一六 葬儀場

 由衣が微笑んでいる。


 しかしそれは過去の笑顔だ。


 もう二度と彼女が微笑む事はない。


 泣くことも、怒ることも、悲しむことも、何もかもが無くなってしまった。


 朱理は涙で曇る瞳で由衣の遺影を見つめていた。


 由衣のそうがしめやかに行われている。


 クラスメイトと共に葬儀場に朱理は参列しているが、そこに担任の宏美の姿

はなく、凜と香澄もこの場にはいない。


 あの後、朱理は宏美たちと共に救急車で病院に運ばれた。


 大した外傷は無かったので、様子を見るため一泊だけさせられて翌日退院と

なった。


 そして迎えに来た悠輝から、由衣が帰らぬ人となったことを知らされた。


 彼女はあの祠の中で見つかった。


 クラスメイトの噂では、ミイラ化していたと言われている。


 由衣が朱理たちとセーメイ様をやっていたことは学校中が知っていた。


 面と向かっては言わないが、みんなセーメイ様のたたりで由衣は殺さ

れたと思っている。


 現に学校ではセーメイ様やこっくりさんなどの降霊術占いが禁止されてい

た。


 委員長のやまもとあつが、クラスを代表して弔

《ちよう》を読み始めた。


 由衣はいつも明るくムードメーカーで大好きだったと敦子は言ったが、彼女

が由衣と話しているのを見たことはほとんど無い。


 どちらかと言えば、いつも誰かをからかうような由衣を嫌っていたのではな

いか。


 朱理はいたたまれなくなり視線を逸らした。


 すると叔父と眼が合った、叔父と母も参列している。


 お前は悪くない。


 そう瞳で言っている。


 朱理はうなずいたが、心の中では違っていた。


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