第107話 フライングボード

 四国の南海上に存在するギガフロートには、もちろん四国から入る必要がある。この、日本を経由して、という点がのちに障害へ繋がる可能性もあるが、そのあたりは政治部門の櫻井に努力してもらうしかない。

 貨物用のモノレールに乗り込んだのは、ざっと二十人。

 車両を別にして、荷物と一緒に移動しているため、それぞれ少人数になるのは当然だが、どうにも乗り心地は良くない。速度重視で、コンテナは緩衝材があるから良いだろうけれど、人を乗せるよう対応させていないのだ。

 今までは、人が行き来する場合はほとんど船でやっていた。何しろ、立ち入れるのは運輸関係者と、――特殊な立場の人間だけだったから。

 軍のジープほどじゃない、なんてファーボットは思うし、大して気にならないが、現在乗っているのは一般人がほとんどだ。

 寝れるくらいには快適に感じるのは、慣れと、これ以上に過酷な環境に身を置いているからだろう。

 到着してからも、荷物搬入口から迂回するよう、まだ仮設ではあるものの、空港の入り口のような場所へ。


 ――この感覚を口にするのは、難しい。


 背筋が凍り付く、背中に嫌な汗を流す。肌がざわつく、足元が冷える――そういうものでは、ない。

 たとえるならこれは、深海を一人で散歩しているような感覚だ。

 威圧がある。

 意識しなければすぐ消えるし、一般人が気づくほどではないにせよ、一度でもそれを意識してしまえば、間違いなくそこに存在していることがわかるような、威圧感。

 ここにいるぞと、誰かに対して示しているわけではない。

 ただここにいるだけ、そういう存在モノだ。


 小さく息を吐いて、意識から除外しておく。存在はかなり地下だ、こちらから踏み込む理由もなければ、やりたいとも思わない。

 とりあえずは、今の問題だ。


 広いエントランスに人が集まりだしたので、荷物を持って外へ出るよう指示しながら、先に表へ出ると同時に、アイウェアをつけた。

 まだ工事中だ。

 あちこちから音がするし、材料が積み重なっている。ぱっと見ても、街という輪郭がようやく見えてきたという感じだった。

「よーし、全員注目しろ。事前説明にあったと思うが、口外厳禁だ。殺しに行くのは面倒だから守れ。酒に酔った時でも問題ないようにするコツは、とっとと忘れることだ。覚えてなけりゃ、口にすることもない」

 さて。

「まず、自転車組。これから外周道路、つまりこの道を走ってもらうことになる。基本的には平坦だ。GPSは機能するが、マップに記録はされない。こちらからの要求は、走行データの提出と、感想だけでいいから、好きに走ってくれ。楽しむぶんには構わないが、事故クラッシュには気を付けろ。何しろ病院までは遠いし、海に落ちると面倒だ。それと、歩行者がいることも頭に入れておいてくれ。休憩も忘れるな」

 以上だと手を叩き、遊んで来いとファーボットは言う。自転車組は七名、まずは着替えをしたいらしく、中へ戻っていった。補給食も忘れるなと、付け加えておく。

「次、徒歩組。内部は工事中だ、立ち入るな。散歩するでもよし、走るのもよし。だが撮影は許可しない。この外周もそうだが、歩行者専用通路をどの程度の規模で作るか、その情報が欲しい。それ以外は特にないから、まあ、楽しんでくれ。以上だ」

