ひよこ寮のメンバー
予定や理由がなければみんなでご飯、というのがこの寮の暗黙のルールになっている。
今日も出かけていたメンバーが夕方には帰って来たからみんなで食卓を囲んだ。
メンバーはオレを含めて今6人。
「みんなの話聞きたい」
そう言ったのは同い年の
隠立はだいたい言葉が足りないし、最初は何を考えてるかわからないところがあった。すぐに何も考えてない事がわかったけど。
「今日の話? 今日はスバルと買い物に行って来たよ」
そんな隠立の言葉を上手く読み取って、
里兎先輩は物腰が柔らかく、こういうさりげないフォローが上手い先輩だ。マイペースなところもあるけど。
今日は阿荘先輩と出かけてたらしい。
「新学期に必要になる物を買いに行ったんだよ、スバルは荷物持ち」
「人を荷物持ちにするな。お前達も春休みが終わるまでに揃えておけ」
里兎先輩に醤油差しを渡しながら
言い方はぶっきらぼうでも、阿荘先輩はいつもオレ達の事を心配してくれる。頼りになるというイメージを裏切らない先輩。
「はい、今度買いに行きます」
「返事をするのは
「はは、ユウちゃんはワイらの代表みたいなもんやさかい」
そう言って笑うトオルの横で隠立が頷いている。
オレは別に代表になったつもりないけど。
「おい、オレが頼んだの買って来てくれたか?」
体を乗り出して
トオルいわく根津先輩は、見た目は可愛いけどキャンキャンうるさい小型犬、らしい。それを聞いた根津先輩はトオルにドロップキックをおみまいしていた。
まぁ確かに、根津先輩とトオルだけで充分この寮は賑やかだ。
「買ったよ、後で部屋に持って行くね」
「サンキュー」
「あ、そや、1年ていつ頃来るんですかー?」
「2人共4月に入ってからみたいだね」
「今年は2人か?」
「うん」
質問に答えつつ、里兎先輩は少なくなっている阿荘先輩の麦茶を足している。
何というかこの2人にはこういう、あうんの呼吸みたいなものがある。
「生意気なヤツじゃねーと良いけどな」
どこか楽しげな根津先輩だったけど、次の阿荘先輩のセリフで表情を一変させた。
「あぁ、お前はあの頃…いや今も、生意気だからな」
「はぁ!?お前なんかウドの大木だろーが!!」
そこからおなじみのおかずの取り合いが始まる。根津先輩は騒ぎながら、阿荘先輩は静かに、戦いを繰り広げている。
「こうなったらもう、どうしようもないね」
里兎先輩はだいたいいつもこう言って放置している。止めるつもりはないらしい。
「なぁ、なぁ、ユウちゃん」
「何?」
「1年来たら色々バタバタすると思うねん。せやから、その前にデートせぇへん?」
また始まった。
「しない」
「そない即答せんでもえぇやん」
「しない」
「遊園地行かへん?」
「人多いから行きたくない」
「映画は?」
「今観たいのない」
「本屋は?」
「トオル用事ないだろ」
「ほな、買いもん行こうや。必要なもん買いに」
「今度1人で行く」
「え~、ほなら~…」
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