第11話 慣れ始めが一番危ない

 はじめてのクエストをクリアした後メアリーは、しばらくショウと雑談した後・・・・


「ヒャッハー!新鮮な獲物だ!」


・・・・敵から武器を手に入れる事に味をしめ、戦闘系のクエストばかり受けていた


「貴様! 俺達をアロエ盗賊団と知っての・・・」


「言葉は不要!さっさとアイテム落とせぃ!ちぇすとおぉおおおお!」


 メアリーの強撃パワーアタック+連撃ラッシュの合わせ技により、パワーとスピードを増した攻撃を受けて、盗賊は12ダメージを受けた


「ちく・・・しょう・・・が」


 盗賊長は倒れた。メアリーはレベル10になった、盗賊の兜を手に入れた


「よっしゃあい! 盗賊装備がこれでそろったわね!」


「うん、そうだね・・・」


 ショウは生気の無い目で、盗賊装備に身を包んだメアリーを見ていた


”クリア目標を達成しました。帰りの馬車がそちらに向かってますのでしばらくお待ちください”

               ・

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               ・


 クエストクリアの報酬を受付からもらい、ロビーの休憩所に座り雑談していた


「うふふふ、今宵の虎徹は血に飢えておる、余は満足じゃ」


「それは良かったねメアリー・・・。お金も結構稼いだんだしお店よらない? レベルも上がったし装備とか買いたいでしょ」


 ショウの提案にメアリーは怪しい瞳で答える


「ショウ・・・」


「なに?」


「一度奪う事を覚えると買うだけじゃ満足できないのよ・・・、略奪上等!」


「メアリーそんな物騒な性格だったっけ!?」


「私も自分にこんな一面があるとは思わなかったけど、目覚めたわ!」


「目覚めないでよ!」


「ところで私が集めた盗賊装備って、シーフの初期装備だったりするの?」


「いや、敵の盗賊団から出る盗賊装備は少し攻撃的な性能にした奴だよ。シーフの初期武器は盗賊の剣じゃなくて短剣だし、見た目も地味な感じかな」


 メアリーはショウの答えを聞いて胸をなでおろした


「そっか。初めから盗賊にすればよかったかなと思ったけど、違うならいいや」


「本当に気に入ったんだね、その装備・・・。でもそろそろ装備変えないときつくなるよ。僕のレベルもまだ1だし、サポートにも限界があるからね」


「そうかぁ・・・。でもせっかく揃えたんだし、もう一回だけクエスト行かない?」


「なんか精神的に疲れたから少し休みたいんだけどな・・・。のんびり収穫系のクエストをやってみるてのはどうだい。一応フィールドに敵は出るし、そこで適当に試すって言うのは」


「そうしましょうか。景色をゆっくり眺めながら散策するのも悪くないだろうし」


「決まりだね。じゃあ行こうか」


 掲示板の前に2人は移動した


「えーと、それらしいクエストがいっぱい有るわね」


「う~ん・・・、景色楽しむならこれかなぁ」


 ショウは張り紙を一枚とってメアリーに見せた


「これか、難易度が高めみたいだけど大丈夫?」


「基本的に戦闘を回避してクリアするクエストだから難易度高めに設定されてるけど、初期の頃に入れるステージの中では結構気に入ってるんだ。メアリーが見た事ない様なモンスターに手を出さなきゃ大丈夫だよ」


「ふむ、見た事ある奴はって良いのね」


「そう殺気立たないでよ、半分散歩が目当てなんだから」


「わかってますって。じゃあクエストを発注するわね」


 メアリーは受付にショウから受け取った張り紙を持って行くと、受付のNPCが何時と少し違う反応をする


「こちらのクエストはアナタのレベルで挑むのは少々難しいですが、よろしいですか?」


「ええ、このクエストで願い」


「かしこまりました。どうかご無事で」


「え、ええ・・・。不穏な反応ねぇ」


 メアリーは受付の反応を疑問に思いながらもショウと共にクエストに出発した


「おお、崖だ!下に広がる森と泉がキレイ♡」


「良い景色でしょ。でも端に行き過ぎて落ちないでね」


「わかった。・・・・ねえ、ゲームなんだしわざと落ちてもいい? スカイダイビング感覚だと思えば楽しそう」


 崖の下を覗き込みながらそう聞いて来るメアリー質問に対してショウは困ったように言った


「どうしてもって言うなら止めないけど、落ちないでほしいなぁ。死ぬと今持ってるメアリーの所持金が3/1になるよ」


 メアリーはショウの言葉を聞いて焦って崖から離れた


「え、今まで盗賊から巻き上げたお金が3/1に!」


「そう。僕がアイテムを使って生き返らせれば大丈夫だけど崖の下にもフィールドが続いてるから死体がリスポーンしないんだよね。生き返らせるには僕も崖の下に下りなきゃいけないから面倒だし」


「それは面倒ね・・・。リスポーンて?」


「死んじゃったり、取れない場所に落ちたアイテムとかが都合の良い場所にワープしてくれる機能って言えば分かる?」


「なんとなく」


「それじゃあ景色をしばらく楽しんでから、目的の白銀草を取りに行こうか」


 ショウがそう提案するとメアリーのアバターは明後日の方向を見ながら固まり、口元だけを動かしながら喋った


「あ、それじゃあちょっと待って、おやつ取ってくる」


「じゃあ、僕も取ってこようかな。ここで休憩にしよう」


 しばらく二人のアバターが固まったまま数十秒動かなくなった後にまた動き出した


「いただきまーす」


「いただきます」


 雑談をしながら二人は間食を始めた


「絵にかいたような澄み渡る青空ね、良い天気、夜の10時とは思えないわね。リアルの時間に合わせたりとかしないの?」


「そう言うゲームもあるけど、それだとほとんどの社会人は、ほぼ夜でゲームする事になるからあまり無いね。モグ・・・」


 サンドイッチとジョッキを持ち食事をしながら喋るショウのアバターを見て、メアリーは首を傾げる。メアリーのアバターはものを食べる動きはしていなかった


「ねえショウ、その食べてるモーションはどうやるの?」


「いや、こっちのPCは新しいからね。特定の製品とモーションをリンクさせてゲーム内に反映させる機能が付いてるんだ」


「なにそれ! こっちにもその機能つけられる?」


「アームパーツを付け変えればできるとは思うけど、高いよ」


「そのお高いパーツをショウ様はどこで?」


「ゲーム大会で優勝した時に賞品でもらったPCにその機能が付いてた、対応した食器類ともろもろのセットで」


「え? ショウってEスポーツ選手だったの!?」


「プロじゃないよ、どこの団体にも所属してないしさ。一般参加」


「よくプロのファンともめなかったわね」


「だから一般参加は身分隠せるようになってるのさ。顔ばれもしてないしヘーキヘーキ」


 メアリーはリアルでそっと今座っているPCの椅子を指で撫でながら言った


「その優勝賞品が手に入ったおかげで私はこのPCをもらえたわけか」


「そういうこと、知らない人に売っちゃうのも嫌だったしさ。最新機種を体験したいならネットカフェやホテルで体験できるよ。今度の休みに2人で行こうか」


「そうね、いいかも。行きましょ」


 そのまま二人は景色を見ながら、しばらく楽しく雑談していた。リアルの二人は翌日2キロ体重が増えている事に気づいた

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