二章 王都プロスペリテ

第31話 紅介の成長

 俺たち三人は地上へと転移された後、このままこの付近に留まることはディアを封印から解いたばかりと言うこともあり、何か危険があるかもしれないと判断し、商業都市リーブルへと向かう馬車へと乗り込んだのだった。


 ちなみにディアの封印が解かれたのに関わらず、ダンジョンに異変は無い。未だにダンジョン内には魔物が現れ、そしてそれを倒すことで金を稼ぐ冒険者が絶えないのだという話を後日、俺は噂で聞くことになる。



 俺たちが慌ただしくリーブル行きの馬車に乗り込む前に、俺とフラムにひと悶着があった。いや、ひと悶着と言うよりは俺がフラムを少し不機嫌にさせてしまった、というだけの話なのだが。


 その原因は本当にくだらない事だ。馬車に乗る際にはもちろん当たり前の事だが、お金がかかる。そしてそれは一人でも人数が増えれば乗車料金をその分支払う必要があるのだが、ふと俺がフラムにこんなことを言ってしまったのだ。


「フラムって俺と契約紋で繋がってるから、いつでも呼び出せるよね? 俺とディアがリーブルに着いてからフラムを呼び出せば乗車料金が安く済むんじゃ……」


「なっ……! それは酷いというものだぞ主よ! 私たちは仲間であり、パーティーじゃないか。それなのに私だけ除け者なんて断固拒否するぞ!」


 そしてフラムはその後、少しムスッとしてしまい、俺はそれを必死に宥めることになったのだった。


 結局、リーブルに着いたらおいしいご飯をご馳走するという事でフラムの機嫌を取り戻す事に成功したのだ。




 リーブルへの移動時間はおよそ三日かかるのだが、後数時間でようやくリーブルに到着するというタイミングでフラムが唐突にこんな事を言い始める。


「主よ、今気付いたのだが、私とダンジョンで一度別れてから随分と強くなった様だな」


 ん? 強くなった? ジュールを倒して伝説級レジェンドスキルを手に入れたことかな?


「まあ、三十階層のボスから伝説級のスキルを手に入れることができたからね」


 するとフラムは首を横に振る。


「いや、そのことではないぞ。何だ主よ、まさか最近自分のスキルを確認していないのか?」


 フラムにそう言われてみるとダンジョンに入ってからというもの、叡智の書スキルブックで何のスキルを手に入れたのかを確認した以来、してなかったなぁ。


「してなかった。ちょっと確認してみるよ」


 俺は『心眼』を発動し、自身の情報を確認することに。



 ―――――――――――――――――


 アカギ・コウスケ



 神話級ミソロジースキル 『血の支配者ブラッド・ルーラー』Lv10

 身体能力上昇・極大、魔力量上昇・極大、血流操作、対象の血に触れることで任意のスキルを複写し、獲得



 伝説級レジェンドスキル 『空間操者スペース・オペレイト』Lv4

 空間の固定・創造・接続、魔力量上昇・特大


 伝説級レジェンドスキル 『神眼リヴィール・アイ』Lv2

 情報の解析、情報隠蔽、動体視力上昇・特大



 英雄級ヒーロースキル 『融合』Lv―

 生物を融合、スキルの融合


 英雄級ヒーロースキル 『自己再生』Lv9

 自身の怪我・欠損の再生


 英雄級ヒーロースキル 『金剛堅固』Lv3

 物理攻撃耐性の上昇・大、基礎防御力上昇・大


 英雄級ヒーロースキル 『剣鬼』Lv1

 剣技向上、身体能力上昇・大


 英雄級ヒーロースキル 『成長増進』Lv3

 全所持スキルの成長速度上昇・大



 上級アドバンススキル 『万能言語』Lv―

 あらゆる言語の理解・視覚的変換


 上級アドバンススキル 『気配探知』Lv6

 広範囲に渡る生物反応の探知


 上級アドバンススキル 『投擲巧者』

 投擲技術向上、命中力補正、身体能力上昇・中


 上級アドバンススキル 『火炎魔法』Lv4

 火属性魔法の威力・魔力効率の向上、魔力量上昇・中


 上級アドバンススキル 『水氷魔法』Lv1

 水属性魔法の威力・魔力効率の向上、魔力量上昇・中


 上級アドバンススキル 『大地魔法』Lv4

 土属性魔法の威力・魔力効率の向上、魔力量上昇・中


 上級アドバンススキル 『暴風魔法』Lv5

 風属性魔法の威力・魔力効率の向上、魔力量上昇・中


 上級アドバンススキル 『邪眼』

 対象を硬直、思考誘導、動体視力上昇・中


 上級アドバンススキル 『召喚魔法』Lv― 使用不可

 魔力量に応じた魔物等を召喚し、契約を結ぶ



 スキル 『毒耐性』Lv7

 毒に対する耐性の上昇


 スキル 『熱耐性』Lv5

 熱に対する耐性の上昇


 スキル 『水耐性』Lv5

 水に対する耐性の上昇


 スキル 『火耐性』Lv5

 火に対する耐性の上昇


 ――――――――――――――――――


 俺は唖然としてしまった。


 え? いつの間にここまでスキルが強化されていたんだ? そもそも『心眼』だと思っていたスキルが『神眼』に変わってるし!


