第188話 竜の棲家の赤き王

 そのカリフォルニアにある僻地には、人工物がほとんどない。

 岩山も乱立し、緑もそう多くないその地域には、野生動物が多く生息している。キャンプでもしたら気分は良いだろうが、翌日になってみればサバイバルに変わってしまうような環境だ。

 日差しは強い。ただ、夜になったらどうなるのか――まあ、砂漠ではないのだ、凍えてしまうほどではないだろう。

 そこに二人。

 グレッグ・エレガットと北上きたかみ響生ひびきがいた。

 お互いに軽装のまま、いつものようナイフと拳銃くらいの装備しかない。よう、なんて軽い挨拶をしてすぐ、足を進める。

「二日くらいで済ませようぜ、ケイミィ」

「同感だ。俺はしばらく戻ってないが、宿舎には?」

「えっちゃんがいるから、僕はそれなりに顔を見せてるよ。最近はちょっと傭兵関係に探りを入れてるけど」

「あっちは今、キナ臭いだろ」

「まあね。だから踏み込んではいない。僕は傭兵じゃないからね」

「領分を弁えろ、か。それも中尉殿に言われたな」

「あの人の言葉は理解できるんだけど、それを切実なものとして教訓を得られるのは、現場に入ってからだよな」

「何度も助けられてる。――で、この仕事はどっちだと思う?」

「僕の感覚で言えば、たぶんプレイベイトの依頼だと思うよ。軍の領分からは離れてるし、上から降りてきたなら、人選がこうはならない」

 なるほどなと言いながら、北上は煙草に火を点けた。

「確かに、戦闘面での話をするなら、戦力として俺らが一番下だ」

「同感だね。軍曹殿はもちろん、トゥエルブや赤毛ちゃんジンジャーの方がよっぽど戦力になる」

「新人もな」

「ルゥイも、単一火力としちゃ充分すぎる」

「中尉殿だって1キロ範囲くらいなら余裕で把握するぜ?」

「あの人は参考にならんって……」

「だがグレッグ、どっちか一つなら一人で充分だ」

「まあな。敵を全滅させろってオーダーでも、やりようはある。準備時間がいくら少ないからって、できないってことはないよな。もちろん、要人の救出だって、もっとシンプルだ」

