あなたはどこに居るの?

喧騒の中に一人の男を捜す。

とある夜に出会った、運命的だった。

私は帰り道で歩いていた。

街灯の少ない帰路。

時折視線を感じ振り返るがそこには誰も居ない。

ホッと一息ついた瞬間に目の前が真っ暗になった。

それは街灯が少ないとか夜だからとかそんな理由じゃない。

視界を暗闇に遮られたのだ。

声が出ない、口の前に何か温かい物が当たる。

おそらく手。

恐怖によって混乱し体が硬直する。

その刹那、視界が開けた。

倒れている人間、そいつの後ろに何かが居た。

暗闇の中に赤い光点が二つ。

たぶん瞳、月明かりを反射して光点として見えたのだ。

暗く顔がよく分からない。

分かったのは赤い瞳だということと男性だということ。

倒れていたのは大きく筋肉質の男性だった。

この対象を昏倒させたのだから男だろうと考えたのだ。

この時落ちたのだ。

ああ、私はなんて簡単なんだろうと思う。

助けられただけでこの操を捧げたくなってしまうなんて。

次の瞬間、彼は消えていた。

私が瞬きをしたその刹那に姿を消したのだ。

奪われた私の心はどうしてくれるのだ!とむしろ怒りすら湧いた。

その後、危険な暗闇の中彼を探したのだが見つからなかった。


喧騒の中私は彼を探す。

まだ知らなかった、彼が何者なのか。

知る由も無かった、私が何に巻き込まれてどういった人生を送っていくのか。

恋は盲目、惚れた方の負け。

闇夜にしか現れぬ愛しき彼を白昼に探す道化師の私。

これは恋の物語なのだが、普通ではない物語。

宵闇に私は何を見ることになるのか。

それはまた今度、出会うことがあれば聞かせてあげましょう。

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