 徒歩組は五名。お互いに顔を見合わせたものの、右回りと左回りに別れて、のんびり歩き始める。走るのは後回しらしい。

 一応、自転車もそうだが、元プロ選手を二名ほど入れている。いわゆる陸上競技と、自転車競技だ。それなりに楽しめるならば良いが。

 自転車組も準備を終えて、軽い挨拶と共に走り出したのを見送って、残りの四名には天幕の設営をさせておく。まだ若い、現役軍人だ、このくらいの作業はお手の物だろう。

「おう、部隊長は誰だ」

「俺だ」

「じゃあお前が、ケイオス・フラックリンか」

「そうだが、今の俺はただの曹長だ。そのつもりでいてくれ」

「ん? 部下だって知ってるだろう?」

「話してねえよ……」

 まだ訓練校から出てきたばかりで、現地への派遣を待っている状態の部下が三名。女性二人、男性が二人の組み合わせだ。

「設営が終わったら言ってくれ、煙草を吸ってくる」

「おう」

 一度中へ入れば、既に技術屋の二人があれこれ用意をしていた。今回は、こっちが本命だ。

 隅にある喫煙所には、少年が一人。

「よう」

 声をかけられ、おうと応えながら煙草に火を点けた。

「お前がベルか」

「そうだ。よくやってるよネガティ、報酬はいるか?」

「今のところ金には困ってねえよ」

 エイジェイの同期であり、聞けば大元はベルが受けた仕事らしい。連続昇級記録も樹立しており、かなり有名になってきた同業者だ。

「進捗はデータでしか見てなかったからな。たまたま暇だったんで来ただけだ。俺としてはアブに投げたから、口出しするつもりはない」

「アブ?」

「知らないのか? 〈唯一無二の志アブソリュートジャスティス〉って狩人名なんだよ、あいつ」

「ああ、頭を取ってエイジェイか」

「気に入らなかったんだろうさ。イヅナも気にしてたから、そのうち顔を見せるだろう。それと、櫻井だったか? あれに二村を紹介しておいた」

「隠居してる方か」

「もちろんだ。東京壊滅から日本を持ち直した野郎だ、それなりに助言もできるだろ」

「助かる」

「……で、お前はまだ隠居を考えてるのか」

「考えるのは終わった、俺は引退する」

「まあ、年齢の方が問題か。それと引き継ぐ相手もいないんじゃないか?」

「お前がやるような仕事を抱えちゃいねえよ」

「そうか?」

「お前やエイジェイは、他人が持ってる領域も一緒に食ってるから、同業者はだいぶ助かってるけどな。特にお前は日本国内だが」

「野雨が俺のベースだ。それなりに活動しやすいだろ」

「まあ、な」

 二十三時以降の外出禁止令があるからこそ、日中の安全は確保されているし、狩人にとっても夜間の行動が気楽にやれるので、随分と過ごしやすい場所だと思っている。

 おそらくこれからも、日中の犯罪を潰しながら、暗黙の諒解と呼ばれるものを作っていくのだろう。

「こっちは休息日のつもりで来たから、あまり気にするなよ」

「そのつもりだ」

「――おい、クレイ。運搬を手伝え」

「今行く」

 芹沢機業開発課の主任をしている二村双海。そして、もう一人の女性が籠目りつき。彼女たちが今回呼んだ技術屋だ。

 運ぶのは、スノーボードで使われるようなボードである。車輪はついておらず、おおよそ1メートルほどの長さだ。五つも抱えれば、それなりの重量がある。

 設置され始めた天幕の下にテーブルを置き、ほかの工具を二人が運んできて置く。

「よしガキども、整列しろ」

 言ったのは二村双海だ。ファーボットは二人とも顔見知りで、というのも、野雨で過ごしていて、開発課に顔を出さないことはないし、そうすれば自然と顔くらい覚える。

「クレイ、配布」

「おう」

 厚さはそれなりにある。ボードの下に何かの基盤でも埋め込まれているのか、おおよそ10センチ弱くらい。それを一人ずつ手渡すが、彼らは小銃のよう片腕で抱えた。

 躾がよくできている。

 普通ならば、渡されたそれに視線を落とし、あれこれ見たがるものだ。

「よーし、お前ら間抜けにもわかりやすいように説明してやる。やや尖っている方が前、そうじゃない方が後ろだ。地面に置いて、上に乗って、後ろ側の表面についているスイッチを入れろ。その後、前に踏み込めば進んで、後ろを踏めば止まる。――質問はあるか」