「バランスだな。二人じゃ過剰戦力だが、一人じゃちょっと足りない」

「訓練不足だ、底上げしないとな、ケイミィ」

「まったくだ。しかし相手が、プライドの高いトカゲとはな」

「どうする?」

「どうするって――ああ、そういや僕たち、書類上でしかお互いのやり方を知らないね。中尉殿からのオーダーは?」

「せいぜい暴れろってさ」

「なら決まりだ」

「おう」

 正面からノックして、堂堂どうどうと中に入ればいい。

「でも、僕とお前で違うとこ、なんかあるか?」

「お互いに似たような方法だろ。ただ念のため、一割くらいは残していいって話に関しては、どうするか考えた方がいいかもな」

「そうかあ? 相手がどうであれ、覚悟はしてるだろ。老若男女容赦なし」

「それは戦場での流儀だ」

「今から行く場所が違うって?」

「戦場にしちまうのが、俺らだろ」

「んー、でもなあ、あえて暴れろってオーダーを入れる中尉殿の言葉を考えてみれば、相当に性格が悪い相手だ」

「だから、念のためだ」

「…………おう」

 少し考えたグレッグも煙草に火を点けたが、ちらりと北上を見て、頭を掻く。

「一つある、懸念だ」

「あ?」

「――間違えて赤色を殺しちまったらどうする」

 それを聞いた北上は何かを言おうとして、口を閉じ、思い出したように短い煙草を吸って、大きく紫煙を吐き出し、それから首を傾げて、頷きを一つ。

「おう、お互いに気を付けようぜ」

「マジでそれな」

 情報で得ていることと、現場は違うものだと彼らはよく知っている。竜族がどんな存在であっても、現場で見るのは初めてだし、白色と赤色の区別がつくとは限らない。


 世間話をしながら三十分ほど、歩いた。


「んー……」

 グレッグは一度、空を見上げ、それからぐるりと周囲を見渡した。

「狙撃し放題だな」

「衛星からもな。つまり中尉殿は、特に隠す必要がねえって思ってるんだろ」

「それもあるけど、逆にそこが僕らに投げられた理由かもな」

「――中尉殿自身が、目立ちたくなかったってか? 今さら?」

「たぶんね。じゃあ行くか、ケイミィ」

「おう」

 大きく見れば岩場だが、それなりに周囲は開けているそこに、足を一歩踏み入れる。

 自然を利用した集落が、そこにはあった。

「どのくらいいるんだろうな」

「俺はざっと二百くらい見積もってる」

 そのくらいが丁度良いかもなと言っているうちに、二人の男が近づいてきた。

 やはり想定通り、人型での生活を主軸にしているようだ。空を飛ぶにしても、夜間など制限を設けているはず。そのくらいが最低限の配慮だ。

「人間が何用だ」

「ここを仕切ってるやつに逢いたいから、案内してくれ」

「……?」

 二人は顔を見合わせ、片方は首を横に振った。

「そんな話は聞いていない、帰れ」

「そういうわけにはいかねえんだよなあ」

「――帰れ。これ以上は実力行使になる」

「こっちの話を聞く気はないって?」

 にやにやと笑いながら、北上は言う。

「じゃ、しょうがねえ」

 こっちも聞く気はないなと、そう放った言葉は相手に届かなかった。何故なら、その時点で首が落ちていたからだ。

「さて、とりあえずでけえ建物に向かうか」

「そうするか」

 面倒だと思ったので、周囲に音を遮断する膜を張っておく。

「魔力だけはすげえな、竜族」

「まあな」

「僕らだと、誰になる?」

「たぶん、一番はシシリッテだな」

「ジンジャー? あーそうか、あいつの残影シェイドは、自分の複製だもんな。いくら軽量化しても、魔力消費量は多いか。あいつ五人くらいはいけるとか言ってたし」

「次は、ハコだな」

「ハコかあ……ん? そういやあいつ、僕はあんま逢ってないんだけど、何してんだ?」

 近づいてくる竜族の首がぼとぼと落ちているが、気にせずに歩く。ちなみにやっているのは北上で、切断と呼ばれる現象そのものを属性として捉え、それを首に張り付けている。

 属性付加エンチャント

 使い方としては、一般的とは言わないにせよ、そう難しくない方法だ。

「グレッグ、お前次に逢ったらハコに感謝しとけよ? あいつがやってんのは、事務が多い。俺らの後始末、尻ぬぐい、折衝、交渉、どれもこれもハコの仕事だ」

「マジかよ、僕がやったら三日で嫌になるあれをやってんのか……何か美味いもんでも手土産にしたい気分だ」

「そうしてやれ。ちょっと広域探査グランドサーチかけるぜ」

「おう」

 軽い魔力波動シグナルと共に、何かが広がっていく。それにとしたグレッグは、小さな違和と共に、情報を共有した。

「地下があるな、そっち怪しい反応だ――けど、ケイミィこれなにやってんだ?」

「なにって」

「いや、僕はプレス魔術特性センスだから、威圧、空圧、圧縮と何でもござれ、広域探査だって空気を掴む感覚でやるけど、お前のこれなんか違うだろ」

「考え方はお前と同じだ。俺の属性付加ってのは、上書きじゃない」

「そりゃ付加なんだから、文字通り付け加えるんだろ」

「じゃ、一体何に付け加えてるんだと、考えたわけだ。俺はそれをクウと仮定した」

「あー、つまり、付加できる最小単位での、いわゆる無色ってやつか」

「それを掴んでる。俺にとっては一番身近な、付加可能な素材だからな」

「なるほどねえ」

「じゃ、挨拶は任せた。出迎えは俺が行くぜ」

「おう、適当に隠形術式インヴィジブルを改良しとくから、そっちで上乗せしといてくれ」

 もともとこの場所に使われている、目隠しの術式はある種の結界だ。その範囲を強化してしまえば、簡単な囲いを作れるが、逃走防止としてはあまり効果的ではないだろう。なにしろ相手は、竜族なのだから。

