第13話 デスロール

 ギガウルフから走って逃げだしたメアリーとショウ


「ワアウウウウウウウゥゥゥオオ!!」


 二人は悲鳴を上げながら森の中を


「うわああああ! 木!木を薙ぎ倒しながら追ってくるんですけどおお!!」


「なんで逃げようって言ったのに手を出したのさ!」


「なんかヤバそうだったから!」


「メアリーは山菜取りに山に入って熊に出くわしたら攻撃するの!?馬鹿なの!?馬鹿でしょ!!」


「猟銃持ってたら撃つんじゃない!!」


「その猟銃が鳥撃ち用の豆鉄砲だったら撃っても怒らせるだけでしょうが!!」


「ああん!アドバイス通りお店によっておけばよかったぁああ!! もっと強力な武器買っておけば!」


「あれを猟銃に仕留められる武器なんて今のレベルじゃ無理だからね!」


 メアリーは何かを思いついたようにハッとし、ショウを掴んだ


「そういえばその弱体化装備外せば強くなれるんでしょ! 外しなさいよ!どれ!?外しなさいよ!!」


「嫌だよ!今着てる服全部そうだから!」


「なら脱ぎなさいよ!!」


「だから嫌だよ!肌を見せるなんて!」


「どうせ脱いでもゲームの都合で全裸になんないでしょうが! ちょっと肌見せるくらいなによ!!」


「それでもいや!」


「アンタが誘ってくれたアイドルのライブとかいきなり脱ぎだすストリップショーだったでしょ! 脱ぎなさい!イケメンなら脱ぎなさいよ! さあ覚悟して肌をさらしなさい!」


「いや掴まないで!スピード落ちちゃう!」


 ショウに掴みかかりながら走るメアリーの隙をついてギガウルフが攻撃! メアリーに攻撃がかすり16ダメージを受けた


「きゃーーー!お尻かまれたぁ!!」


「この!」


 ショウはギガウルフに煙幕玉を投げ目をくらませた


「やったの!?」


「隙を作っただけ! 僕について来て!」


 ショウに言われるがまま、メアリーは後をついて行った


「この先に何かあるの?!」


「坂!」


「坂ぁ?」


 急な下り坂の前でショウは足を止め言った


「今のうちに薬草を出来るだけ多く取り出せるようにして」


「うん!」


 二人は薬草を両の手で持ち身構え立ち止まるが、ギガウルフはどんどんと迫ってくる


「用意はいいね・・・」


「ええ、これからどうするの?」


「落ちろ」


「え」


 ショウはメアリーを急坂に蹴り落とした。ショウも続いて後を追う


「うりゃ!」


「うわわわわ!」


 二人は急坂をダメージを負いながらも転げ落ちていく


「ちゃんと死なないように薬草使ってね」


「こんなグルグル回りながら食えるか!」


「食べれるよほら」


「もうヤケクソだい!」


 メアリーとショウは薬草で15回復した


「ね、いけるでしょ。このまま加速してヤツの目の圏外まで脱出さ」


「ころがりながらにこやかに話すな!」


「あ、何かものにぶつかると大ダメージだから気を付けてね」


「うごご・・・めがまわるう~! 気持ち悪い・・・ッッ」


 ダメージを薬草で癒しながらしばらく転がっていると、二人は森を出て芝生の上にポンと放り出された


「おおっと!」


「痛てい!」


 ショウは直ぐに飛び起き周りの様子をうかがった


「よかったどうにか撒けたみたいだね。もう大丈夫そうだよメアリー」


「・・・・」


 メアリーのアバターは無反応のまま固まっていた


「メアリー?」


 二度目の呼びかけにやっとメアリーは反応する


「あ、なにごめん、目回っちゃって・・・、ちょっと吐いてた」


「大丈夫?」


「ええ、もう大丈夫・・・・、それにしても乱暴な逃げ方ね」


「坂道をダメージ覚悟で転がりながらの急加速、通称デスロール」


「物騒な名前・・・・。あ」


 メアリーは周りを見て綺麗な湖がある事に気づいた。泉の水は透き通り水草が揺れ、魚が飛び跳ねている。ショウは湖を見て頭を抱えた


「けっきょく湖まで来ちゃったなぁ」


「綺麗な場所じゃない、ここで飲めばよかったな・・・。完全に飲むタイミングを間違えたわね私」


「いやぁ・・・、僕もこの景色は大好きなんだけどさ・・・、それにはちょっと問題が」


「問題って?」


 ショウは目を細め遠い目ですずかに言った


「ここの周りってさっきのオオカミの縄張りなんだよね」


「げぇ!」


「無事に帰れるかなぁ・・・」


「どうするのよ!」


 焦るメアリーにショウはテキパキと指示した


「メアリー、冒険者カード出して」


「うん」


「それでギルドのページを開いて」


「ふむ」


「救援要請ってボタン押して」


「はいよ! それから!?」


 ショウは地面に座って呟く


「これでギルドの暇な人が救援に来てくれる・・・・はず」


「はずかい! ていうかどうして私にやらせた!」


「クエスト発注した人しか救援出せないし、もし僕がやっても弱体化してる事情も知らずにふざけてるだけかと思われるかも」


「スキルだけじゃなく人望も無いんかい!無能!」


「だって弱体化脱げばすむ話じゃん。システム的にそこまでして脱ぐのを拒否するプレイヤー居ないし」


「じゃあ脱ぎなさいよ!」


 メアリーの質問に対してショウは力強く反論した


「断る! RPGにおいて自分のキャラを演じきらずして何が楽しいか! なにがキャラメイクか!アバターか! スコアだけ稼ぎたいだけなら既存のキャラが用意されてるアクションゲームでもやればいい!!」


「なによく分からない演説してんの! 水際なんだし脱いでも不自然じゃないでしょ! さっさと脱ぎなさい!」


「ピピッ」


 メアリーはショウと喧嘩していると、冒険者カードから音が鳴り、聞いたことない男の声が二人に聞こえた


「おーい聞こえるか? そんな初心者用のクエストでなにやってんのショウちゃん」


 ギルドアンファングから救援が現れました

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