第12話 だから言ったのに・・・

 フィールドの景色を見ながら休憩していたメアリーとショウ


「モグ・・・。あ、ポテチなくなっちゃった」


「そろそろクエストアイテム取りに行くかい、メアリー」


「そうしましょうか。おつまみ無くなっちゃたし」


「おつまみって、お酒飲んでるの?」


「盗賊装備一式そろえた迎え酒じゃ。ショウは飲んでないの?」


 上目遣いですり寄ってくるメアリーに戸惑いながらショウは答えた


「飲んでないけど」


「なんで?」


「なんでって言われても」


「夜なのに?」


「夜だからってなにさ」


「飲みたくなるでしょ?」


「今僕らが見てる景色は真昼間なんだけど」


「だからいいんじゃない、節度を守りつつ背徳感にひたれるし♡」


 明らかに酔っているメアリーの様子に、ショウは頭を抱えた


「メアリーVR慣れてなんでしょ。昔と比べて酔い難くなってるけど調子に乗ると後悔するよ」


「え~、なに~?」


「もういいか。とりあえず行こう行こう」


「了解でありますっ」


 酔ったメアリーを連れてショウは森の中に入り目的の物を探した


「ここには無いか」


「なんか道なき道って感じだけど大丈夫ショウ?」


「マップが有るから迷わないよ、でもアイテムの出現場所はランダムだからねぇ」


「うわお、メンドクサイ」


「だいたい出る場所は決まってるから慣れれば平気だよ。探索系のスキルを持ってれば一発で位置が分かるだけど・・・」


「今のショウは不能だからね」


「せめて無能と言いなさい酔っ払い。次のポイントに移動するよ」


「イエッサー」


 さらに奥へ進んで行くと、メアリーはモンスターを発見した


「スライム発見! さあ私の剣の錆となれぇい!」


 スライムへの攻撃、10ダメージ与えた


「ピギイ!」


 メアリーはスライムの攻撃を受け2ダメージを受ける


「おお、防御力上がっとる。せいや!」


 メアリーは強撃でスライムに攻撃した。スライムは16ダメージを受け倒れた。その様子を見たショウは呟いた


「スキルを使えばもう僕の攻撃と同じぐらいの火力が出るね」


「うひひひ、どうよ。というかショウ弱過ぎじゃない?」


「前にも言ったけど、弱体化と引き換えに経験値を増やす装備で固めてるからね。難易度が厳しくなってきたら効果が引くいのに切り替えるよ、足手まといにはならないさ」


「そう、なら良いけど。ちょっとパワーバランスがおかしくなってきたから不安だったけど、それなら安心ね」


 メアリーの言葉を聞き、ショウはポーズを決めながら言った


「僕が居ないと不安かい? 子猫ちゃん」


「ここじゃアンタ以外友達が居ないからよ。アンタ以外で話した事があるプレイヤーはルーシーさんとギルドマスターのルーベンスさんだけよ・・・・。二人とも名前がルーから始まるわね」


「気づいた? ルーシーはルー爺のひ孫さんらしいよ」


「わーお・・・、おじいちゃんとひ孫が一緒のゲームで遊んでるですかい」


「とは言ってもリアルでのルーシーの事はよく知らないんだけどね。ルー爺はよく話してくれるけどルーシーとは別々に暮らしてるらしくてね」


「ふーん、それで離れた親戚同士で建物の設計をルーベンスさんがやって、ルーシーさんがお手伝いキャラを作ってサポートしてるって訳ね」


「まあ、そのルー爺の話も確かめたわけじゃないから真実とは限らないけどね」


「怖っ!」


「ネットで個人情報垂れ流しの方が百倍怖いでしょうが。実はルーシーは男なんじゃないかと疑ってるんだ僕」


「へーぇ・・・・」


 メアリーに怪しい目つきで見られて、ショウはいぶかしんだ


「なんだよその目は」


「いや、アンタって叱ってくれるお兄さん的な男が好みだったわよねぇ~、小型犬みたいならなおよろしいとか言って無かった? もしかしてあんな性格がタイプ?」


「うるさいなぁ」


「アレ図星? ねえ図星ぃ?」


 からかう様に言ってくるメアリーにイラついて、ショウは早足になった


「もう先行くよ!」


「あ、ちょっとおいて行かないでよ!」


 そんなやり取りをしながら森の中を進んでいると、ショウが声を上げた


「白銀草あった! しかも固まって生えてる!」


「まとめて回収出来てラッキーね」


「逆に言えば他の場所には生えてないって事だから、ここを逃したら無駄にさまよう事になっただろうけどね・・・。ラッキーだよホント」


「さっさと回収しちゃいましょうか」


「そうだね。でもいつものクエストと違って回収した後も陣地に帰って納品箱に入れないといけなから気をつけてね・・・・。メアリー?」


 ショウは声をかけても反応がないメアリーを不審に思い見てみると、メアリーは指をさして言った


「ショウあれ見て」


「あれって…アレ!?」


 メアリーが指さす方を見るとギガウルフが居た。動揺するショウとは対称的にメアリーは微笑ましく見ていた


「かなり大きいけど、あのよく見るオオカミよね。もしかしてレア?」


「メアリーッッ、静かに、そのままゆっくり隠れて・・・」


「隠れるってどうやって?」


「ガウッ!」


 ギガウルフはメアリー達に視線を向けた


「あ、目が合った」


「逃げるよメアリー!」


「わかったわ! 先手必勝!余った剣を食らえ!!」


「メアリーィイ!?」


 メアリーは盗賊の剣を投げた。ギガウルフに4ダメージ


「ガウワウ!」


 ギガウルフはメアリーに向かって走り出した


「あれ、思ったよりも効かないわね」


「そんな事言ってないで直ぐ逃げるよ!早く! アレ今の僕じゃ勝てないから!!」


「ええ!? ただのサイズ違いがそんな強さ違うの!?」


「家猫とライオン並のサイズ差があったら違うに決まってるでしょうがあ! 見た事あるヤツしか相手にしちゃだめって言ったのにぃいいい!!」


「見た事ある見た目でしょ! 大きいだけでぇ!!」


 二人は走って逃げだした

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