第23話高校生時代と友達の告白

 私は、BBSにものを書き込まなくなった。

 人と繋がるための新しいサービスとして、ソーシャルネットワークサービス(SMS)が発表されて、友達は次々とそれに登録していた。けれども、私はスキップのこともあって登録する気分にはなれなかった。

 そのかわり、リアルの付き合いを大切にしようと思った。

 私は、ギンちゃんと話し合うことにした。

 私は、部活終りのギンちゃんに声をかけた。

 夕日で真っ赤に染まった校庭で、ギンちゃんは驚いた顔をしていた。私が話しかけてくるとは思わなかったのだろう。

「この間、ビッくんと話した」

 たぶん、私はずっとビッくんが好きだ。

 そして、ビッくんに選ばれたギンちゃんのことを一生うらやむだろう。

 私は、慎重に言葉を選んだ。

 ネットの世界では、人の本心がいとも簡単に見られた。でも、それは普通のことではない。現実の人間の会話は、本心をひたすら隠す。たとえ、一度言ってしまったことであっても隠す。

「付き合いなよ」

 私は、ギンちゃんにそう言った。

「私は、敵のような味方のポジションでいるからさ」

 ギンちゃんは、首を傾げてしまった。

 だが、すぐに私が言いたい意味を理解してくれた。

「お前も好きなんだもんな」

「そうだよ。でも、選ばれたのはギンちゃん」

 二人の完全なる味方にはなれない。

 だって、私はたぶんギンちゃんの敵だ。

「でも、友達ではいてあげるから」

 私の勝気な言葉に、ギンちゃんはあきれ返った。

 だが、私の言葉を否定はしなかった。

「ありがとう」

 ギンちゃんは、そういった。

「敵みたいな味方にいうには、随分な言葉ね」

 礼をいわれるような言葉なんて、一つもなかった。ギンちゃんとビッくんは互いをいびつな物にすることを恐がっているのに、私一人が二人の背中を押している。

「敵のような味方、友達……全部がお前の言葉で、全部が信じられる」

 たとえ、世界中の人から二人が後ろ指を指しても私は今と同じでいるだろう。

 ギンちゃんには、それが伝わったらしい。おもむろに、彼はポケットから携帯を取り出した。そして、とあるサイトを表示される。それは、今流行のSNSのサイトだった。表示されているのは、ギンちゃんのアカウントだった。

「これ、メールより便利だから」

 私は、苦笑いする。

 ネットから離れてリアルの付き合いを大切にしようと思った途端にコレである。もう、私たちはネットから離れることはできないらしい。私はその場でアカウントを作って、ギンちゃんをフォローした。ついでに、ビッくんのアカウントも教えてもらった。

「ところで、ギンちゃんはビッくんと付き合う気はあるの?」

 私は、ギンちゃんに尋ねた。

「おまえは、俺たちの味方でいてくれるんだろ?」

「違うわ。ビッくんの純粋な味方。あなたにとっては敵のような味方。そこ、大事だから」

 私が訂正すると、ギンちゃんは笑った。

「なら、今まで恐れてたものも馬鹿らしくなったよ」

 その顔を見て、ほっとしている自分がいたことに私は気がついた。

 友人としてなら、ギンちゃんも私は好きなのだ。

 ビッくんは渡したくないけど。

 ギンちゃんは、携帯を弄り始めた。

「なにやってるの?」

 尋ねると、ギンちゃんはきょとんとした顔で答える。

「付き合おうって、メール送るところ」

 直接言えよ、と私は思わずツッコンだ。

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