 さてと、北上は走る。そもそも仕事中に、のんびり歩いている方がどうかしてるし、要救助者がいるのならば、とっとと確保してやった方が楽だ。

 この集落は、それなりに広い。北上が思い出したのは、日本の歴史であり、いわゆる江戸時代と呼ばれる頃の風景だ。時代劇などでもよく見られる光景で、それに近い雰囲気がある。さすがに石は多いものの、建造物として利用できるような性質ではなかったらしい。ほとんどが木造の平屋になっていた、


 ――無抵抗の相手を殺害するのに、罪悪感を抱かなくなった。


 悪い兆候だが、これも仕事だ。話し合いで解決しようとしたって、それができないのは目に見えているし、相手はこちらを嫌っているのだから、解決を早めたと思って欲しい。

 竜族のプライドというのは、そんな短絡的な結論に跳びつきたくなるほど、厄介なものなのだ。

 だから容赦はしない。

 北上は知っている。戦場で生み出された相手への情は、生まれたぶんだけ己の命を削るのだと。

 ただし。

 そんな自分が正義だなんてことを、主張してはならない。

 何だろうが殺しをしている以上、罪であることに変わりはないのだから。


 しばらく走って、露店に屋根だけ設置されたような場所から、地下へ。さすがに出入口を塞がれると面倒になるが、それがわかっていれば対処もできると、足を一度だけ止めて確認と、罠の配置だけしてから、中へ入った。

 土を固め、石を組み合わせた階段を降りれば、湿度の上昇と共に気温が下がる。

 その地下は、牢屋というよりも、小さな隔離部屋のようになっていた。

「誰だ? 飯の時間じゃないだろー」

「おう」

 ああ、見ればすぐわかる。

 赤色の瞳、そして隠していない尻尾は、赤色の鱗。見た目はまだ十代の、小柄な少女だった。

「お前が赤の竜族か。名前は?」

珠都たまつ

「俺は北上だ。赤色の王ときたか、じゃあギョクだな」

「珍しいなー、よく人間が入ってこれたな。あいつら、病的なまでに嫌うだろ」

「まあ、な。そういうお前は、ここで何してんだ」

「名目としては、保護された感じだなー。戦場をうろついてて、安全が欲しかったから、その流れでここに来た」

「戦場で、ねえ……」

 そんなものかと、北上は頭を掻く。まだ幼いのだ、作戦行動をしていたのではなく、あくまでも紛れて、隠れて、生活をしていたのだろう。身を隠すのにはもってこいだ、安全性を度外視した上での話だが。

「まあいいか。出てこいギョク」

「あ? つーか、お前は何しに来たんだ? よくわかってないぞ、説明してくれ」

「出ればわかる。まあ一応、お前の確保が目的だ。どこからの仕事かは知らないが、お前の境遇に同情でもしたんだろ」

「へえ……確かに、こんな生活に満足はしてなかったけどなー。あいつらが納得するとは思えないぞ。プライドばっか高いから、保護してやってるって事情を捨てるとは思えない」