 そんな事を考えながらも頭の中で、自分のスキルについて冷静になりつつ、考察する。


 耐性系のスキルはあまり成長していないみたいだ。まぁあまり攻撃を貰うことがなかったからかな?


 魔法に関してはダンジョンで魔物から手に入れていた水魔法も含め、全て上級スキルになっていた。


『スキル:剣術』に限っては二段階もレアリティが上がってるし……。これってゴブリン王からコピーした『成長促進』とジュールという強敵を倒したおかげ?


「本当だ、自分でも信じられない位、強くなってる……」


「さすが主だな。それでこそ私の契約者に相応しいというものだぞ」


 何故か自分のことのようにフラムは胸を張っている。そして先ほどから空気の様に存在感が消えているディアに関しては、首を傾げながら頭に『?』を浮かべていた。


 まぁディアに会う前の事だから、話に付いて来られないのもしょうがないか。




 その後も自分のスキルを見ていると、一つ気になるものを見つけた。

 それは召喚魔法の所に何故か『使用不可』と表示されているという点だ。


「あれ? どういうことだろ……」


「主よ、どうしたのだ?」


「いや、それが召喚魔法が使用不可能になってるみたいなんだよ」


 俺がそう話すと、フラムは何故か俺から視線を反らした。


「どうしたんだ? フラム」


「私は何も知らないぞ」


 この反応、いかにも怪しい……。


 フラムを問い詰めた結果、フラム曰く、自分以外の者を召喚させないため俺に召喚された際に、召喚魔法のシステムリソースの様なものを全て自分に集約したとの事だった。

 その為、俺の召喚魔法はこれ以上の召喚ができなくなってしまったらしい。


 フラムが謝罪して来たため、俺は寛大な心で許すことにしたのだった。




 そういえば『神眼』にスキルが進化したことでフラムの情報を見ることができるんじゃないか?


 召喚魔法の事でフラムにしてやられた俺は、ちょっとした仕返しとばかりに、フラムに『神眼』を発動してみることした。


 ………あれ? 何も見えないんだけど?


 するとフラムは俺が情報を覗き見ようとしたことに気付いたのか、ニヤリとした表情を俺に向けてくる。


「甘いぞ、主よ。私の情報を見ようとした様だが、例え伝説級スキルを使ったとしても無駄だ。私のスキルも同じ伝説級だが、少し特殊でな。おそらく見ることができる者など人間にはいないはずだ」


 ちょっと悔しい。同じ伝説級スキルなのに、差があるなんて……。


「フラムのスキルは相当凄そうだ。そういえば、ディアは神器を一つ取り戻したけど、どれ程の力を使えるようになったんだ?」


 するとディアは少し考え、ゆっくりとした口調で話す。


「わたしが今使える力は、四大元素魔法と回復魔法くらい」


 四大元素とは、火・水・土・風の属性のことだ。


「ちょっとディアの情報を見てもいいかな?」


「うん。いいよ」


 ディアに許可を取り、情報を見てみることにする。しかし何故かディアの情報を見ることができなかった。


「何故かディアの情報が見えなかったんだけど、フラムなら見れる?」


「いや、私の目を持ってしても、フロディアの情報は見ることが出来ないぞ。おそらくペンダントの力によって情報を隠蔽されているのだろう」


「ラフィーラが渡して来たアイテムなだけあって伊達じゃない訳か。まさかフラムですら見ることができないなんてね。だからと言ってペンダントを取って見せてもらうって訳にもいかないし、諦めるしかなさそうだ」


 ペンダントを取ってしまえば、神威が漏れてしまい、敵に察知されてしまうかもしれない。そんな危険を犯したくはなかった。


「ディアの魔法がどれ程の力なのかは、いずれ検証してみよう」


「うん。わかった。でもそんなに心配するほど弱くないと思う」


 ディアがそう言うのなら、実際はかなり強力な魔法が使えそうだ。




 その後、馬車の中で三人で雑談をしながら時間を潰し、ついに商業都市リーブルへと到着したのだった。


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