「最高速度の設定は?」

 迷わず問いかけたのがケイオスである。

「今のところ40だ。ああ、時速キロメートルだ。一応、マニュアルも用意してあるが、まずは乗れ。話はそれからだ」

「わかった。――行動を開始しろ。多少ははめを外しても構わないが、ほどほどにな」

「諒解であります」

 ふうんと言いながら、すぐ乗り始めた連中を横目に、ケイオスは裏側を見て、手に持ったまま電源を入れ、何も反応しないことを確認してから、スイッチを切る。

 そして、部下の三名がそれぞれのタイミングで移動を開始したのを見送った。バランスを崩すこともなく、5センチほど地面から浮き上がり、外周をそのまま移動している。

 音は、ほとんどない。

「なあ、おい、ちょっと」

「なんだガキ、お前も遊んだらどうだ?」

「性能チェックなら後でいくらでもやってやる。つーかこれ、魔術式が内臓されてるだろ」

「当たり前のことを聞くな、間抜け。現代技術だけで成立できるものじゃないだろうが」

「いや……」

「流通やらなにやら、お前が考える必要はない。とっとと行け、こっちはデータを取るのが仕事だ。わかったか?」

「……諒解だ」

 ケイオスもそう言って、走り出した。

「なかなか良い着眼点じゃないか、あの小僧。クレイの知り合いか?」

「一方的にな。なかなか賢いだろう」

「あのくらいなら当然だ」

 厳しい物言いだが、技術屋以外の交流相手が狩人や魔術師ならば、そう思うのも仕方がない。

 しかしと、ファーボットは残っているボードに軽く手を触れた。

「今回の調整は全般か?」

「ああ、あくまでも調整だ」

「試走は初めてだけどねー」

「うるせえよカゴ、安全装置は組み込んだじゃないか」

「双海ちゃんはそのあたり乱暴だからなあ……」

「詳細は?」

「はあい。大きくはスピード、バランス、セイフティの三つで構成されてるの。まずはスピード、ここも二つに分けられる。停止はセイフティに入れるとして、加速と巡航」

「踏めば加速して、一定速度で巡航に移るのか。ということは、巡航に入ったあとで加速も可能だな? 速度差はどうなってる」

「そのあたりは調整可能ね。基本的には、巡航40キロメートル、加速は10キロメートルを基準にしてる」

「つまり、巡航中に停止を入れてからの加速で、40オーバーできるな。仕組み上、おそらくそのまま維持したら、理論値50で移動できるだろ」

「はい正解。ただし、風圧関係の制御があるから、実際には40出るかどうかが問題になるかもね」

「次を」

「次はバランスね。こっちは術式と電子制御の両方で、簡単に言うと身体の固定。これも設定で緩くしたり、強くしたりできるけど、基本的にボードそのものが地面を認識する以上、一般的な行動では倒れることがない」

「緩くしたら、揺れ幅が大きくなるとの認識で構わないか?」

「はいそれ、間違いない。ともかく転ばないことが第一で、子供から老人まで使えるようにするのが目的。アタッチメントとして、足の固定具や小さな椅子みたいなのも考えてるけど、今はまだ立つことを前提にしてるから、椅子はどうかな、見送りになる可能性もある」

