一二 夢

 荒れた稲荷神社の前で朱理が泣いている。


 彼女の前には三人の少女と一人の女性が横たわっている。


 四人とも眼をカッと見開き、何かを叫んでいるかのように口を開けたまま息絶えている。


 助けられなかった。


 由衣だけではない。


 凜も香澄もそして宏子まで殺された。


 殺したのは朱理だ。


 取り憑かれ、その手で友人たちの生命いのちを奪った。


 

 おじさん、わたし、どうしたらいいの?



 朱理が尋ねる。



 お前は何も悪くない、全部おれのせいだ。



 そう言って、どうこくする姪を抱きしめた。


 失われた生命いのちを取り戻すことは誰にも出来ない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る