第8話 偶然

 ある日、その日は休日でレイからの呼び出しもなかったので、家でのんびりとしていた。くつろいでいると文句を言う妻もいなかったので、リビングのソファーでテレビを見ながらゴロゴロしていると、娘が急にバタバタし始めた。


「お菓子はあるし、ジュースもあるから大丈夫かな。」


 俺には関係ないから大丈夫かなと引き続きゴロゴロしていた。すると娘が俺の元へやってきた。


「おい、くそおやじ。あたしの友達来るんだから、部屋に引っ込んでろよ。」


 ずいぶんな言いようだった。でも、Tシャツもよれよれでだらしなくゴロゴロしてるお父さんなんて恥ずかしいよなと娘の言うとおりにすることにした。


 部屋に戻ってからしばらくしてチャイムの音と女の子の声がたくさん聞こえてきた。そこで急に娘の友達ってどんな感じなんだろうと思い、部屋から少しのぞいてみることにした。


 女の子が五人部屋に入るところだった。派手な子もいるし、おとなしそうな子もいるんだなと思っていると、一人が振り向き目が合った。なんとレイだった。


 レイも驚いた顔をしていて、何か言いかけたので慌ててしーっとジェスチャーした。娘が嫌いな父親と知り合いなんて知られたらレイはいじめられてしまうかもしれないと思ったからだった。レイはこくこく頷くとそのまま部屋に入っていった。


 制服は娘と同じだとは思っていたが、まさか友達だとは思わなかった。こんな偶然もあるのかと思ってるとレイからLINEが来た。


「まさか、長澤さんと雪人さんが親子だったなんて」


 こっちのセリフだよと思いながら俺も返信した。


「俺もびっくりした。でも、俺と知り合いって内緒にしたほうがいいよ。娘俺のこと大嫌いだからレイに迷惑かけちゃう。」


 レイからは了解とだけ来た。こんな偶然あるもんなんだなと俺はまだびっくりしていた。

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