終 真藤朱理

 病院を出ると夕陽が街をあかね色に染めていた。


 朱理は自転車に乗ると自宅に向かいペダルをこぎ始めた。


 新しい生活が始まる。


 それは今まで予想すらしていなかった、新しい人生でもある。


 今は希望よりも不安と恐怖が勝っている。


 自分の中に眠る能力ちからへ対する恐怖、大切な人を傷つける恐怖、そして大切なものを失う恐怖。

 それを乗り越えるには強くならなければならない。

 

  由衣、わたしは生きていく。

  だけど由衣の分まで生きるなんて、都合の良いことは言わない。

  由衣の人生は由衣だけの物だもの。

  わたしはそれを奪う原因になった、みんな否定してくれるけど、事実は変わらない。

  だから、もう二度と繰り返さない。

  大切な人たちを護ってみせる。

  強くなってみんなを護ってみせる。

  由衣の事は絶対に忘れない。

  だからお願い、わたしを見守っていて。


 朱理はペダルをこぐ脚に力を込めた。


                                ―了―

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