episode 3
シャコッシャコっと何かを
何の音だろうと意識をお音に向けてみると、今度はぼんやりと黒い長方形が見えてくる。レンズのピントを合わせる様に
この体験が今回が初めてではなく、以前にも同じような体験をしたことがある。ケースとしては、筆が乗ってきた状態で寝てしまったり、創作意欲が高まったまま眠ってしまうと今の様な状況に
俺はイラストの他にも小説を書いてみたいと思うようになり、時には丸一日小説を考え、液タブに電源を入れない日だってあったぐらいだ。逆に言えば小説という物語に
だから、俺はその両方を一人でこなしたいと思ったわけだ。
両立は難しいことは
「・・・きて・・お・・・・・・て」
聞き覚えのある声が耳に届き、深い海の底に沈んだような、体がゆっくりと
「う・・・ん・・?]
「起きて・・・!起きて キット!」
「うわっ・・・!」
ブワッ!と強風を体全体で
「やっと起きた いつまで寝るつもり?」
新たな生活が始まって最初の朝に見たものは頭を
「レッ、レイス・・・・・・! いつからそこに!?」
「キットが起きる前から」
「そ、それはそうだろうけど。その格好・・・」
「今はまだ朝の七時だし、この格好でもおかしくないはず」
レイスは水色のパジャマの右袖の部分を左指でつまみ、作られている
(本当に十四歳なのか__?)
「七時って・・・レイスは早起きなんだな」
「これが普通でしょ?」
「そうだけど」
昨日は夜遅くまで作業をしていたせいで
コクリ コクリ、と首をゆっくり船をこぐように動かし始めたころ、
「痛っ____!」
首の中に鉄製の様なケーブルが張り
「首、痛いの?」
レイスが俺の顔を
「ち、近いっ!」
あまりにも
「顔が赤いよ? 風でも引いた?」
さらに話を続ける、レイスに俺は何も言えず不意にベッドのシーツに目線を落とす。そこにはただ、レイスの体重がかかる場所を中心にシーツがシワを作っていただけなのにそれだけで胸の鼓動が早まる。いわゆる、《ベッドシーン》という展開を想像してしまったからだ。
この手のシチュエーションはイラスト界ではよく使われるもので、ベッドの上に少女という簡単な組み合わせなのだが描ける人間が描けば、それだけで人の心を動かすことができる
最近の美少女イラストはやたらに肌色が多く、ただ
でもそれは、男性のみを商売のターゲットにしていると考えることもできるしそっちの
美術には表現の自由が設定されているが、もしその設定が今の現状を
なんて考えてしまう。
「そうじゃないけど・・・できれば少し離れてくれたら助かる・・」
「・・・・うん?分かった」
今のキット何か変と言いたげな表情でレイスはベッドから降り、近くにあった椅子に腰かけた
「これでいい?」
「うん それでいいよ」
(女の子とあんなに接近したことがないから、今のは仕方ないかな?でも、結構いいアングルっだのにな・・・)
「ところでさっき、「痛い」って言ってなかった?」
「言ったけど?」
「軽い治療ならできるけど、やってみる?」
「治療?」
「
聞こえたのは定番の回復系魔法の一種だった。
「どこが痛いの?」
「首かな?後、周りも・・・・・・」
「要するに首から肩にかけての全体ってことでいい?」
「・・・うん」
「わかった 痛みの中心はここだとして・・・このあたりかな?」
レイスは俺の首に手を軽く置きながら、何かを探知するように独り言を
「こことかどう?」
「うん?・・・なっ!」
レイスの声に視線を向けると、あと数センチでお互いの肌が当たる距離にレイスがいた。俺は思わず、反射的に顔を前に戻す。一歩間違えれば、キスをしてしまっていたのではないかと考えてしまう。
「どうしたの?急に驚いて?」
「い、いや別に・・・
「近い?」
「こっちの話だ・・・気にしないでくれ・・・・・・」
「うん」
そう言うと、レイスは再び、治療を再開した。先程と同様で俺の肌上をひんやりとして肌が
そして、手の動きが止まり、次に暖かい感覚が体に伝わる。タオルをお湯に
今、レイスがやっているそれも同じような感覚だった。
ジワーッと外側からのエネルギーが体の内側に
「これでどうかな だいぶ良くなったはずだけど?」
「あぁ すっかり。本調子だ!」
「よかった もう、あまり無理はしないでね」
「うん じゃあさっそく・・・・・・」
肩が治ればこっちのものだ 昨日のイラストをもう一度見て、
____などと思い、レイスに背を向け、液タブが置いてある、机に行こうとしたその時____
ジー・・・・・・
(何かものすごい圧力を感じる)
だが、そんな気のせいに構っている
(気のせいじゃ・・・ないよな・・・・・・?)
気のせいじゃないことはわかっていて、気づかないふりをしていたが、こうも視線を
「わ、わかった わかったから・・・今は描かないから・・・・・・その視線を向け続けるのはやめてくれ・・・」
レイスの視線という
(外に出てみるか? いや、それはやめておこう)
カーテンからから差し込む陽の光で外は青々とした海の空で気候が一番良い天気なのは察しがついたが、もし、俺一人だけっで外を出歩けば確実に迷子になるだろう。そう考えると、俺の心の天気は外の天気の真逆_曇りになっていた。
「することがないなら、外にでも行ってみる?」
レイスが今、まさに俺が考えていたことを口にする。
「まぁ、行ってみたいな。それに昨日は夜だったし、街の雰囲気もあまりわかってないし」
「それなら、決まりだね。そうと決まれば、着替えてくるね」
「わかった。俺もすぐに
「後それと、キットの着替えはそこのクローゼットに入ってるから好きに着ていいよ」
(俺の着替え・・・?)
確かにこの豪邸なら客人を招いたパーティーなどで、使用人がワインなどをこぼしてしまい、服を汚させてしまうこともあるかもしれない。だけど、それは客人を招く機会と使用人がいなければ、この推理は成り立たない。実際にレイスにそんなことを聞いたわけではないが少なくとも、この家に使用人の
もっと突き詰めて言えば、
なぜ____男用の服があるのだろうか?
「えーと、このクローゼットであってるのかな?」
俺は不思議に思いながらも、レイスに言われた通り、クローゼットを開けた。
「まるで、絵にかいたような服だな」
中には、
ここで俺はようやく、異世界というものを体で体感したことになる。
その中で俺は一際、視線を引いた、厚手のコートに手を伸ばした。シルクの様に白いそれは触るとカッターシャツの様に薄いのだが不思議と体に
「後は適当に色合いを合わせてっと。よしっ」
服を着替えた後、俺は備え付けられていた、姿見の前に立った。
「・・・・・・」
鏡に映るのは昔の俺ではなく、セレクトリアの市民のそれだった。
「こうゆう場合はどうしたらいいのかな? 一応ここは室内だし、まず
仮にもここはレイスの家。豪邸なだけあってかなり目立つ。盗みをする様な者からみたら金になる物があると考えるだろう。それを考えれば、液タブは持って行った方がいいのかもしれない。
だが、逆に考えれば目立つ=人目に付きやすい。
すなわち、この家に使用人がいなくても、周りの住民が立派にその役目を間接的に行ってくれるはずだ。
だから、俺は_
「行ってくる、また帰ったらよろしく」
いくら血の
液タブとその他の
その時の俺の気持ちは
__だって、ここはもう俺の
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