二一 宏美の病室

 凜と香澄の病室を後にして、朱理は宏美のところに向かった。彼女も同じ病院に入院している。


 病室の番号を確認しドアを開ける。


「失礼します」


 中に入ると先客がいた。


「あぁ、アカリン。いらっしゃい」


「宏美の教え子?」


「うん」


 そこに居たのは宏美と同い年ぐらいの女性だ。


 宏美の顔色も思ったより大分いい。


 佐藤加乃子の事に加え、由衣の死がかなり堪えていると思っていた。


「お邪魔でしたら出直します」


「ううん、気にしないで。紹介するね、先生の中学時代の友達、たけ


「えッ? 英梨……さんって、まさか……」


 加乃子とこっくりさんをやった友達、英梨と美紀も亡くなったと宏美は言っていたはずだ。


「そう、ヒドイでしょ? 連絡がつかないからって、人を勝手に殺して」


「何言ってんのッ? 加乃子と美紀の事があったんだから当然よ」


「だからその事については謝ってんじゃん!」


「あの~、いったい何がどうなっているんでしょうか?」


「あ、ゴメンゴメン」


 宏子の説明によると、英梨は就職先で中学時代の先輩と再会し交際を始めた。


 ところが二股をかけられていることが判明し、別れるだけで済まず、職場にも居づらくなってしまった。


「結局、めちゃったの。それがきっかけで、中学時代の知り合いと何となく連絡を取りづらくなって。特に宏美とは、加乃子だけじゃなく美紀の事もあったから、なおさらね……」


 ところが数日前に、あましようを名乗る探偵から電話があり、宏美が入院したことを知らされた。


 いたずらと思ったが、念のため宏美の実家に連絡したところ事実であることが判り、慌てて面会に来たのだ。


「でも、宏美の両親が依頼したんじゃなかった」


「ワタシだって探偵なんて雇ってないわ」


 朱理はピンときた。多分、依頼したのは叔父だ。


「ホントに良かったですね」


「えぇ」


「先生、今日はお見舞いだけじゃなく、伝えたいことがあって来たんです」


「どうしたの?」


「わたし、転校します」


「今回の事件が原因?」


 宏美の表情が曇った。


「はい。でも、逃げるために転校するんじゃありません、強くなるために転校するんです。二度と大切な物を失わないために」


「アカリン……」


「必ず戻ってきます。その時は、また先生のクラスになりたいです」


「うん、わかった。先生も早く退院して教師を続けられるように精一杯頑張るから」


「あまりムリはしないでくださいね」


「それはお互い様でしょ?」


「そうですね」

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