第4話 別れ

泣き止むのと同時に恥ずかしさがこみあげてきた。


「ごめん、もう大丈夫だから」


そう声をかけると少女は離してくれた。心地よい温かさが離れていって少し残念だった。


「制服汚してごめんね、クリーニング代出すよ」


少女の制服は涙と鼻水でグチャグチャになってしまっていた。


「いえ、いいんですよ。気にしないでください」


そういうと少女は微笑んだ。もう俺にはこの少女が天使にしか見えなくなっていた。


ふと我に返って、時計を見ると9時半を過ぎていた。


「大変だ。帰らないと。紅茶とサンドイッチ美味しかった。ごちそうさま。」


荷物をまとめ玄関へ向おうとすると、袖をクイと引っ張られた。振り向くと、少女がまた俺の袖を掴んでいた。今度はしっかりと。


「そんな泣く程辛いのに帰るんですか?」


また必死に帰らせまいとしているように思えて、そんなに心配してくれているんだなとまた泣きそうになってしまった。


「大丈夫だよ。これが俺の人生なんだ。君と出会うまで何もしないで絶望したけど、君がこうやって慰めてくれたから、俺元気でたよ。何か変わるように努力してみる。本当にありがとう。」


 少女を安心させるために言ったけど、俺に何ができるんだろう。


「さあ、もう帰るね。ありがとう。また逢えたらいいね。」


 ドアを閉めるまで少女はうつむいたままだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る