「荷物置きとしては使えないのか?」

「使えない。人体反応――人の持っている、自覚無自覚を除外した、魔力そのものの感知と、外界における自然の魔力の両方を利用してるから」

「妥当だな。セイフティはどうなってる」

「そっちはね、いろいろ優先度を調整中なんだけど、まずは障害物に当たらないこと。相対速度にもよるけど、障害物に当たる前に停止するか、避ける」

「速度が出過ぎている場合、減速と回避になるが、そう速くなければ停止に誘導するのか」

「はい正解。だからボードに乗っているお互いが触れあおうとしても、手を伸ばした時点で離れる」

「…………」

 そうかと呟いたファーボットは、禿頭を撫でてから、しばらく無言のまま思考をめぐらす。

 そして。

「――ベル、聞いていたな?」

「ああ」

「予備はあるか?」

「へ?」

「カゴ、持って来い。ここに一つあるから、もう一つ追加だ」

「あ、はーい」

「セッティングは?」

「ベル」

「バランサーは最低設定にしてくれ。それと加速も調整できるだろ、重心移動で動くくらいタイトに。可能ならバランサーなんて、なくてもいい」

「悪いが現状の設定じゃ無理だな。最低設定にはしておく。速度は?」

「そのままでいい」

「おいベル、俺はお前と違って若くない」

「それじゃ笑いは取れねえな」

 事実なのだが、かといって自分だけ30に設定しろとは言えない。


 二台の設定が終わる頃、外周を走り終えたボード組が帰ってきたので、一度呼び寄せた。


「ケイオス、感想は?」

「まあ、楽だな」

「結構。俺とベルが先導して、一周するからついて来い。ああいや、お前らは気にせずに乗ってりゃそれでいいか。こっちは設定で、加速を重心移動で可能にして、バランサーそのものを少し緩くしてある。違いはそれだけだ」

 それだけ、とはいえ。

 スタートでファーボットとベルは、一気に抜け出した。

 加速するのならば、それを連続して入れれば、トップスピードまでの距離は短くなる。だからといって、ケイオスたちが見失うほど離れはしない。

 二人は、お互いに先頭を交代する。これは確認だ。ロードレースと同じく、先頭は風圧を受けやすく、後ろは空気抵抗が少ない。その差は、多少なりともある。

 風圧軽減はおそらく術式の領分だろうが、40キロ近くになると、姿勢を低くしなければ辛くなる。ベルは乗りながら、懐からアイウェアを取り出してつけていた。

 少し速度を落とし、後ろを待って。

 お互いにぎりぎりまで近づく。

「ベル、前へ行けるか?」

「たぶんな」

「なら俺は後ろだ」

 ほぼ同時に、深く躰を沈めた二人は、そのままふわりと空中に浮いた。

 後方宙返り。

 それほど大きな弧を描く必要はない。最低限、最小限、落下することなく四人の後ろに着地したファーボットとは違い、ベルは空中でひねりを入れると、上空で直立するような停止を入れ、そのまま加速と落下を重ね合わせて前へ移動した。

 ボードが地面を認識しているのならば、空中そのものを地面として認識させてやればいい。しゃがみ、ボードを押し付けるよう力を入れながら、空中でも外側、つまりボードを押すようにして、下を認識させれば、空中移動も短時間なら可能だ。

 予想通り、である。

「おい!?」

 驚きの声は無視して、加速しながら近づき、今度はボードに乗っている相手に向かって、水平移動をしてみるが、すぐ安全装置が働いた。しかし、停止ではなく減速を選択したため、元に戻ればすぐ加速が入る。

 つまり――。

 30キロ以上で移動中、ボードに乗っている相手を地面だと認識させた場合、その直後にボードは退、と勘違いすることになったわけだ。しかし、直前の記録から速度を算出した時に、おかしいと、その差異を認識して、停止ではなく減速になった。

 差異の認識。

 おそらくそれが穴になっているんだろうなと、ファーボットは苦笑する。

 軍部四人の間をすり抜けるのは面倒だったので、外周の手すりを足場にするよう一気に抜き、先頭へ。

「障害物の設定が明確だな」

「ああ、少なくともボードの裏面で当てれば、障害物にはならない」

「ただ、設定そのものも曖昧ではある。空中で停止した時に感じただろう」

「宙に浮くことは想定されてないからな。もっとも、そういうデータが必要だから、こうして実地試験をやってるわけだ――ネガティ、試すぞ」

「おう」

 まず、ベルはボードを真横に曲げた。進行方向の急激な変化に、ボード側はやはり緊急停止ではなく、減速を選択する。これは何故かというと、停止というのは緊急時であっても、二次災害を引き起こしやすいからだ。バランサー側で制御することも可能だろうが、乗っている人体への影響はある。

