第5話 作られた物、作る者

 ショウに案内された個人ギルド、アンファングの塔の中に案内されたメアリー


「うわっは! 広い! それに豪華ね」


「ギルマスが建築士だからね。物理法則ぶっ飛ばして考えるのは楽しいそうだよ」


 メアリーは外から見た塔の外観を思い出しながら言った


「まあ現実だったらこんな不安定で高い建物作れないものね。2キロくらいは高さあるんじゃない?」


「現実の大きさに換算すると大体8000メートルぐらいだそうだよ」


「8000メートル!?」


 驚くメアリーにしっかりした態度で青年が近づいて言った


「お帰りなさいませショウ様。そしてようこそお客様」


「あ、どうもメアリー・アプリコットですよろしく・・・。って、またNPCか」


 そのNPCにショウは駆け寄り、何やらくっつき始めてしまった


「ただいまギリアン♡ いつもありがとうね」


「もったいないお言葉です、ショウ様」


「も~かっこいいなぁ! スクショ!今日のスクショ撮らないと!」


 ギリアンと呼ばれたNPCに抱き付き、飛ばした光る球体の方を見て何やらポーズをとり始めるショウを見て、メアリーは呆れた顔をして聞いた


「・・・ショウ、何やってるの?」


「ん~♡ ちょと今日のギリアンと僕の勇姿を写真におさめ・・・、ぐほお!」


 ギリアンに頬ずりしていたショウは、何者かによって蹴り飛ばされ45ダメージを受けた。さらにその蹴った少女はショウを踏みつけ罵声を浴びせる。フリフリの赤いドレスに金髪の縦ロールのお嬢様風だが、その両の手の全ての指には重厚な指輪がはめられ、まるで装飾を施されたメリケンサックに様だった


「あまりベタベタくっ付くんじゃないって言ってるでしょう! このエセ王子!」


「だって今日もカッコいいんだもの♡」


 踏まれながらも表情を緩めるショウに対して踏みつける力を強くし、少女はギリアンに命令をだした


「いい加減懲りろ! ギリアン!今日は下がって良いわ! そのまま6時間自室で待機! 権限者命令よ!」


「かしこまりました」


 ギリアンは指示を受け何処かに去って行く・・・。その後ろ姿を見ながらショウは手を伸ばし悲痛な叫び声を上げた


「ギリアーン! 帰すなんて酷いじゃないかルーシー!!」


「ギルドの雑用用に作ったモノけど、アレはアタシのサポートNPCよ! 変な真似するんじゃない!」


「ギリアンをアレとかモノとか言うんじゃない!」


「アタシの持ち物だって言ってるでしょうが! あんまり酷いとコンタクトブロックに登録してやるわよ」


「やめて! ギリアンに無視されるなんて耐えられない!」


 言い争う2人にメアリーは割り込んで話しかけた


「あの~、はじめましてルーシー・・・さん? 貴女はプレイヤーよね?」


「ん? ああ、いらっしゃい。はじめまして、貴女がこのショウの言ってた新人さんね」


「はい、メアリー・アプリコットです」


「ルーシー・キャメロット、クラフターよ、よろしくね」


「あなたがアノNPCを?」


「そう。このギルドの雑務用のNPCユニットの20体は私のデザインなのよ。それで参考にショウにもどんなキャラクターが好みか聞いたんだけど・・・」


 ショウは地面に転がりながら泣きわめいていた


「う~!ギリアン~ッ!」


 それを見てメアリーはぼやいた


「好み過ぎちゃったのね・・・」


 ジト目でショウを見下ろすメアリーに、ルーシーは冗談交じりに言った


「アナタ好みのNPCも作ってあげましょうか?」


 ルーシーの言葉にメアリーはショウを指差しながら強く否定する


「いいえ! ああは成りたくないので結構です!」


「アハハ! そうよね!安心したわ。改めてこれからよろしくね」


「はい!」


 ルーシーは転がり回るショウをサッカーボールの様に蹴り上げて起こし、立たせていった


「こらショウ! 早くメアリーをギルマスのところに連れて行ってあげなさいよ!」


「おっと!そうだった。待たせたね、つい何時ものクセで・・・」


 頭を掻きながら謝るショウにメアリーは頭をかかえ飽きれながらも答えた


「ええ・・・。先輩にフラれてもがくアンタの姿を思い出したわ・・・」


「言わないでよそんな昔の事!」


「昔ってほんの数年前の話でしょうが!大変だったんだからね! で、どっちに行けばいいの?」


「こっちのエレベーター。もう、酔ってたんだから多少は許してよ!」


「シラフでかましてたでしょうが! 大体あんたは・・・」


 そう言い争いながらメアリーとショウの二人は中央のエレベーターの中に入り行ってしまったのを見送った後、ルーシーはぼやいた


「あの悪態演技じゃなかったのかぁ・・・?」


 エレベーターに乗った二人はボタンを押し・・・・


「何階?」


「最上階」


 ・・・・数秒後、最上階のギルドマスターの部屋のある階にたどり着き、メアリーは言った


「到着早っ! 現実だったらGで潰れてたわよ絶対!」


「8000メートルを数秒かぁ・・・、改めて考えてみると確かに怖いかも。でも実際に普通のエレベーターの速度で上がるのよりはマシでだろ」


「そりゃそうだけど・・・」


「上がっていく景色とか見たかった?」


「正直期待した」


「アハハ、じゃあ次は外の景色を見れる設定に変えよう。あのドアの向こうがギルドマスターが居る部屋だよ」


 ショウは長い通路の先を指差してた。そこまで続く通路や扉の造りを見てメアリーはぼやく


「なんか緊張するわね・・・」


「そんな緊張しないで。企業の重役とかなんかじゃなく、文字どうりお飾りなんだからさ」


「そりゃそうだろうけど、中身の居るプレイヤーなんでしょ」


「だから関係ないでしょうに。本当にゲーム初心者なんだね。ホラ行くよ!」


「おう!」


 メアリーは緊張し大股でぎこちなくも進んだ




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