第4話 ラストバトル2 sideヒロイン

高名な占い師が告げた。


-この子は世界を救うだろう。


あいつはそれを聞いて、私を殺さずに呪った。

人の期待と、自分の命を秤にかけ、私が苦悩するのを楽しむために。


だけど私はもう迷わない。

彼が愛するあの森を。

彼が生きるこの世界を、守りたい。





ただ一人無事にその足で立ち、弓を構える彼に、私は叫んだ。

「撃ってええ!」

額から後から後から流れてくる血も、今は気にならなかった。

深いダメージに、地に膝をついても、今は前を向いていた。

今を屈しては、全てが無になってしまう!


「いいのか、人間よ、私が死ねば、その女も死ぬ!」

世界を支配しようとする憎い相手が、私を呪ったその相手が、嘲うかのように告げる。


彼の弓を引くその手が、びくりと震えたのが見えた。

ひどい事を言っていると、自覚はあった。

それでも、彼しかいなかった。

他の仲間たちは深い傷を負い、地に倒れ、動くこともままならない。

だから、彼に言うしかなかった。


「撃って!!」

彼の無表情なその瞳が、この距離で何故か、揺れているのがわかった。

敵の狂気を思わせる笑い声が響く。


「撃ってぇ!」

見つめる先で、彼の揺れる視線は私から、敵へと移った。

その目が怜悧な輝きを帯び、唇が硬く引き結ばれる。


「お前は女を殺すのかッ」

敵の息を呑む気配に、微笑んだ。

-ありがとう。



  『生きて帰れたら、俺と結婚』



「呪いあれ!」

彼の声と共に、力を帯びた矢が、まっすぐに敵へと向かっていく。

仲間たちが力を削いだその相手は、身動きできずにそれを、額へと受けた。

「うぐあああああああああ」

凄まじい叫びを聞くと同時に、目の前が白くなる。


倒れるその時は、やけにゆっくりと感じられた。

堅い地の感触。

私の意識は、そこでぷつりと途切れた。




生きて帰れたら、結婚。


約束を、守れなくてごめん。

だけど本当に、大好きだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る