 実際に、後方宙返りをした時には、それなりの負荷があった。

 ただ今回の場合は、減速と同時に、バランサーが方向転換を要求する。つまり、急激すぎた変化に、少し前の状態に戻ろうという意識だが、ベルはそれを助けつつも、加速と減速を二度ほど連続させるようにしつつ、裏面をファーボットへ向けようとした動き。

 ――その瞬間。

 こつりと、お互いのボードが当たる音が聞こえた。

 ファーボットが、速度を合わせるため、減速を入れたタイミングでのことだ。本来なら安全装置が働き、手を伸ばしても届かないよう設計されているのにも関わらず、その動きの隙間を縫った。

 そして。

 お互いのバランサーが、お互いを遠ざけようとして、勢いよく弾かれるよう二人は大きく距離を取った。

 吐息を一つ。

 一周が終わったので、そこで二人は降りた。あとは残った四人が、こちらの動きを見て、あれこれ試行錯誤するだろう。

「戻ったか、とっととボードを寄越せ。ったく、回線が通ってない場所は面倒だな」

 電源が切ってあるのを確認して、ドライバーを使って一部の蓋を外してから、中にあるカードを引き抜く。

 すぐに端末で読み取った籠目が、驚いたよう目を丸くした。

「うっそだあ……」

「あ? ああ、想定内だ。このくらい無茶な動きは、できるものだって前提条件なんだよ」

「それは知ってます。じゃなくて、理論値でしょ。実際にやるとは思ってなかったから」

「乗ってみた感想はどうだ?」

「任せたネガティ、俺は煙草だ」

「そうだな、汎用型にするなら、まだ時間がかかるだろう。移動だけに絞るなら、曲芸ができないよう制限しちまえばいい」

「お前、それが技術屋にとって禁句だってわかってんのか?」

「急ぐならば、と言っているだろう。加えて、プレイヤーができるかどうかの方が問題になる。理屈は単純だが、あとは軍人連中がどの程度になるのかを見た方が早いな」

「確かにな」

「それと、最後の方のデータにあるベルの動きに関しては、制限を入れるかどうか、曖昧な部分だ。一応こっちは、システムの穴を衝いたかたちだから、封鎖しておいても良いんだが」

「カゴ」

「あーはいはい、安全装置の隙間を抜いたみたい。この接触ログ、ボード同士かな。すぐ当たって弾かれてるけど、衝撃はどうだった?」

「予測して身構えたから問題ないが、その際に閉所だとかなり危険だろう」

「あー、閉所か、うん、システム担当に送っておく。制御するにしても、この条件だと結構危ないね。あーそっか、回線がないや」

「あとでベルに衛星経由のラインを貸してもらえ。どうだ、若い連中も含めて、移動道具として使えそうか?」

「世間一般で言うところの、自転車くらいには利便性がある前提だ。問題点は荷物の所持、そいつは午後からでもやらせるつもり――だが、こっちはこっちの仕事をする。だからそっちは、渋滞が起きないよう、徒歩でも活動可能な街づくりをしろ」

「道理だな。実際、俺たちが仕事をするとして、ボードを足に使おうとは思わない」

「だろうよ。ただ、人集めの材料として、多少は遊べる代物には仕上げるさ。どっちにしても、一般道を走れるようにはならない」

「可能性としては、場所を区切っての使用か。それもかなり先の話だな……」

 ほどほどに休めと言って、ファーボットも中へ入って喫煙所へ。

 ベルと合流して、紫煙を吐き出す。

「気にするな――って言っても、無理か」

「いるのは、聞いている」

「何が、とは聞いちゃいねえだろ。吸ったら表へ出て来い、工事の進捗を見に行くぜ」

「……わかった」

 煙草を一本、それから小さめのお茶を半分ほど飲み、表へ出た。


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