 だろうなと、北上は笑う。

「誰かを見下してる連中は、人間だって同じさ。そういう盲目な連中に現実ってやつを教えるのが、俺らの仕事だな。まったく面倒だ」

 そうして。

 珠都は外に出て、現実を知る。

「――え?」

 そこは。

「な、何が起きてるんだ?」

「何って、知らないのか? ここは戦場だぜ、ギョク」

 屍体がごろごろ転がっている。人型のものが多いが、竜化した尻尾や、翼が家屋を壊して落ちているのもあった。

「あ、おい!」

「なんだ?」

 白色の竜が姿を見せれば、二人がいる場所は陽光が届かない影に入る。けれど、それでも周囲が明るくなるなら、口からブレスを吐く用意だ。

 だが。

「いいからこっちに来い、遊んでる馬鹿がいるからな」

 上空から放たれたブレスは、何かに当たって内部には届かず、自分が出した炎を嫌がるよう竜は旋回行動に入った。

 そして、そのまま旋回先で大きな壁にぶつかったよう動きを止め、北上が向かう先に墜落したので、ナイフを振って首を落とす。

 切断、という属性を付加させた斬戟だ。上手くやれば、竜の鱗くらいは簡単に切断できる――いや。

 上手くも、簡単も、間違いか。

 ただ、切断できるようになるまで、北上が今まで訓練してきただけだ。

「竜のブレスってのは思ってた通り、術式だな」

「……冗談か? なあ、なあ、竜族がこんな簡単にやられないよな? な?」

「現実を見ろよギョク、お前大丈夫か?」

「大丈夫じゃないけどな!」

 こうも気軽に同族がぽんぽん死んでいる様子を見て、平然としている方がおかしいのだ。

「なにしてるんだ、これ」

「ただの仕事……おう、グレッグ」

「よーう、そいつが赤色か? ちっこいなあ。僕はグレッグだ、よろしくな」

「こいつはギョクだ」

「ギョク?」

「日本語で、キングって意味だ」

「ああー、赤色の、へえ、どうでもいいや。でも丁度良かった。なあギョク、僕は竜の言語ってのがよくわからないんだが、さっきからこいつが何か言ってるんだけど、通訳してくれ。一応、ここのお偉いさんらしい」

