Episode13 「謎の招待状」
「試させてもらうぞ……!お前の実力!」
ユウスケは男がリボルバーから弾丸を発射する前に移動を開始し、屋敷内の階段の物陰に隠れた。
「隠れようとも無駄だ。」
(あいつが銃を撃てば誰かが気づくはずだ。そうすれば、皆をこの屋敷から避難させることはできる……!)
男はリボルバーのトリガーを引き、轟音と共にユウスケが隠れている階段の一部を粉砕した。
ユウスケが物陰として利用している階段部分も段々と破壊されていき、ついにはユウスケが隠れている部分だけとなった。
「何をしている?早く力を見せてみろ……!」
(今の銃声で誰か気づいてるはず……!あとはあいつをどうにかするだけ……!)
男が撃鉄を下ろし、トリガーに指をかけた瞬間に誰かが声をかけ、銃弾を放つのをやめた。
「朝から何やってんの。ソウジ。」
白の寝間着を着て、腰まで伸びている銀髪に寝癖が跳ねているフウカが、まだ半目で寝惚けている目を擦りながら、二階から見下ろしていた。
「……フウカ。この男がお前の言っていた転移者だろう?」
そう言うとソウジはリボルバーを下ろし、スカーフを下げて素顔を半分晒した。
ユウスケはまだ撃たれる危険性を考慮して、少しだけ体を出してフウカに声をかけた。
「こいつは誰なんだ!?アンタの知り合いなのか!?」
「ええ。あなたと同じ転移者で、名前はソウジ。」
リボルバーをホルスターに収納したソウジは、まだ破壊されていない方の階段を使ってフウカのいるところまで登った。
「話と違うぞ。どういうことだ……?」
「なにが?」
「この転移者の実力だ。お前の言うように、隠された力などあるようには思えんが。」
「それはこの子だって自分の意思で力を使えるわけじゃないからでしょ。……でも、ちょうどいいわ。」
フウカはソウジとの話を切り上げて、破壊されている方の階段へと飛び降りてまだ隠れているユウスケを呼んだ。
「もう出てきても大丈夫よ。私がいる限り、ソウジはあなたに手を出せないから。」
ユウスケは床に崩れ落ちている瓦礫で躓かないように慎重に足を踏み進めるが、一瞬だけソウジの方を見た瞬間に瓦礫に躓いて転びかける。
「おっと、危ない。」
フウカが転びかけたユウスケを抱きしめるように受け止めるが、咄嗟にユウスケは彼女から遠ざかる。
「なぁに?せっかく〝 敵意はないわよー〟ってことを示してあげたのに。」
「ああ。アンタにそういった意志がないことは知ってる。……けど、他の転移者と手を組んでるなんて聞いてなかった!」
「別にいいじゃない。現にこうやってソウジと会ってるんだし。」
「こいつに殺されるところだったんだぞ!」
ユウスケはソウジに向けて指をさし、フウカに対して激昴した。
「だーかーらー。ソウジはあなたの実力が見たくて戦いを挑んだわけで、生き残りを懸けたバトルとして挑んだんじゃないの。」
ソウジは帽子を抑えながら、二階の手すりを飛び越えて着地した。
「お前も知っているだろう。転移者同士のバトルによって得られるものを……。」
「まだ誰もやられてないけど、いずれその時が訪れるわ。私があなたやソウジを手を組んでいるのは、その時に備えて仲間を増やし、できるだけ転移者を減らしたいから。」
「俺が今まで集めた情報によると、特典アイテムを全て集めた者が、願いを叶える権利を得られるらしい。そして特典アイテムは生命線でもある。だから、他の転移者が命を絶つまえに、特典アイテムを回収しなければならない。」
ユウスケは指に装着しているグランディールを見て、ソウジやフウカに目線を戻した。
「もし、その特典アイテムが破壊されて、死んだらその先はどうなるんだ……?」
「知らんな。元の世界に帰られるのか……。どっちにしろ、俺には関係のない話だ。」
「なんでだよ!?帰りたくないのかよ!?」
「ならば聞くが、なぜ帰る必要がある?俺は俺の強さを証明できればそれでいい。そのために俺はこのバトルで勝ち残る。」
ソウジは拳を握りしめ、ユウスケを睨んだ。その時、クラークの使用人が駆け足でフウカに近寄り、赤色の封筒をフウカに手渡した。
フウカは封筒を開け、紙に書かれている文字を目読した。
「ウォード家からの招待状ね……。けど、ウォードって……。」
ユウスケはフウカから手紙を奪い取り、階段を駆け上がった。
「どこに行くつもり!?」
「このウォードって、ルースターやクラークと同じ貴族だろ!?なら、ルースター復興に力を貸してくれるかもしれない!」
「ちょっと……!」
フウカが止める前にユウスケは扉を開けて寝室へと繋がる通路へと入った。
「フウカ。ウォードは確か……。」
「ええ。彼の言う通り、私達と同じこの世界の貴族。けど、私の調べだとクラークとウォードは昔から交流はなかったはず。それを今更……。」
「罠か……?」
「恐らくね。」
ユウスケが寝室の扉を開けようとした瞬間、勢いよく扉が開かれてユウスケは鼻をぶつけた。
「あっ!すみません!ユウスケ様……!!」
「平気だ……。それより聞いてくれ!ウォードから招待状がきたんだ!クラーク宛てだけど、同行させてもらえば援助してもらえるかもしれない!」
「ウォードですか……。あまり親交はありませんが、行く価値はありますね。それと、先程の銃声ですが……。」
「あれならもう大丈夫だ。新しい転移者が来たんだが、どうやらそいつもフウカと手を組んでいるらしい。まだ不安だけど、今はウォードに会うことが先決だ。」
「ユウスケ様がそれでよろしいなら、私は何も言いません。」
システィはユウスケにタキシード一式を渡し、ユウスケはそれを受け取る。
着替えを終え、二人は必要最低限の荷物を持って一階へと下りた。
「ウォードに行くの?」
「ああ。だから同行させてくれ。」
ユウスケは先程、奪った手紙をフウカに返した。
「私は行かないわ。あなた達で行ってきて。」
手紙の空白部分にサインをしてユウスケに返却した。
「仕事が片付いたらそっちに行くわ。それと、私とソウジはあなたの味方よ。それだけは覚えておいて。」
手を振り、ソウジを連れてフウカは奥の部屋へと消えていった。
「……行こう。システィ。」
屋敷の大扉を開け、ユウスケはウォードへの道を歩み始めた。
ユウスケが屋敷を去ったことを確認したフウカは、ソウジに〝アンジュにて発砲事件!転移者同士の争いか!?〟と見出しが書かれた新聞を渡した。
「その転移者は恐らく、あの森を吹き飛ばした転移者と同じね。なにせ一人はグロウの制服を着た男って書いてあるし。」
「お前がパーティー会場で見たハワードの王女を救ったヤツか……。もう一人は誰だ?」
「たぶんカイト。ここまで派手にやる転移者なんてあなたか彼くらいでしょ?」
ソウジは窓を覗いて、ユウスケとシスティが北西へと歩いていくのを見た。
「なぜ罠と知りながらヤツを行かせた?」
「あら?彼が心配?あなたも彼が気に入ったのね。」
「まさか。……何か考えがあるんだろう?」
「後を追うわ。もし差出人が私と同じ類の転移者なら、私やソウジのことは知っているはずよ。だから彼を先に向かわせて、このウォードが誰なのか探る。」
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