字句の海に沈む[June]


一目惚れ? というより

一読惚れ、とでも言いたいな


当時出逢ったうたがある

一作でも読んでしまえば

いっそう深みに沈んでいく

貴方が綴った

字句の海

私は沈みながら包み込まれ

ここで今ここで

やっと呼吸が出来る

そんな不思議な深海


私は呼吸をす

私は包み込まれ


ここは私が生きられる――処


中学も残り一年だった

私は自室に引き籠もっている


過ごすはずの学び舎

そこに視るさま

あの子の笑みは誰かを嘲笑うものか

この子の発言は誰かを蹴落とすさま

私に向けられる笑顔に敵意を見た

ここは陽だまりなんかではない

照らされてなんか……!


“誰かが泣いてる”“私も泣いてる”

“延延と鳴り止まない警鐘”

“ココは既に危険地帯……!!!”


日日を一変した私は

それでも独りでることが

出来なかった

眠れない夜はいつまで続く


ブラウン管の中

そこが私の“リアル”になった

どこかの誰かの妄想虚言

それすら脳内でリアルにすり替える

私も過当な妄想癖


夜な夜な自身を自嘲じちょうめく言葉を綴り

“誰か”を待つ

あるいは自身を自嘲じちょうめくことしかしない

“誰か”の元へアクセスする


夜の照明は痛く私を刺す

点けることは避けるようになった


今この部屋には

ブラウン管ディスプレイの光のみ

ぼう――っと

私の上半身だけが

浮かび上がっているのだろう


陽が昇る頃には

このパソコンすらもシャットダウンする

私はそこにを視てしまうから


この自室の窓にカーテンはない

磨りガラスそれだけが

“リアルな思春期と私”の――隔たり


今日もが昇る頃には眠ろう

磨りガラス越しに照らしてくる

今の私を眠りに落とす


今夜もまた

逢いに行くんだ

貴方の


沈みながら呼吸をす

暗闇が私を包み込む

字句の海に沈む私は眠らない


――貴方のに生かされています

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