龍
人は愚かだ
いつも思うことだが何故不老不死などなりたがるのだろうか?
永遠など退屈で仕方ない
誰も気付かないのだ、有限であるが故に無限の退屈を
一度、永遠を与えた者が居た
確かどこかの国を治めているとかなんとか語っていたが記憶も定かではない
彼は私の生き血を飲み喜び勇んで自国へ帰っていった
私は初めてのことをした興奮を覚え人が永遠の命を手に入れたらどうなるのかを楽しみにしたのだ
最初の数年は良かったようで私に何度か会いに来た
貢ぎ物と称して金品やら女やら食べ物やらを持ってくるわくるわ
私は人間は食わないし金品に興味はない、それに人間の食べ物は体に合わないのか美味しくないため丁重にお断りした
彼はそのたびに聞いてきた
何も要らないのはどういうことなのだ、と
単純に私の好みではないのもあるのだが、必要がないだけである
その度に答える
好みではないし金品など貰っても私では使い道がない、民に分け与えるがよい、と
彼は全てを持ち帰った
代わりと言っては何だが国の話を聞かせてもらうことに
ただより高い物はないとどこかの国でも言っていたので暇つぶしのため聞かせてもらうことにした
彼は何か腑に落ちたようで楽しく自分の武勇伝を語り始める
他国との争いの中、一人で大将を討ち取っただとか
美しい嫁を娶っただとか
鬼神と恐れられる怪物を退治したとか
色々な話をしてくれた
私からすれば人間を討ち取るなど大したことではないし美しい番いの存在なんて必要としない
ましてや鬼神と称されるものがなんなのかわからないが所詮は人の物差しだ
暇つぶしにはなったものの彼の今後が一番の暇つぶしだ
そこからしばらく彼は顔を出さなくなった
私なぞ忘れてしまったのか?
人間なんてそんなものかと思い暇を持て余す日々に暫し逆戻りと相成った
そこからまたしばらく経ち欠伸をする私の元へあの男がやってきたのだが前と違いえらく血相を変えていた
何事かと尋ねたところ彼は少しずつ語り始めた
嫁が逝きに息子達も自分より先に逝ったこと、周囲が不老不死を気味悪がり始めたこと、それが原因で反逆され国を追放されたこと
だから不老不死から戻してくれと言ってきた
だが私にはすることは出来ても戻すことは出来ない
その旨を伝えると泣きながら殺してくれと懇願してきた
人とは弱いものだ、他者と変われば見た目はそのままでも異形となる
それも理解できず目の前の欲に生きた者の末路がこれか
実につまらなくて愚かな終わりだ
その後彼はひとしきり嘆き悲しんだ後ここを離れた
どうなったかは知らないし興味もない
人間は愚かで悲しい生き物だ
体も心も弱く脆い
私の渇きを潤す者が存在するのだろうか?
死を得られるのだろうか?
人間で羨ましいことと言えば死ねることだというのにどうして不老不死を求めるのだろう
ああ、私には一生わからないだろうな
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