「…………」

 その男は、片腕を落とされ、片足がなくて、地面に転がったまま何かを言っている。

 恨み事だ。

 しかも共通言語イングリッシュを使っている。

「ま、聞いても聞かなくても同じだろ。どうせ、引きこもってるんだから放っておいてくれ、なんて一方的な言い訳だぜ」

「だよなあ。外交もしない、する気もない、他人を除外するだけの一方的なわがままを続けてたんだろ? そりゃ攻められて滅ぼされても、文句を言える立場じゃないよな」

 いくら、武力行使を一度もしたことがなくたって、それは言い訳でしかない。

 他人の排除を続けてきたのは、彼らだ。迎え入れ、話し合い、交渉し、領分を弁えた自治をしていたのなら、グレッグや北上がやったのは侵略だろうけれど。

 こうなることを想像もせず、現状に甘んじて、何もしなかったのは彼らだ。他人の目に傲慢であると映ることさえ、想像しなかった。

「ギョク、こいつこのままだと生き残るか?」

「え、あ、――たぶん、生きるぞ」

「あ、そう。タフだねえ」

 目の前で、男の頭部が凝縮されるよう小さくなって、消えた。

 圧縮だ。

「何匹か竜化を待って遊んだけど、大したことはねえな。ブレスも簡単な式だったよ、ありゃ妨害ジャミングでいける」

「じゃあ脅威になるのは何だって話だな」

「そりゃお前、飛翔するのにも術式を使っちゃいるが、背中を向けて逃げられるのが一番面倒だろ。僕やケイミィが改良した結界だって、十五分もあれば改良しちまう」

「十五分? おいグレッグ、そりゃ見通しが甘くないか?」

「その程度の相手だよ、こいつら。というわけで、ちょっと暴れてくるから、頼んだよケイミィ」

「あ?」

「ハコじゃないにせよ、後始末は頼む」

「お前なあ、面倒なことを俺に投げるなよ。しかもこいつの世話は俺任せか。まあいい、きっちり片付けろ」

「おーう」

 行くぞギョク、そう短く言って徒歩移動を開始した。

「ところでギョク」

「あ、おう、なんだ?」

「お前、竜族の尻尾を食べたことあるか?」

「ないぞ!?」

「どうせ暇だ、ちょっとしたバーベキューでもしようぜ。そこらへんに転がってる尻尾の血抜きしてからな」

 冗談だと思ったら、入り口付近の屍体が転がっている場所で、石を組み始めた。どうやら本気らしく、また、手早い。

「本当に食べるんだな……」

「トカゲの尻尾と同じだろ? それほど繊細じゃないからな」

「なんなんだ、お前らは」

「ん? 俺らは犬って呼ばれてる。今回の仕事は白トカゲの九割殲滅と、お前の保護ってところだ。安心しろ、しばらく俺が戦場を連れまわしてやるよ」

「げ……なんでだ」

「そりゃ俺の仕事がそういうものだから」

 なんだそれはと思うが、どうやら安全は確保されているようだ。先のことがわからないのは、今までも同じだった。

「どうとでもなるかー」

 珠都はよく、そういう気楽な判断をする。ただし、身の危険が感じられる時は、判断する前に逃げるけれど。

 さてと、薄く輪切りにした尻尾を、どこからか取り出した鉄板の上に乗せた時、北上はポケットから携帯端末を取り出し、スピーカーにして珠都の見える位置に置いた。

「おう」

 何故だと、珠都は首を傾げる。振動していた様子はなかったし、もちろん音も立たなかった。

『終わってるわね?』

「ハコか、お疲れさん。今は尻尾を焼いてるところ。とりあえず塩かな」

『味も報告書に記しておくこと。後始末に魔術師協会から数人が行くから、おきなさい。それで仕事は終わり』

「あー、竜の素材って触媒メディアとかで使うんだっけか」

『らしいわね。で、どっちがお守りをするの?』

「グレッグは俺に押し付けて、暴れるだけ暴れてそのまま行くみたいだな。中尉殿からは、適当に戦場を連れまわして、引き取り手が落ち着いたら連絡するって聞いてるけど」

『それでいいでしょ。あんたもたまには宿舎に戻りなさい』

「ギョクが疲れたら、一度そっちに行く――ん? 宿舎にいるのか?」

『しばらくは』

「諒解だ」

 そこで通話は切れた。

「ってことだギョク」

「どういうことか、よくわからん! 電話先の人も、犬ってやつか?」

「おう、俺らは部隊だからな。珍しいから覚えとけ、俺らが単独以外の仕事をするってのはレアケースだ」

「ふうん……」

 もちろん、この時の珠都はその言葉の重みを知らない。ただこれから先、おおよそ半年の期間で嫌というほど知る。

「魔術師が後始末かあ」

「おう、面倒はほかに投げておけばいいさ。どうせ十人くらいでやってきて、俺らに対して術式で探りを入れる馬鹿がいるから、そいつを見せしめにして、手を出すとどうなるかってのを教えておく。さすがに本職の魔術師に対して、術式で勝つには、正攻法じゃまずいからな」

「――負けるのか?」

「あのな、俺らより強い連中なんて山ほどいるんだぜ? けど、そういうやつらも、油断すりゃすぐ死ぬ。相手が戦場慣れしてる魔術師だとしても、たった一人を相手に負けるとは考えてねえはずだ。それが隙になる。――ま、実際にできなくても、それなりの印象は与えておくのが俺らの流儀だ」

 そろそろかと、塩で味付けした竜の尻尾を、ナイフで小さく切って口に入れた北上は、眉根を寄せた。

「……タイヤを喰ってるみてえな触感だな、こりゃ。さすがに家畜と比較するもんじゃねえが、まあ、喰えなくもないか。どうするギョク、喰ってみるか? それとも口に押し込まれたいか?」

「どっちも同じだ!」

 しぶしぶ手を伸ばし、口に入れた珠都は、やっぱり嫌そうな顔のまま、同じ感想を言った。

 ちなみに。

 魔術師は十三人やってきて、その中の一人が術式の手を伸ばし、北上が常時展開リアルタイムセルしている術式に引っかかって、その繋がりから完全制圧。

 ただ相手も馬鹿ではなかったようで、すぐに頭を下げて謝罪したため、北上は手にしていたナイフを腰の鞘に戻した。

 そして、犬は次の仕事にとりかかる。

 初めてにして、これが最後となるだろう、二人も投入された現場は、これにて幕を閉じた。


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