第16話 酒場にて、ショウの性格

 ゲーム内の酒場で集まり飲んでいるメアリー、ショウ、鳩鳥の三人。メアリーの話がひと段落し、鳩鳥はショウに話し掛けた


「ショウちゃんよ、メアリーちゃんばっかり飲ませてないでショウも飲みなよ」


「飲んでるよ、リンゴジュース」


「いや、お酒だよ! 飲めない訳じゃあるまいに」


「なんか部屋で一人でお酒飲んでると思うとさ・・・・、すっっっごく!虚しくならない!? ねえ二人とも!」


 ショウの問いにメアリーと鳩鳥は冷ややかに答えた


「いや、全然。むしろ飲み易くない? 店に迷惑かける心配無しで安く済むし、こうして面と向かってアンタ達と話してるし」


「だな、一人で飲んでる感覚全然ねえわ」


 二人の答えを聞いてショウは喚いた


「ネットカフェに慣れてるハクさんはともかく、メアリーは昨日の今日で順応し過ぎじゃない!? 今の僕達パソコンで繋がってるだけだよ」


「そう? むしろ物理的には繋がってない安心感の方が強いけど?」


「完全にインドア思考だね・・・。本当に元運動部?」


「アウトドア派なら今も何かしらスポーツやってるわよ。どこかの部活に入らなきゃいかない校則だったからテニス部に入っただけだし」


「それでもなんでテニス部をチョイスしたの?」


「えっと・・・、いい感じに落ちぶれてて、そんな厳しい雰囲気じゃなくて・・・・、なにか思いっきりブッ叩けるからだったからかな?」


 鳩鳥も会話に加わる


「テニスはおまけで合コンとか遊びがメインの部活だったのか?」


「合コンを実行するより妄想するのがメインの活動だったかなぁ・・・、女子高だったし、男は他の部活の娘によくとられてた感じで」


「本当に落ちぶれていたんだな・・・・。そんな事よりショウだよ! メアリーちゃんの前ではどんな感じのリアルか知りたいから誘ったんだぜ!」


「あ、それ私も気になってた。ハクさんの前だとどんな感じだったの?」


 急に話の矛先を向けられ動揺するショウ


「その話蒸し返すの!?」


 鳩鳥はハッキリと答えた


「そりゃそうよ、何だよ練馬大学芋アイスクリームって?」


「そんなこと誰も言ってない! 合体して余計変な例えになってるよ!」


 メアリーも間に入って話をふりだす


「でも芋だったんでしょハクさんの前では。で、お二人はどんなご関係でリアルで会ったの?」


 鳩鳥はメアリーの質問に答えた


「ゲーム大会に出場するから俺の家を使わせてくれって相談されてな」


「ショウ、ハトちゃんの家に行ったの?」


 鳩鳥はハッとして訂正した


「ああすまん!家ってのは俺の住んでるキャンピングカーの事だ。紛らわしかったな」


 ショウが続けて説明する


「ハクさん、公道を自由に走れる普通車免許持ってるから、何かあった時に直ぐに対応できるかと思ってね。イベント会場の周辺ってよく混乱するし、大会中手伝ってもらってたんだよ」


「そうなの、AI限定免許じゃなくて?」


 鳩鳥は胸を張って応えた


「まあな」


「実は私も持ってたりします、AT免許だけど。私に言ってくれればよかったのに」


 メアリーの言葉にショウは疲れた感じで答える


「その時メアリー僕がゲームやる事すら知らなかったじゃん」


「そんくらい前か・・・。あ、もしかして例のPC当てた大会の話?」


「そうそう。勤務時間が終わったら直ぐハクさんに迎えに来てもらって、支度して会場に向かい食事と寝起きはそのキャンピングカーでやってたのよ」


「うわ、そんな二重生活おくってたのね。・・・・ん?ちょっと待って、会社帰りに送り迎えをやってもらったんでしょ? なんでショウの見た目に違いがあるのよ」


 鳩鳥は頭を掻いてぼやいた


「ははぁん、さては変装してやがったなぁショウちゃんよ」


「ハトちゃん、変装ってスパイ映画じゃないんだから」


 メアリーがそう言うとショウが何でもない様に言った


「ゲーム内でもアバター使って演技してるんだし、リアルだって見た目変えて演技すれば一緒でしょう」


「なんですと!?」


 驚くメアリーを放っておいて、鳩鳥も発言する


「つまり…、そう言うこったな。アレはお互い様だったわけだ、それ聞いて気が楽になったぜ」


「ハトちゃんも変装してたんかい!」


 ショウが驚くメアリーの様子を見て笑いながら鳩鳥に言った


「変装してると思われなかったって事は、僕の演技は完ぺきだったって事だね」


「ああ、ただの田舎者だと思ってたよ。そんで俺の変装はどうだったよ? もと映画研究会のプライドにかけて車ごとアレンジしてやったんだが」


「何と言うか、わざとらしいくらい80年代の映画ぽかった。ハクさんもムキムキでガトリングガンを片手で振り回しそうだったし。濃い内容だったけど楽しかったよ。でも車ごとって事はもうあの内装じゃないのかぁ・・・、残念だな」


「そりゃよかった。ハリキッタかいが有ったぜ」


 メアリーは頭を抱えて二人に言った


「お互い変装してた事に恐怖するどころか、それをネタに楽しみだすお二人に正直ドン引きなんですけど!」


 ショウと鳩鳥は何事も無いように言った


「よくある事だし。そうだ、あの時撮ったハクさんの家を見せていい?」


「ああ、構わないぜ! つうか見せてやれ俺の力作を!」


「それじゃあ今開くよ」


 ショウは動画ファイルを開きモニターを丸めた地図の様に机に広げ映し出した。メアリーがその映像を見て笑い出す


「これ知ってるッッ! 黒い宇宙人を2の方で轢いてたヤツだ! なんか縦長だけど、ハハハ!」


 メアリーの反応に鳩鳥は喜んだ


「ほほう、わかるか! どうよ、限られたスペースで出来うる感じでアレンジしたんだ」


「なんか不格好に見えるのもなんかいい味が出てる。中も凄い!なんか光ってるんですけど!フロントガラスがシューティングゲームになってる! この撃ってるレザージャケットの人がハトちゃん?」


「そうだよ」


「アハハ! ねえ、これもう無いの?」


「今はいたって普通の車になってるよ。多少趣味は残ってるがな、そのゲーム機能とか」


「ハハハハ!これは残さないとね!でも、もったいない! そう言えばショウの姿が見えないんだけど」


 ショウはメアリーの質問にさっぱりと答える


「僕は動画を取ってる側だから」


「もうすぐフリールームだから、その時鏡に映るんじゃないか?」


 鳩鳥の言葉を聞いて動画を閉じてしまい、メアリーが騒ぎ出す


「ふう、危なかった」


「おいぃ! ショウの変装した姿のお披露目は!」


「あれはメアリーには見せられません!」


「なんだとぉ!」


 鳩鳥はエールを飲みながらショウを見てぼやいた


「そんな悪いもんじゃないと思うが、何を嫌がってるんだ?」

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