朝の陽を浴びて…

権田 Q三郎

第1話 笑顔と恐怖の美容室

「起きろ!!」


 最近、朝なかなか起きれない私は、母の声で目覚めた。

 まだ眠っていたかったが、更にカーテンを開け…

「太陽を浴びろ!!」

 と私を起こした。


 味噌汁の香りに誘われ一階に降り、朝ご飯を、日差しの入るリビングで食べた。

 朝きちんと起きて食べる朝ご飯は、凄くおいしく感じた。

 気分も良くなり、もう一度眠ろうと思ったその時…

 美容院へ30分後に出かける母は、ついてくるように私に告げた。

 私は、あまり行きたくなかったが、「ブルちゃんが行くなら…」と言った。

 ブルちゃんとは、私の友達のブルドックのぬいぐるみのことだ。

 そして、ブルちゃんに問いかけた。

 すると、ブルちゃんが「行く。」と言うので仕方なく行くことにした。

 そういう話をしている間に20分前になっていた。

 急いで身支度をして家を出ようとしたら、なぜか一緒に行くはずのブルちゃんがいない…

 ブルちゃんを探すとリビングの座椅子に座っていた。

 私はブルちゃんを母の所に連れて行き、問いかけた。

「ブルちゃん行くんじゃないの?」

 そう言うと母は

「恥ずかしいからお留守番してなさい!!」

 とブルちゃんにすごい剣幕で言い放ったのである。

 私は、騙された気分になり悶々としながら家を出た…


 朝の陽ざしを浴びながら徒歩で向かった。

 口論していたせいで予約していた時間より5分遅れて到着…

 到着したのは、近所で噂のカリスマ美容師がいる美容室だった。


 扉を開けるとおやつを頬張った、カリスマがモグモグさせながら

「いらっしゃいませ」

 と口を押えながら言い、母を席へ案内した。

 母が席に座るとカラーを始める為、カラー剤を準備し、そして髪の毛に塗り始めた。

 その間3人で、井戸端会議のように様々な話をした。そうしてるうちにカラー剤が塗り終わった様で、カリスマは母に飲み物を聞き…そして、ご丁寧に付き添いの私にまで飲み物を聞いて、準備してくれた。

 母はカプチーノ。私はブラックコーヒー。

 私は、お客さんを大切にされている心優しい人だなと思った。いつの間にか悶々としていた気持ちが、コーヒーの香ばしい香りと共にスーっとどこかへ消えていった気がした。

 気分が良くなった私は、母の近くに行き、フッと顔を見た。


 因みに私の母は、肌が白く少し太っているせいか顔が丸い。更にファンデーションを塗るのでより一層白くなる。

 だから、最近私は母のことを大福と呼んでいる。


 話は戻り、母の頭を見るとカラー剤で髪がぺっちゃんこになり、ラップが巻かれていた。

 私はその瞬間スーっと背筋が凍る様な怖さを感じ、スマホを手に取り写真を撮影した。

その後も母はカプチーノを飲んだりお菓子を食べていた…。

 とにかく怖かったので父に撮影した写真を数枚と怖いというメッセージをラインで送信した。父からすぐ返信が返って来た。

「怖い…」と。

 やはり、私の目に間違えはなかった様だ。

 そこからの記憶は、恐怖の為あまりない…

 覚えているのは、自分の予約を入れたことくらいだ。

 我に返った私に「行くよ。」と母が言った。その顔を見るといつもの大福に戻っていた。

 少し不思議な気分になりながら次の目的地に向かう為店を出た。

 後ろを振り返るとカリスマが

「ありがとうございました。」

 と笑顔で見送ってくれていた。

 カリスマの笑顔の接客は素晴らしかったが、その半面この美容院ではある生物に遭遇できる事を知った。


 ある生物とは、某ジブリ映画に出てくるカオナシだ。


 そう、私と父の目には母がカオナシに見えていたのだった…

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