21グラムの悲しみ

Melissa メリッサ

2日前の話

 思いもよらない出来事とは記憶のどこに眠るのだろうか、海馬からどこに伝わるのか考えたことがあるか?

私はなかった。

 この目の前で起こってる事は記憶のどこに記録されるのであろうか?

 目の前に起こった事が理解できないのは人間ならば当たり前なのか、それとも私がおかしくなったのかわからないが、今、私は友人である、和葉を殺した。

 今まで人を殺さない私が和葉を殺した、私の中で何が変わったのか、全ては愛した沙優の為に殺した、和葉に向けたゆっくりとナイフを突きつけ、からだにめりこませていく、硬かったり柔らかかったりする感触が、ナイフをつたり私の手に伝わる、和葉は自分が腹にナイフを突き立て倒れている沙優に寄り添うように倒れていく。


「沙優…まだ聞こえてるかい?僕の最期の人殺しになってくれたね」


腹にナイフが刺さりながら、沙優に寄り添って話しかけている


「和葉…聞こえてるよ…昔から和葉のことしか見てなかったよ?好きだったから…」


血だらけの身体を和葉に擦り寄せる。


「和葉が殺されてきた人が羨ましかった…あんなに美しくしてもらって、嫉妬さけしちゃってたよ?でも最後にこんなに美しく染めてもらってうれしいよ?」


 和葉の腹から血が流れ落ちる、もう目は空いていない、私が刺した時にはまだ和葉であったが、もう21.262グラムの魂が抜け、ただの抜け殻になっていた、ここにもう和葉はいない。


「和葉は優しいね、全然いたくなかったよ?」


沙優も服の上から血が滲み出す。


「やっと二人になれる…ね…」


 私は沙優を刺した和葉を殺した、私の愛した沙優を殺したから。

沙優が殺されたがってだなんて知らなかった、沙優を助けたのならば、振り向いて私の名前を最後に呼んでくれるかと思った。

 でも沙優を最期の一人にしてあげれただけでもいいと思えるようになってきた、私は友と愛した人を同時に無くした。

 今見ている景色は目からどこを通って感情になっているのか、この美しいも悲しい感情は私の中にはどこにあるのだろうか、あぁ、今やっとわかった和葉を、殺した時に感情は消えてしまっていたのかな、だから殺さない私が和葉を殺せたと理解できた。

 この広い、薄暗い部屋どこでもみることができるのに、最後まで私は見つめるしか出来なかった、寄り添い合う美しくなりつつ沙優の姿を…

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

21グラムの悲しみ Melissa メリッサ @Melissa333

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