第24話高校生時代とデート

 ビッくんとギンちゃんが、付き合うことになった。

 でも、私たちは受験生で付き合うといっても一緒に受験勉強をするだけだった。しかも、教師役の私がいないと始まらないので二人の勉強会デートに私が付き合うというわけの分からない状態が続いていた。図書館とか学校の図書室とか放課後の教室とか、そういうところに私たちは集まった。周囲から見れば、デートとはとても言えないようなものだった。

 だが、私たちはそのことについて不満も疑問もなかった。むしろ、前の状態に戻れたことを楽しんでさえいた。なのせ、この勉強会は期間限定なのだ。

 私たちは、それぞれ進路が違った。

 ギンちゃんは都会の大学に合格するため、ビッくんは公務員試験に合格するため、私は都会にある医大に合格するために勉強をしていた。

 もう少し経てば、進路はバラバラ。

 きっと、もうこんなふうに直接会って話す機会は減るだろう。SNSで繋がっているけれども、このネットの絆はどこまで続くものなのだろうか。

 私たちには、全く分からなかった。

「ビッくんは地元に残るの?」

 公務員志望のビッくんに聞いてみた。

 ビッくんは、市ではなくて県の公務員を目指していると話してくれた。

「だから……どこに配属されるかはわからないよ。……合格できるかも分からないし」

 ビッくんは、学力面では問題はなかった。

 けれども自信がまったくなかったので、面接が問題のような気がしていた。

「未来ちゃんは夢があるんだよな。俺は、将来はなにをやってるんだか」

 ギンちゃんは、大学には進学するけど将来の夢が定まっていないタイプだった。

 けれども、都会には出て行きたいらしい。

「私は……医者にはなりたいけど」

 最初に、医者になりたいと思ったのは家の跡取りなりたかったからだ。

 でも、今はなりたいとは思わない。

 私の家にはあまりにも問題が多い。今は姉のように、新しい場所を探しに行きたいと思っていた。

「まぁ、全員が合格できたらそれでいいけどね」

 私は、そう呟いた。

 今この瞬間は幸せだ。

 けれども、この幸せを永遠に続けることは出来ない。

 私たちは、旅立つことをしなければ。

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