風が吹いた、心地の良い風だ。

凪のように優しい。

頬を撫で、髪を扇ぎ、そしてこの場を離れていく。

どうやら両手放しで私を置いてはいけないらしい。

徐々に頻度は落ちているが私を撫ぜる風は消えない。


ふと思う、それほどまでに危うい存在だろうか?

ふと考える、それほどまでに頼りない存在だろうか?


考えるまでもない、思うまでもない。

それは私の知ったことではないのだから。

どれだけ成長したと言っても心配なものは心配なのでしょう。


あなたが心配する必要はないです。

私はこうして一人で地に足をつけ立てています。

どうか安らかに眠って欲しい、もう休んでください。


この言葉は意味を持たない。

聞こえているか定かではない。

ただ、不安にさせているのであれば、心配させているのであれば、聞こえていて欲しい。

自己満足でしかない。

それでも良い、少しでも可能性があるのなら声をかけ続ける。


飄風だ。

私を鼓舞するような力強い風。

雄風と証するほうが気持ちが良い。

憂慮ではなく鼓舞するものとなっていた。


声が届いたのだろうか?それともあなたが一人前だと認めてくれたのでしょうか?これから風は吹かなくなるのでしょうか?

寂しいような嬉しいような、不思議な感覚。

消えるとは違う、あなたが昇華されるような感覚。

思い出になる、生きている間は忘れない。

風が吹いたら思い出す、たとえそれがあなたでなくとも。


頬を伝う涙と共に笑顔で空を仰ぐ。

何があろうと忘れることはない。

瞼を一度落とし深呼吸する。

ここから先へ、一歩前へ、新たなる未来へ。

あなたの雄風に鼓舞され進む。

またどこかで感じることが出来ることを祈って。

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