使えて自由時間が増えるよ!」


「贅沢な使い方だね」


 鳩鳥は今のやり取りを聞いて言う


「そう言ったコンセプトの車を備えたビジネスホテルがあるから、そんな突飛なアイディアって訳じゃないぞ」


「え、まじですかハトちゃん!」


「おう、会社の友人と共有でキャンピングカー買って通勤バス代わりしてるってヤツの話も聞いた事あるしな、悪くないんじゃないか? ただ通信速度の問題でネットゲームには向いてないけどよ、普通に動画見たりする分には問題ないぜ」


 鳩鳥の話を聞いてメアリーは怪しげな微笑みを浮かべて言った


「なるほど、なるほど。・・・ショウさんや、半分づつ出して共有でキャンピングカー買いません?」


「嫌だよ。それに僕のPCあげたでしょ、まだねだる気?」


「え~、通勤楽になりますぜ旦那ぁ~。なんなら私の車小型車げるからさ」


「いいよ使わないし、無人タクシーで十分」


「そんな殺生なぁ~」


「3分の1で良いなら考えるよ」


「ぐぬぬ・・・、さんぶんのいち・・・」


 鳩鳥は急に席を立ち二人に謝頭を下げた


「あ!すまん! もう2時近いじゃねえか! 明日のバイトに備えて寝とかねえといけねえから落ちるぜ! またな!」


 鳩鳥はログアウトし姿を消した後、ショウとメアリーも混乱した


「夜中の一時! 大変、僕達も仕事!」


「すぐにログアウトしないと! ねえショウ、本当にキャンピングカー買わない?」


「いいって言って・・・、どうしようか」


 メアリーは意地が悪かったのであった

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